📊 3行サマリー

  • WEBTOON傘下のLINEデジタルフロンティアが、日本のカドカワ、韓国のレッドアイススタジオと3社でウェブトゥーン制作会社「Studio White」を設立した。
  • 第1弾は『ロードス島戦記』のウェブトゥーン版。韓国語版が5月9日に配信開始し、その後に英語・日本語・フランス語など計7言語へ広がる。
  • 『ソードアート・オンライン』『スレイヤーズ』『ゼロの使い魔』も続く。日本のラノベIPを韓国の制作力で縦スクロール化する分業モデルだ。

📝 カドカワの名作ラノベ、韓国主導で続々ウェブトゥーン化へ

日本のライトノベルの名作が、韓国の制作スタジオの手でウェブトゥーン(縦スクロール漫画)に作り変えられる。WEBTOON Entertainmentの日本法人LINEデジタルフロンティアは4月末、出版大手カドカワ、韓国のレッドアイススタジオと組み、ウェブトゥーン制作会社「Studio White」を立ち上げたと発表した。3社が取り組むのは、カドカワが抱える膨大なラノベ資産をウェブトゥーン向けに描き直す事業だ。第1弾は『ロードス島戦記』。韓国語版が5月9日に配信され、続いて英語・日本語・フランス語・繁体字中国語・タイ語・インドネシア語が公開される予定で、立ち上げ時点で計7言語が視野に入っている。

📰 Webtoon発表:第1弾『ロードス島戦記』は韓国で5月9日配信、原作者・水野良も参加

元ネタWebtoon, Kadokawa & Redice Studio launch STUDIO WHITE(The Beat / 2026年4月30日)

コミックス専門メディアThe Beatによると、Studio Whiteの始動は4月29日(米国時間)に明らかにされた。第1弾の『ロードス島戦記』は、水野良が1988年に発表した日本ハイファンタジーの草分け的作品で、もとは1986年のテーブルトークRPG(『ダンジョンズ&ドラゴンズ』)のリプレイから生まれた。今回のウェブトゥーン版は、原作小説には描かれていない「語られなかった戦いの一章」を扱う新作で、水野自身が原案を提供している。

More than 30 years have passed since Record of Lodoss War first came to life, and seeing it take on a new form as a Webtoon webcomic is genuinely moving.(水野良)

水野は制作チームへの信頼を語ったうえで、「縦スクロールというダイナミックな形式で、どんな戦いが描かれるのか自分自身が読むのを楽しみにしている」とコメントした。カドカワの山下直久取締役は、ロードス島戦記を「カドカワにとっても、ライトノベルの歴史にとっても重要な物語」と位置づけている。

🔥 なぜ韓国スタジオか——『全知的な読者の視点』を生んだレッドアイスの制作力

では、なぜカドカワは自社でウェブトゥーンを作らず、韓国のスタジオと組んだのか。鍵はレッドアイススタジオの制作実績にある。同社は『全知的な読者の視点』、BTSのIPを使った『7FATES: CHAKHO』、『アサシン クリード: Forgotten Temple』といった大型ウェブトゥーンを手がけてきた、韓国でも屈指の制作会社だ。

縦スクロール漫画は、ページ単位で読ませる日本のマンガとはコマ割りも演出も分業体制もまったく異なる。週刊・日次の更新ペースで高品質な縦スクロール作品を安定して量産できる体制は、韓国の主要スタジオが10年以上かけて築いてきたものだ。日本の出版社がいきなり同じ品質とスピードで内製するのは難しい。レッドアイスのチョン・ジョンスクCEOは「カドカワから提供された原作が、尽きないインスピレーションを与えてくれた」と述べ、原作の物語性と韓国側の制作力を掛け合わせる狙いを明かした。LINEデジタルフロンティアのキム・シンベ代表も、カドカワのIPとレッドアイスの制作品質を組み合わせれば「世界の読者にこれらの名作を新しい形で届けられる」と語っている。

🇯🇵 SAO・スレイヤーズも縦スクロールに。日本ラノベが韓国経由で世界7言語へ

Studio Whiteは『ロードス島戦記』に続けて、『ソードアート・オンライン』(川原礫・abec)、『スレイヤーズ』(神坂一・あらいずみるい)、『ゼロの使い魔』(ヤマグチノボル・兎塚エイジ)のスピンオフ・ウェブトゥーンを順次投入する予定だ。いずれも日本のラノベ史を代表するタイトルで、それが韓国の制作チームの手で縦スクロール化され、WEBTOONとLINEマンガで世界に配信される。

日本の読者にとって見落とせないのは、これらが単なる「移植」ではなく、原作にない新エピソードを描くスピンオフだという点だ。ロードス島戦記版が原作小説に描かれなかった戦いを扱うように、SAOやゼロの使い魔も縦スクロール用に設計し直された新作になる。日本でおなじみのIPが、まず韓国語で読める。この公開順そのものが、ウェブトゥーン市場の重心がどこにあるかを示している。

🏁 IPは日本、制作は韓国——コンテンツ分業が形になった2026年

今回の座組みを整理すると、IPを持つのは日本(カドカワ)、それを縦スクロール作品に仕上げるのは韓国(レッドアイス)、世界配信のプラットフォームを握るのは韓国発で米国に上場したWEBTOON、という分業構造になっている。WEBTOONは2025年に日本のウェブコミック制作会社No.9(2016年設立)へ出資しており、日本は同社にとって最も成長の速い市場だ。日本ユーザーの課金単価は四半期あたり22.5ドルと、韓国やその他地域を大きく上回る。

つまりカドカワにとってStudio Whiteは、自社IPを最も伸びている読者層へ、最も適した形で届けるための選択でもある。日本側が「IP供給」、韓国側が「制作と流通」を担う。この役割分担が、2026年のコンテンツ業界ではっきりと形になった。日本がIP大国であることと、縦スクロール作品を量産する力を持っていることは、もう同じ意味ではない。