📊 3行サマリー
- 久石譲がフィルハーモニー・ド・パリの「Compositeur en Résonance(専属作曲家)」に就任。任期は2026/27と2027/28の2シーズンで、同館初の任命と公式発表されている。
- パリ管弦楽団との協働に加え、ロイヤル・フィルハーモニー(ロンドン)、フィラデルフィア管、LAフィル、ベルリン・フィルハーモニーなど欧米8都市以上のホールでツアーが並走する。
- 2025年7月の東京ドーム公演で約13万人を動員した久石譲が、欧州クラシック界の中心ポストで正式に「現代作曲家」として位置づけられた。
📝 フィルハーモニー・ド・パリ「同館初」就任、3月27日発表で2シーズン契約
パリ19区にある欧州最大級の音楽複合施設、フィルハーモニー・ド・パリが、日本人作曲家・久石譲を「Compositeur en Résonance(コンポジトゥール・アン・レゾナンス/英訳 Composer in Association)」に任命したと、2026年3月27日に発表した。ユニバーサル ミュージックが4月1日に出した日本語の告知によると、これは同館初の任命。任期は2026/27と2027/28の2シーズンで、2026年9月から始まる。フランス語の肩書きを直訳すれば「館と共鳴する作曲家」になる。日本語でいう「専属作曲家」「常任作曲家」のニュアンスに近い。
📰 Universal Music Japan発表:パリ管弦楽団と現代曲・室内楽・映画音楽を協働
元ネタ:フィルハーモニー・ド・パリ “Compositeur en Résonance” 就任!(Universal Music Japan / 2026-04-01)/JOE HISAISHI ANNOUNCES PARIS PHILHARMONIE, LA PHILHARMONIC RESIDENCIES; NEW TOURS & WORKS(HarrisonParrott / 2026-03-31)
久石譲がフィルハーモニー・ド・パリの Compositeur en Résonance(Composer in Association)に就任することが3月27日に発表されました。同館初の任命であり、任期は2026/27シーズンと2027/28シーズンの2シーズンにわたります。
就任と同時に、館のレジデント・オーケストラであるパリ管弦楽団(Orchestre de Paris)との共演プログラムも示された。オーケストラ作品、現代曲の室内楽、それから映画音楽。久石が手がけた領域を横断するセットが、2シーズンかけて並ぶ予定だ。さらに4月1日には、パリ管とのシンガポール公演(2026年11月12日・13日、エスプラネード・コンサートホール)が追加発表された。コロナ禍以降、欧米主要オーケストラがシンガポールで大規模公演を行うのは初。パリ管自身にとってもシンガポール初訪問になる。
🔥 13万人動員の久石譲、欧州4団体と並走する2026年版「同時着任」の構造
気になるのは、パリへの就任が単発の名誉職ではないという点だ。複数の主要オーケストラとのレジデンシー(一定期間の専属関係)が同時並走している。フィラデルフィア管弦楽団とは「Composer in Residence」(2025/26〜2026/27の2シーズン)、ロサンゼルス・フィルハーモニックとは「Composer in Focus」(2026シーズン)、そしてロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とは「Composer in Association」が継続中。米英仏の最高峰オーケストラが、同じ作曲家を同じ時期に「特別ポスト」へ並べて据えている。現役の作曲家としては相当異例の動きだ。
背景には数字の裏付けがある。2025年7月、東京ドームで行われた「Joe Hisaishi Symphonic Concert: Music from the Studio Ghibli Films of Hayao Miyazaki」のツアーファイナルは、8カ国14都市を巡った末に約13万人を動員した。さらに、共同委嘱という形で2026年5月にワシントン・ナショナル交響楽団が世界初演する新作《Concerto for Orchestra》は、カーネギーホール、トロント交響楽団、サンフランシスコ交響楽団、コロラド交響楽団、ロイヤル・フィルハーモニー、パリ管弦楽団など7団体超による出資型の共同委嘱だ。チケットの売れ行きと、作品委嘱に乗ってくるホール/オケの数。この2つがポストの数字に直結している。
🇫🇷 仏HarrisonParrott発:「現代を代表する音楽家」、英・独・スイスでもツアー
パリにオフィスを持つアーティスト・マネジメント大手 HarrisonParrott は、3月31日付の英文プレスリリースで久石を「one of the most significant musical figures of today(現代の最も重要な音楽家の一人)」と紹介し、パリ就任を「cements his status(地位を固めるもの)」と書いた。マネジメント側の評価軸はもう「ジブリの作曲家」じゃない。「現代を代表する作曲家」という言葉遣いになっている。日本でジブリの音楽として聞いてきた身からすると、英文プレスリリースで読むとずいぶん肩書きが変わったな、と感じる文章だ。
2026年秋の欧州ツアーは、ロイヤル・フィルハーモニーでの「Composer in Association」任期の締めくくりとして組まれている。指揮は同オーケストラ音楽監督ヴァシリー・ペトレンコ。《The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra》のロンドン初演を6月に予定。秋には久石自身の指揮で、ベルリン・フィルハーモニー、KKL Luzern(スイス)、ミュンヘン・イザール・フィルハーモニー、シュトゥットガルト・リーダーハレ、エルプフィル・ハンブルク、そしてロンドンのロイヤル・アルバート・ホールを回る。欧州5カ国・主要ホールほぼ全制覇の日程である。
🇯🇵 日本クラシック界への含意:「映画音楽家」から「現代作曲家」評価への転換点
日本国内では、久石譲は長らく「ジブリと北野武の作曲家」「夏になるとフジテレビでオンエアされる音楽家」という映画音楽の延長線で語られてきた。海外オケ業界の評価は2010年代後半以降そこからずれてきており、新日本フィルとの「Composer in Residence and Music Partner」就任(2020年)、フィラデルフィア管・ロイヤル・フィル・LAフィルと連続する「現代作曲家」ポジション、そして今回のパリ就任で、その評価軸の差が決定的になった。映画音楽家としてジブリで稼いだ世界的知名度を、欧州主要ホールが「現代クラシックの中心人物」として再カウントし直した、というのが個人的な見立てだ。
もう一つの含意は、2026/27シーズン以降に予定されている新作のピアノ・コンチェルト初演で、ソリストにアリス=紗良・オットが指名されている点。フィラデルフィア管・トロント響・ヒューストン響との共同委嘱で、欧州の同世代ソリストとペアで世界初演する座組みが既に組まれている。日本人作曲家×日独ハーフのピアニストが米国オケで初演する、というクロス・カルチュアルな配役は、久石が「日本の作曲家」枠を出て国際枠で動いていることのわかりやすい証拠だと思う。
🏁 ジブリで稼いだ世界的知名度を、欧州主要ホールが正式に「現代作曲家」として信任
フィルハーモニー・ド・パリ「同館初」というワーディングが軽い肩書き付与ではない理由は単純で、同館が2015年開館の比較的新しい施設ながら、年間200万人超を集める欧州最大級のクラシック拠点だからだ。そのホールが、館の歴史上はじめてレジデンシー的ポストを設け、そこに日本人作曲家を据えた。来年9月から始まる2シーズン、久石譲は「映画音楽の人」ではなく「フィルハーモニー・ド・パリの専属作曲家」として欧州のクラシック番組表に並ぶことになる。ジブリ映画館で聞いた音楽がパリのコンサートホールで「現代曲」として演奏される、というのは、ジブリ世代としては時代の景色がはっきり変わった瞬間に見える。

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