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【サウジアラビア】世界唯一のドラゴンボールパーク、2026年着工。東映アニメの最大IP輸出案件が問う日本のソフトパワー戦略

編集部
吉沢まことVelleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight
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【サウジアラビア】世界唯一のドラゴンボールパーク、2026年着工。東映アニメの最大IP輸出案件が問う日本のソフトパワー戦略

3行サマリー

  • サウジアラビア・クイディーヤ市に世界唯一のドラゴンボールテーマパーク(50万㎡超)が2026年に着工、2029年開業予定
  • 東映アニメーションとの独占契約で7ゾーン・30超のアトラクション・高さ70mの神龍(シェンロン)内蔵ジェットコースターを計画
  • サウジのアニメファン62.3%が35歳未満(Dentsu MENAT調査)で、日本IP輸出の最大規模案件が動いている

「世界唯一」のドラゴンボールパーク、2026年にいよいよ着工。東京ドーム11個分の砂漠に悟空の世界が生まれる

サウジアラビアの首都リヤド郊外に、とんでもないものが建設されようとしている。

その名も、世界で唯一のドラゴンボール公式テーマパーク。手がけるのはサウジ政府系のクイディーヤ投資会社(Qiddiya Investment Company)で、2026年に本格着工、2029年の開業を目指す。敷地の造成はすでに2025年中に完了済みだ。一部エリアは2027年ごろに先行開業するという見方も報じられているが、公式な開業日はまだ発表されていない。

規模がまず頭がおかしい。敷地面積は50万㎡超(東京ドーム約11個分)。亀仙人の亀ハウス、カプセルコーポレーション本社、破壊神ビルスの惑星など、作中の象徴的な場所を再現した7つのゾーンが広がり、アトラクションは30種類以上。目玉は高さ70mの神龍(シェンロン)像の内部を貫通する大型ローラーコースターで、テーマパーク業界でもほとんど前例がない設計だ。ホテルもレストランも完備で、丸一日ドラゴンボールの世界に浸れる。

東映アニメとの独占契約。「第1話からドラゴンボール超まで」全作品を網羅した前例のないライセンス

元ネタWorld’s First Dragon Ball Theme Park at Qiddiya(Qiddiya Investment Company / 2024年3月)

Visitors will be able to join an adventure with Goku and pals as they enjoy the world of Dragon Ball, from the very beginning of the anime all the way up through Dragon Ball Super.

このプロジェクトのバックには、東映アニメーションとの長期戦略パートナーシップがある。ドラゴンボールの初期作品からドラゴンボール超まで、全作品の世界観をテーマパークで体験できる独占ライセンスだ。著作権表記には「©BIRD STUDIO/SHUEISHA, TOEI ANIMATION」と明記されており、集英社・鳥山明プロダクションも公式に名を連ねている。

テーマパーク専用サイト(qiddiya.com/qiddiya-city/dragon-ball)はすでに公開中で、ティザー映像も出ている。個人的には映像を見た瞬間「あ、これ本気だ」と思った。規模感が想像と全然違う。

なぜよりによってサウジでドラゴンボールなのか。アニメファン62.3%が35歳未満という、中東市場の意外な実態

「なんでサウジ?」と思う日本人は多いかもしれない。でも現地の事情を知れば、むしろ「なぜもっと早くなかったのか」という気がしてくる。

サウジアラビアにアニメが入ってきたのは1980年代のこと。「グレンダイザー」「名探偵コナン」「キャプテン翼(現地名:キャプテン・マジッド)」がアラビア語吹き替えで放映され、2000年に衛星放送局「スペースタウン」が開局すると、アニメは一気に若者文化の中心に躍り出た。

Dentsu MENATが2025年10月に発表した調査によると、サウジのアニメ視聴者の62.3%が35歳未満。31%が毎日視聴し、21%はグッズに年間530ドル(約7万8,000円)以上を使っている。アニメIPを使ったブランドへの好意度は世界平均の1.6倍。ドラゴンボールは中東全域で「子どもの頃から知っている作品」として圧倒的な知名度がある。感傷ではなく、データを読んだ結果の選択だ。

現地は熱狂、日本はほぼ無反応。「悟空がサウジに来た」という事件を日本人は知らない

2024年3月の発表直後、アラビア語のSNSでは「#DigitalDragonBall」「#QiddiyaDragonBall」がトレンド入りした。「幼少期のヒーローが自分たちの国のシンボルになる」「サウジがアニメ大国になる日が来た」という声がタイムラインを埋め尽くし、Arab NewsやSaudi Gazetteが速報を打った。

一方、日本はどうだったか。発表当初こそ一部メディアが取り上げたが、1年以上が経った今、着工に向けた続報を追っている国内媒体はほぼない。正直、これはかなり不思議な光景だと思う。自国のアニメが世界史上最大規模のテーマパークとして中東に建設されているのに、当の日本がリアルタイムで追えていない。

ちなみにクイディーヤ市は総面積376平方キロメートル(東京都の約60%)。ドラゴンボールパークはその中の「District 10(アニメワールド)」に位置づけられており、サウジビジョン2030のエンターテインメント産業育成計画の目玉の一つだ。

日本では「日本の子どもが行けない」と論争に。元ジャンプ編集長・鳥嶋和彦氏の発言と、その後の訂正

日本側の反応で最も大きく広がったのは、規模やアトラクションの話ではなく「建設地が日本ではない」ことへの違和感だった。火種になったのは、元・週刊少年ジャンプ編集長の鳥嶋和彦氏の発言である。鳥嶋氏は鳥山明氏の担当編集として『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』を世に送り出した人物で、作品の出発点を間近で見てきた立場にある。

2025年夏に出たインタビュー記事は「ドラゴンボールのテーマパークは作るべきじゃない」という強い見出しで拡散した。語られた趣旨は、ジャンプは日本の子どもたちが支えて育ててきた文化であり、その子どもたちが簡単には行けない場所にパークを作ることへの疑問、というものだった。

ただし、その後の経緯も押さえておきたい。鳥嶋氏はX(旧Twitter)で声明を出し、記事の見出しや内容が実際のインタビューの状況と離れた形で広まったことに遺憾の意を示している。「サウジに作るから反対しているのではない」とも明言し、日本の子どもたちに何かを返す仕組みがあるなら検討の余地はある、と補足した。論争の中身は「サウジ反対」ではなく、「日本のファンへの還元をどう設計するか」という問いだったことになる。

なお現地サウジでの受け止めは、おおむね前向きだ。アル・リヤド紙、アシャルク・アルアウサト紙、オカズ紙、国営サウジ通信(SPA)といった主要メディアが「世界初・唯一のドラゴンボール・テーマパーク」という見出しで報じ、自国の娯楽産業の前進として扱っている。複数の報道によれば、サウジでは国民の約8割が日本アニメの視聴経験を持ち、そのうち約4割が『ドラゴンボール』を見たことがあるという。一方で海外のファンコミュニティには、一つの作品だけで50万㎡規模のパークが採算に乗るのかを疑問視する声もある。歓迎と慎重論が並んでいるのが、現時点の正直なところだ。

東映アニメにとってこれは何なのか。グッズ・配信に次ぐ「第三の収益軸」が生まれようとしている

日本のアニメ産業にとっても、このプロジェクトの意味は小さくない。

これまで日本のアニメIPの収益はグッズ販売・配信権・放映権が三本柱だった。テーマパーク事業はディズニーやユニバーサルが長年やってきたことだが、日本のアニメが直接関与して収益を得るモデルはまだ確立されていない。クイディーヤの年間来場者が数百万人規模に達すれば、入場料・物販・宿泊からの収益シェアは単純なライセンスフィーとは桁が違う話になる。

サウジのDentsu MENAT CEOはこう言っている。「サウジをアニメの消費国から生産国に変える」。Manga ProductionsとToei Animationが共同制作した「Future’s Folktales」はすでに世界累計1億回再生を超えた。クイディーヤのドラゴンボールパークはその延長線上にある、もっと大きな何かだ。日本のコンテンツが世界に売れているのは事実として、誰がどこでそれをマネタイズするかは別の話。2029年の開業が近づくにつれて、その答えが少しずつ見えてくるはずだ。


編集部
吉沢まこと
Velleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。