📊 3行サマリー

  • サウジアラビアのアニメファンの21%が日本アニメ関連グッズに年2,000サウジリヤル(約530ドル・約8万円)超を使い、31%はほぼ毎日アニメを観ている。
  • ファンの70%が「アニメと結びついたブランド」に好感を持ち、アニメIPを使った商品やキャンペーンでブランド評価が上がる確率は世界平均の1.6倍。
  • 源流は1980年代の『グレンダイザー』『キャプテン翼(現地名キャプテン・マージド)』のアラビア語吹き替え。いまリヤドの巨大開発QiddiyaにドラゴンボールZのテーマパークが建つ。

📝 サウジのアニメファンは年8万円課金、世界平均を超える熱量で日本アニメを支えている

サウジアラビアの広告・デジタル大手Dentsu MENATが2025年10月にまとめた調査で、王国のアニメファンがどれだけ日本アニメに時間とお金を注いでいるかが具体的な数字で出てきた。回答者の31%がほぼ毎日アニメを視聴し、21%は関連グッズに年2,000サウジリヤル(約530ドル、日本円で8万円ほど)以上を使っている。日本のファンの肌感覚からしても、決して少なくない額だ。

調査はリヤドで開かれた創造性の祭典「Athar Festival」で発表された。日本で生まれたアニメが、産油国の若者文化の真ん中に入り込んでいる構図が、はっきり数字で裏づけられた格好になる。

📰 Dentsu MENAT調査:「ファンの7割がアニメ起用ブランドに好感を持つ」

元ネタPopularity of anime in Saudi Arabia is an increasingly powerful tool for brands, report finds(Arab News / 2025年10月23日)

「サウジのアニメファンを調べたところ、約70%がアニメと結びついたブランドに好意的に反応することがわかった。ファンダムの奥に入って情熱の源を理解できれば、ブランドがつながりを築ける余地は非常に大きい」(Dentsu MENAT CEO タレク・ダウク氏)

調査によれば、サウジでアニメを日常的に楽しむ層の62.3%が35歳未満。アニメIPが商品やプロモーションに使われると、サウジのファンがそのブランドへの印象を良くする確率は、世界平均の1.6倍にのぼる。半数以上がアニメ原作のゲームを遊び、43%はマンガ原作のゲームをプレイしているという数字も出た。アニメが「観るもの」から「日々の生活に組み込まれた言語」へ移っているのがわかる。

🔥 熱狂の源流は1980年代『グレンダイザー』のアラビア語吹き替えにある

この熱量は最近わいて出たものではない。サウジを含むアラブ圏では1980年代から日本アニメがアラビア語に吹き替えられて放送されてきた。『UFOロボ グレンダイザー』、『名探偵コナン』、そして『キャプテン翼』(現地名は「キャプテン・マージド」)が、ダマスカスのAl-Zahra Center/VENUSによって吹き替えられ、一世代の子ども時代を作った。2000年に専門チャンネルSpacetoonが放送を始めると、人気はさらに広がっていった。

つまり、いまの30代以下のサウジ人にとって日本アニメは「輸入された娯楽」ではなく、自分が育つ過程にもともとあった原風景に近い。『グレンダイザー』はサウジで好きなアニメを聞く調査で42%が2位に挙げ、2022年にはリヤドのBoulevard Worldに高さ33メートルの巨大像が建ってギネス世界記録に認定された。子ども時代の記憶が、いまは国家規模の投資につながっている。

🇯🇵 「消費する国」から「作る国」へ。日本アニメ輸出と共同制作の次の市場

日本のアニメ業界にとって、この数字は無視できない。年8万円を使うファンが2割いて、ブランド好感度が世界平均の1.6倍動く市場は、グッズ・ライセンス・ゲームの輸出先としてかなり魅力的だ。実際、リヤド近郊の巨大エンタメ都市Qiddiyaには『ドラゴンボールZ』をテーマにしたパークが計画されていて、世界最大級のアニメ施設になると見込まれている。

ダウク氏が指摘したのは、サウジが「ビジョン2030」のもとで消費する側から作る側へ回ろうとしている点だ。すでにサウジのマンガプロダクションズは東映アニメーションと『アサティール』を共同制作し、TV東京でも放送された。日本のスタジオにとっては、技術や原作を提供しながら現地の文化的な味付けと組む共同制作の相手として、サウジは韓国や中国とは別の選択肢になりつつある。日本未公開の作品や声優イベントを早い段階で持ち込む先としても、市場の伸びしろは大きい。

🏁 サウジの18〜24歳が日本アニメに見ているのは「物語と作画」という普遍だった

報告書が面白いのは、18〜24歳が日本アニメに惹かれる理由のトップに「質の高い物語」と「作画の創造性」を挙げていることだ。派手な売り込みやキャラ消費ではなく、作品そのものの中身に価値を見ている。ダウク氏は「住む場所や言語は違っても、サウジのアニメファンと日本のアニメファンは同じ物語を共有している」と語った。グレンダイザーで育った世代が、いまは年8万円を投じ、自分たちで作る側に回ろうとしている。日本のコンテンツが海外でどう根を張るかを考えるうえで、サウジは派手さよりも、その根の深さで見ておきたい市場だ。