【アメリカ】エヴァンゲリオン全26話、名作映画で知られるクライテリオンで9月1日から配信。20年絶版だった1990年代の英語音声も復活

3行サマリー
- クライテリオン・チャンネルが、『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビシリーズ全26話と劇場版2本を9月1日から配信すると発表しました。
- 目玉は映像ではなく音声です。2005年のDVD「Platinum Edition」を最後に絶版だったADV Films版の英語吹き替えが、約20年を経て初めて公式の配信に載ります。
- クライテリオンは名作映画の配信で知られ、2025年8月からアニメの取り扱いを始めました。日本のテレビアニメが、その棚に並びます。
クライテリオン・チャンネル、エヴァのテレビ版26話と劇場版2本を9月1日から配信
米国の映画配信サービス「クライテリオン・チャンネル」が、『新世紀エヴァンゲリオン』を9月1日から配信すると発表しました。対象はテレビシリーズ全26話に加えて、劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)²』と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(英題 The End of Evangelion)の2本です。日本語音声と字幕に加えて、英語吹き替えも用意されます。
北米では長らく、この26話をきちんと見る手段が限られていました。ADV Filmsが出したDVDは絶版、権利は2020年にGKIDSへ移り、劇場での上映はあっても家庭で通して見る選択肢はNetflixだけという状態が続いていたのです。そこに、映画の名作を扱うサービスが手を挙げました。
発表はクライテリオン側から。劇場版2本は7月に米国で再上映されたばかり
出典:Neon Genesis Evangelion Is Coming to the Criterion Channel in September(IGN / 2026年7月30日)
出典:Criterion Channel Adds Neon Genesis Evangelion Anime, Evangelion: Death (True)², The End of Evangelion Films on September 1(Anime News Network / 2026年7月30日)
had long remained out of print and unavailable in North America.(長く絶版で、北米では手に入らないままだった)
Anime News Networkによると、テレビシリーズと劇場版2本の北米権利は2020年にGKIDSが取得しており、同社は7月21日と22日に劇場版2本を米国の劇場で上映したばかりでした。上映の熱が冷めないうちに配信の発表が続いた形です。
今回の目玉は映像ではなく音声。2005年のDVDを最後に消えた英語吹き替えが戻る
英語圏のファンが反応したのは、配信日でも画質でもありませんでした。クライテリオン版に、ADV Filmsが1990年代後半から2000年代前半に収録した英語吹き替え、いわゆる「クラシック吹き替え」が収録されるという点です。この音源が公式に配信されるのは今回が初めてになります。
ADV Filmsは2004年から2005年にかけて出した「Platinum Edition」DVDを最後にエヴァのリリースを止め、2009年に事業をたたみました。以降、この吹き替えを聴くには中古のDVDを探すしかなく、20年ほど宙に浮いた状態が続いていたわけです。低予算で、声優経験の浅いスタッフも参加した録音だったとInverseは伝えていますが、英語圏のファンにとってはその粗さも含めて「最初に出会ったエヴァ」でした。
英語圏のファンを割ったのはNetflix版。渚カヲルの一言と、消えた『Fly Me to the Moon』
この吹き替えがこれほど待たれた理由は、2019年6月に始まったNetflix配信の記憶にあります。Netflix版はADV版を使わず、新しい翻訳と新録の吹き替えを採用しました。そのうえで二つの変更が議論を呼びます。
一つは渚カヲルの台詞です。ADV版で「I love you」だった一言が、Netflix版では「I like you」になりました。Newsweekや米Slateなど複数の米メディアが、カヲルとシンジの関係の描き方が薄まったのではないかと報じています。もう一つはエンディングの『Fly Me to the Moon』で、米国のNetflix版からこの曲が外れました。TheWrapはライセンス費用が理由だと伝えています。
ファン向け掲示板ResetEraにはこの発表のスレッドが立ち、英語圏のメディアもADV版の復活を歓迎する反応を伝えています。ただし個々の匿名の書き込みは事実の根拠になりません。そしてクライテリオン版に『Fly Me to the Moon』が入るかどうかは、現時点で公表されていません。ここは発表を待つほかなさそうです。
日本のテレビアニメが名作映画の棚に入る。クライテリオンは2025年からアニメを増やしている
日本から見ると、この配信が持つ意味は「見られるようになった」だけではありません。クライテリオンは映画の名作を選んで届けるサービスで、テレビシリーズを扱うこと自体がまれです。そこに26話のテレビアニメが丸ごと入るというのは、作品の置かれる棚が変わるということです。
同社は2025年8月からアニメの取り扱いを始めました。Anime News Networkによれば、これまでに『トップをねらえ!』の劇場版、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』第1期(3月)、『ガッチャマン』の劇場版(4月)、『けいおん!』の劇場版(5月)が並んでいます。単発の劇場作品だけでなく、テレビシリーズまで抱え込み始めた並びで、選び方に一貫した意思を感じました。
そして日本の視聴者にとっては、もう一つ考えさせられる点があります。北米で長く「正規に見られない作品」だったエヴァが、いま英語圏でどの音声で語られるかによって、キャラクターの関係の受け取られ方まで変わってきたという事実です。翻訳と吹き替えは、作品の外側の作業ではありません。
26話をどの音声で見るかが、そのまま作品の受け取られ方を決めている
クライテリオンの発表は、失われた音源を一つ掘り起こしただけの話に見えて、実際にはエヴァが英語圏でどう読まれてきたかの記録を並べ直す作業です。9月1日以降、視聴者は日本語音声、ADV版、Netflix版という三つの入り口を、初めて意識して選べるようになります。どれが正解かという議論は続くでしょうが、選べること自体が20年なかったのです。
日本の作品を海外に届けるとき、映像を渡すだけでは足りません。どの言葉を当てるかまで含めて作品なのだと、この一件はあらためて示しています。
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