📊 3行サマリー
- 韓国ネクソンが2026年第1四半期の売上1.42兆ウォン(約1,420億円)・営業利益5,426億ウォンを発表し、四半期ベースの過去最高を更新した
- 日本でも遊ばれる主力IPメイプルストーリーのフランチャイズ売上は前年比+42%、新作ARC Raidersは半年で累計1,600万本に到達
- 同時にカカオゲームズ・デブシスターズ・ウェブゼンの中堅3社は赤字または減益で、東証上場するネクソン(証券コード3659)の決算は日本の投資家にも両極化のシグナルになる
📝 ネクソンQ1売上1.42兆ウォン・営業利益5,426億ウォン、すべて四半期最高記録
韓国のゲーム最大手ネクソンが2026年5月17日までに発表した第1四半期決算は、売上1.42兆ウォン(約1,420億円)、営業利益5,426億ウォン、純利益5,338億ウォンで、3指標とも四半期ベースの過去最高を更新した。前年同期比は売上+34%、営業利益+40%、純利益+118%。閑散期と呼ばれてきた第1四半期に最高益が積み上がる構図だ。同じ日に注目されたのがクラフトン。売上1.37兆ウォン、営業利益5,616億ウォンと2四半期連続で記録を塗り替え、PUBG: Battlegrounds単体の四半期売上が初めて1兆ウォン台に乗った。
📰 DigitalToday分析:「乾杯する時ではない、両極化は構造変化だ」
元ネタ:Q1 breaks seasonal slowdown but polarisation widens in South Korea game industry(DigitalToday / 2026年5月17日)
Even during the slow season, the companies that do well kept doing well, and the companies that cannot do well even with new titles became more difficult. Whether they have an IP structure that can generate recurring revenue in global markets will determine medium- to long-term survival.
韓国メディアのDigitalTodayは「業界全体の回復ではなく、企業間の両極化がさらに深まった」と書いた。BigGo Financeが拾った東洋大ゲーム学科キム・ジョンテ教授の言葉はもっと辛口だ。「目立つ成功例がいくつか出たからといってシャンペンを開ける時ではない。業界は両極化を通り越して、大手への急速な集中へ進んでいる」。教授はさらに、中小スタジオは「日々生き延びるだけで精一杯、サバイバル戦の真っ最中」とも語る。
🔥 ARC Raiders 1,600万本+日本MapleStory+42%が決算を押し上げた
ネクソンの決算を分解すると、押し上げ要因ははっきりしている。メイプルストーリーのフランチャイズ売上は前年同期比+42%。グローバル展開した「メイプルストーリー:レイジング」は北米・欧州・東南アジア全域で計画を上回り、台湾旧正月アップデートで「メイプルストーリーワールド」は+79%。海外売上は四半期最高で前年比+59%、北米と欧州は4倍超、東南アジアなどその他地域は2倍超になった。
もう一つの起点は2025年10月に出した新作ARC Raidersで、第1四半期だけで460万本を追加販売し、半年経たずに累計1,600万本に乗った。Inven Globalによれば、海外売上の59%増はARC Raidersが牽引したとネクソン自身が説明している。逆風もある。メイプルストーリーワールドの確率エラーをめぐり、同社は1,300億ウォン規模の全額返金を実施。第2四半期以降の数字にこの返金が乗ってくる。
🌏 韓国メディアが報じた両極化:中堅3社は新作不在で赤字に転落
同じQ1にカカオゲームズは売上829億ウォン(-33%)、営業損失255億ウォンへ転落した。新作カジュアル「Ssumini’s」がジャンル特性で頭打ちになり、既存IPは「安定的な減少局面」に入ったと同社が認めている。デブシスターズは3月末に出した「クッキーラン:オーブンスマッシュ」が振るわず営業損失174億ウォン。CEO以下役員の報酬全額返上と全社員対象の希望退職プログラムに踏み切った。ウェブゼンは売上393億ウォン(-5.2%)に対し営業利益53億ウォン(-39.6%)と、減収以上に減益が大きい。1月配信の「ドラゴンソード」をめぐる開発元との紛争が長引き、固定費と国内市場の縮小が重なった形だ。
韓国コンテンツ振興院「2025韓国ゲーム白書」によれば、韓国ゲーム産業の成長率は2020年の+21.3%から2024年は+3.9%に減速している。DigitalToday記者リー・ホジョン氏は「閑散期を同じように通り抜けても、結果は同じではない四半期だった」とまとめた。AAAの長い開発サイクルを資金で支えられる大手と、新作1本の遅延が即赤字につながる中堅。差がここまで露骨に出るのは異例だ。
🇯🇵 東証上場のネクソンが日本投資家に示す「韓国IP集約のリスクと果実」
このQ1業績は、日本の読者にも他人事ではない。ネクソンは東京証券取引所プライム市場(証券コード3659)に上場する事実上の日韓ハイブリッド企業で、日本国内のメイプルストーリーやアラド戦記もこの「最高益」のなかに入っている。MapleStory: Raisingの好調は日本のサービスにもアップデート間隔の短縮として跳ね返り、第2四半期に控える「ダンジョン&ファイター:レイジング」は日本の旧アラドユーザー基盤を直撃する。
クラフトンの好調も日本市場へ波及する。PUBG: Battlegroundsは過去最大同時接続130万人、5月8日パッチ後の平均同時接続が80万→100万に伸びた。この勢いはPUBG MOBILE日本サーバーの優先度や、KRAFTON JAPANが進めるinZOI PS5版(2026年上半期予定)の販売計画にも反映されるはずだ。一方で中堅韓国メーカーの不振は、国内開発を韓国スタジオに委託してきた日本の中堅パブリッシャーにとって、外注先の体力低下リスクとして読み取るべきシグナルになる。
🏁 韓国ゲーム業界は両極化から「巨大プレイヤーへの集中」へ移行
つまり韓国ゲーム業界は、グローバルで再起動できる老舗IPとAAA級新作を抱える大手3〜4社だけが現金を再投資できる構図に固まりつつある。「両極化」という言葉ですら穏当で、実態は「巨大プレイヤーへの集中」だ。日本の読者にとっての意味は二つある。第一に、東証上場ネクソンの株価・IR資料はこの集中を映す鏡として読み取れる。第二に、日本市場へ投入される韓国製AAA(クリムゾンデザートやAION 2)の波は当面続くが、その裏で消えていく中堅韓国スタジオの本数を見落とすと、外注エコシステム側の崩れに後で気付くことになる。Q1の最高益は祝祭ではない。構造変化の途中経過として読み取りたい。


