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【アメリカ】グラミー賞、BTS不参加で新設アジア部門を残すか再検討。応募締切は8月21日、YOASOBIは狙うと語っていた

編集部
吉沢まことVelleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight
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【アメリカ】グラミー賞、BTS不参加で新設アジア部門を残すか再検討。応募締切は8月21日、YOASOBIは狙うと語っていた

3行サマリー

  • レコーディング・アカデミーが、2026年6月16日に発表した5つの新部門のひとつ「最優秀アジアポップ音楽パフォーマンス」の扱いを見直す協議に入ったと、米ビルボードが8月14日に報じました。
  • きっかけはBTSです。メンバー7人全員が7月29日、「音楽が地域や言語で分けられずに聴かれてほしい」として第69回グラミー賞への応募を見送ると発表しました。
  • 日本のYOASOBIは、8月8日公開のフォーブスのインタビューでこの部門を「狙いにいく」と明言していました。応募の締切は8月21日、授賞式は2027年2月7日です。

レコーディング・アカデミー、新設したばかりのアジアポップ部門を残すかどうかの協議に入った

グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーが、2027年の第69回から新設する「最優秀アジアポップ音楽パフォーマンス(Best Asian Pop Music Performance)」部門について、内容を見直す協議に入ったと報じられています。部門が発表されたのは2026年6月16日ですから、まだ2か月しか経っていません。

米ビルボードによると、アカデミーのハーヴィー・メイソン・ジュニアCEOらは、K-POP、J-POP、C-POP、インドの音楽業界の関係者と2週間にわたって協議を重ねてきました。相手にはBTSの所属事務所HYBEも含まれます。そのうえで、理事会と候補選考委員会という2つの正式な機関を招集し、部門をどうするかの判断を仰ぐ段階に入ったとされています。

新設した部門を、初回の授賞式を迎える前に主催者自身が見直す。これは相当に異例です。何が起きたのかは、ひとつの声明までさかのぼると見えてきます。

出典と、8月14日にビルボードが伝えた協議の中身

出典Grammys rethink Asian pop category after BTS boycott: Reports(Korea JoongAng Daily / 2026年8月15日)

出典After the BTS Boycott, Grammy Re-evaluates ‘Asian Pop’ Category: Global Fan Reactions(STARNEWS / 2026年8月17日)

「アカデミーの理事会全体と候補選考委員会が、この部門をさらに形づくるために招集されている」(Korea JoongAng Daily、2026年8月15日)

協議入りを最初に報じたのは米ビルボードで、他の媒体はいずれもそれを引く形です。ここは確度としては報道ベースにあたるので、この記事でも「ビルボードが報じています」という書き方を通します。アカデミー自身が部門の廃止や変更を正式に発表したわけではありません。

6月16日の新設から6週間、BTS7人が「地域や言語で分けないで」と応募を見送った

この部門は、K-POP・J-POP・C-POPなどアジア市場で生まれた、あるいはアジア市場で広く認知されたポップスを対象にするものです。規定では「ひとつ以上のアジア言語を意味のある形で使っていること」が条件で、英語だけで歌われた曲は対象外になります。判定するのは演奏者の民族や国籍ではなく、あくまで音楽のスタイルと言語だと明記されています。

この規定に対して、BTSのRM、ジン、SUGA、j-hope、ジミン、V、ジョングクの7人全員が7月29日、同じ文面の声明をそれぞれのInstagramに出しました。「音楽が地域や言語で分けられるのではなく、そのものとして聴かれ、愛されることを願っています」。第69回グラミー賞にはカムバックアルバム『ARIRANG』を含め、一切応募しないという判断でした。この時点の経緯はBTSが出品を取りやめた際の記事にまとめています。

翌30日、メイソンCEOはInstagramで「悲しい思いですが、音楽をつくる者として、その決断を理解し尊重します」と応じ、部門の意図を説明しています。「アジアポップ部門は、アジアから生まれるポップの厚みと多様性、その並外れた成長を称えるために作られました。分断するためではなく、私たちの1万5,000人の投票権者に認められる人を広げるためのものです」。ジャンル部門に出したからといって、年間最優秀アルバムなどの主要部門から締め出されるわけではない、とも付け加えました。

ただ、それで収まりませんでした。批判の中心にあったのは「アジアのアーティストを主要部門に近づけるのではなく、専用の小部屋に閉じ込めるのではないか」という懸念です。実際、BTSは『ARIRANG』で全米アルバムチャート1位を3週続けていて、初回のアジアポップ部門では最有力と見られていました。それだけに、受け止め方が割れました。

海外ファンの反応は三つ巴。「BTSの勝利」「最初から排除が目的」「他のアジア勢の機会を奪った」

韓国のSTARNEWSが8月17日にまとめた海外ファンの反応は、大きく3つに分かれていました。個々の匿名投稿を事実の根拠にはできませんが、受け止めの分布としては読み取れます。

いちばん目立ったのは、BTSのファンダムARMYの勝利感でした。「宇宙はいつもBTSの味方」「BTSとARMYがいなければ何も動かない」という声が並んだと伝えられています。次に多かったのが、部門そのものの意図を疑う声です。「この一件で、BTSを主要部門から外すために作られた部門だったと証明された」「地域で線を引けば、英語以外で成功したアーティストは年間最優秀アルバムやレコードから押し出されることになる」といった内容でした。

一方で、BTSとARMYへの反発もかなりの量があったといいます。「ARMYのせいで、ほかのアジアのグループがグラミーに認められる道がなくなった」というものです。これに対する反論も出ていて、「アカデミーが本当に包括性を目指していたなら、BTSの応募がなくても部門は残したはず。責められるべきは部門を作って今それを取り下げようとしている主催者側では」という指摘が紹介されていました。

この最後の指摘は、正直なところ筋が通っていると受け止めました。制度をつくるかどうかを決めているのは、応募する側ではなく主催者だからです。

なお当編集部でX(旧Twitter)の最新順検索を8月18日14時台(日本時間)に確認したところ、直近1時間のうちにKorea TimesとBandwagon Asiaがこのニュースを投稿していて、アジアの音楽メディアが追いかけている最中でした。ファンの議論が先に走り、業界メディアが後から追いつく順番になっています。

日本のYOASOBIは「狙いにいく」と答えていた。応募締切は8月21日、AdoやKenshi Yonezuも候補に挙がる

日本の読者にとって、この部門は他人事ではありません。対象にJ-POPが明記されているからです。しかも、日本語のまま歌うアーティストほど有利になる規定でした。英語だけの曲は対象外なので、たとえば全米1位を取ったBTSの英語シングルは応募できません。日本語で歌い続けてきたアーティストにとっては、英語圏の主要部門に真正面から挑むより、はるかに現実的な最初の一歩だったわけです。

それを一番はっきり口にしていたのがYOASOBIでした。8月8日にフォーブスが公開したインタビューで、この部門を狙うのかと問われたAyaseさんは、その日の会話で一番速く答えたと記者が書いています。

「はい、狙いにいきます。狙えるように、精一杯やります」(Ayase、フォーブス 2026年8月8日)

同じインタビューでAyaseさんは「アジアポップかどうかに関係なく、本気で世界中の人に聴いてほしいなら、グラミーを獲るために働くんじゃなくて、たくさんの人に音楽を届けるために働くんです」とも語っています。賞のためではない、という前置きつきの「狙いにいきます」でした。その前置きごと、狙う先が消えるかもしれない状況になっています。

受賞予想サイトGold Derbyが挙げた初回の有力候補には、ATEEZやStray Kids、フィリピンのBINIと並んで、AdoさんやKenshi Yonezuさんといった日本勢の名前が入っていました。対象となる作品の期間は2025年8月31日から2026年8月28日まで、応募の締切は8月21日です。つまり日本のレーベルは、部門が残るかどうか分からないまま、あと数日で応募するかどうかを決めることになります。

決着は10月12日の第1次投票前。初回の受賞者が出ないまま消える可能性もある

今後の日程ははっきりしています。応募の締切が8月21日、第1次投票の開始が10月12日、候補発表が11月16日、授賞式は2027年2月7日にロサンゼルスで開かれます。STARNEWSは、アカデミーの最終判断は10月12日の投票開始より前に出る見込みだと伝えています。

そして、この一件はアジアポップ部門だけの話では終わりません。理事会と候補選考委員会は、新しい部門をつくるプロセスそのものを見直す方向だとも報じられています。K-POPのファンダムが、米国の賞レースの制度設計そのものを動かした事例として残ります。

ただ、いま気にかかるのは別のところです。この部門が消えれば、初回の受賞者が一人も出ないまま終わります。「アジアのポップスを称える」と言って作られた枠が、最大のスターが1組降りただけで維持できなくなるなら、その枠は最初から誰のために用意されたものだったのか。日本のアーティストが「狙いにいきます」と答えていた場所が、答えた本人たちの与り知らないところで揺れているのを見て、そこが一番引っかかりました。

編集部
吉沢まこと
Velleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。