【韓国】BTS、グラミー賞への出品をとりやめ。新設のアジア部門はJ-POPも対象だが、全米1位『SWIM』は英語のため応募できず

3行サマリー
- BTSのメンバー7人が7月29日、2027年2月の第69回グラミー賞に楽曲を出品しないと同時に表明した
- 争点は6月に新設された「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス」。アジアの言語をひとつ以上、意味のある形で使った曲が条件で、米ビルボードHot 100に1位で初登場した『SWIM』は英語のため応募できない
- アカデミーの規定はこの部門の対象にJ-POPも明記している。日本のアーティストにも同じ線引きが及ぶ
BTSの7人が同じ文面を同時に投稿し、来年のグラミー賞に楽曲を出さないと表明
BTSのメンバー7人が7月29日、それぞれのInstagramストーリーズに同じ文面を同時に投稿し、2027年2月に開かれる第69回グラミー賞へ楽曲を出品しないと明らかにしました。所属レーベルの発表ではなく、7人が横並びで個人アカウントから出したという形式が、まず目を引きます。
3月に出した正規5集『ARIRANG』は初週641,000ユニットでビルボード200の首位に立ち、グループのアルバムとしては10年以上ぶりの規模でした。先行曲『SWIM』は米ビルボードHot 100に1位で初登場しています。賞レースでいちばん有利に働きそうな年に、自分から土俵を降りた形です。
Korea Times報道:新設のアジア部門はアジアの言語使用が条件で、英語の『SWIM』は応募できない
出典:After Asian pop category launch, BTS says it won’t submit music to Grammys(The Korea Times / 2026年7月29日)
出典:Grammy Chief ‘Saddened to Hear’ That BTS Won’t Submit for 2027 Awards(Variety / 2026年7月30日)
We hope music can be heard and loved as music itself, rather than being divided by region or language.
(訳:音楽が地域や言語で分けられるのではなく、音楽そのものとして聴かれ、愛されることを願っています)
レコーディング・アカデミーが6月に発表した新設5部門のひとつが「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス」です。規定では、K-POP・J-POP・C-POPなどを含み、アジアの言語をひとつ以上、意味のある形で使った作品が対象とされています。
ここで矛盾が起きます。BTSがこの1年でいちばん大きな成果を出した『SWIM』は英語曲なので、この部門には応募できません。アジアのアーティストのための部門なのに、アジアのアーティストが世界でいちばん広く聴かれた曲を出せない、という状態です。BTSの声明にある「地域」と「言語」というふたつの言葉は、この条件をそのまま指しています。
グラミー側CEOは「分けるためではなく、広げるため」と釈明し、総合部門との両立を強調
7月30日、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーのCEO、ハーヴィー・メイソンJr.氏が声明を出しました。Varietyが伝えています。
メイソン氏は「BTSが今年のグラミー賞のプロセスに参加しないと決めたと聞いて残念です。ただ、音楽をつくる立場として、その決断は理解しますし、尊重します」と述べました。そのうえでアジアン・ポップ部門は「アジアから生まれるポップの奥行きと多様性、そして驚くべき成長をたたえるため」につくったものだと説明し、「決して分けるためではなく、1万5000人のグラミー投票者が認める対象を広げるため」だと強調しています。
さらに、ジャンル部門に出品しても、レコード・オブ・ザ・イヤーやアルバム・オブ・ザ・イヤーといった総合部門の候補から外れることはない、とも付け加えました。ジャンル部門と総合部門は両立できる、というのがアカデミー側の立場です。
ただ、この釈明はBTSが問題にした線引きそのものには答えていません。総合部門と両立できるという説明は、アジアン・ポップ部門の入り口が言語で仕切られている事実を動かさないからです。英語で歌うアジアのアーティストは、アジアをたたえる部門から外れます。そこに触れないまま「広げるため」と言われても、当事者の側から見えている風景は変わりません。
韓国ではKBSとSBSの夜のニュースが伝え、掲示板は2つのスレッドで600件超のコメント
韓国では、7月29日夜のKBS「9時ニュース」とSBS「8時ニュース」がこの件を報じました。アイドルグループの賞レースをめぐる判断が地上波の夜のメインニュースで扱われるのは、それだけ社会的な話題として受け止められたということです。
コミュニティの反応も速く出ました。掲示板TheQooでは、7月30日午前の時点で「빌보드: 아이러니하게도…(ビルボード:皮肉にも…)」のスレッドが430コメント・閲覧37,943件、「그래미 CEO가 내놓은…(グラミーCEOが出した…)」のスレッドが180コメント・閲覧11,924件を集めていました。ひとつの話題で2つのスレッドが同時にHOT入りする状態です。
Xで印象的だったのは、ファンの第一反応が怒りではなく動揺だったことです。速報の見出しにある「그래미(グラミー)」という文字だけを見て、受賞を逃したのかと一瞬ひやりとした、という趣旨の投稿が5,500件を超えるいいねを集めていました。BTSの声明を伝える投稿には12,000件以上のいいねと19万回を超える表示がついています。個々の匿名投稿を根拠にはできませんが、Xでは落胆よりも「よく言った」という受け止めのほうが目立つ状態でした。
アカデミーの規定はJ-POPも対象と明記していて、日本のアーティストにも同じ線引きが及ぶ
この話は韓国だけの問題ではありません。アカデミーの規定は、この部門の対象を「K-POP、J-POP、C-POPを含むが、これらに限らない」と書いています。日本のアーティストも、はじめからこの部門の射程に入っています。
そして条件もそのまま当てはまります。日本語で歌えばアジアン・ポップ部門に応募でき、英語だけで歌えば応募できません。日本語のまま海外のチャート上位に届く曲が出てきている一方で、全員が日本人でも英語で歌うグループもあります。同じ日本のアーティストでも、どの言語で歌うかによって、たどり着ける部門が変わるということです。
「アジア枠ができてよかった」で終わる話ではないと感じます。新しい部門ができたとき、それが自分たちにとって扉になるのか、それとも囲いになるのか。BTSが先に声を上げたことで、日本のアーティストもいずれ同じ判断を迫られます。
言語で部門を仕切る設計が、アジアのアーティストに二者択一を迫っている
新設された部門は、アジアのアーティストに光を当てるためにつくられました。その意図そのものを疑う理由はありません。ただ実際の設計は、世界でいちばん広く届く方法として英語を選んだアジアのアーティストを、その部門からこぼしてしまいます。BTSが「地域や言語で分けないでほしい」と書いたのは、この一点への異議だと読めます。
アカデミー側は総合部門との両立を強調しました。とはいえBTSは2021年から2023年までベスト・ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門に3年連続で候補入りしながら、受賞には届いていません。総合部門の扉は開いている、という説明に実感が伴うかどうかは、来年2月の候補発表ではっきりします。
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