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【サウジアラビア】SNK『メタルスラッグ』30周年配信、米チャリティー大会が3時間で撤回。サウジ資本に反発

編集部
吉沢まことVelleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight
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【サウジアラビア】SNK『メタルスラッグ』30周年配信、米チャリティー大会が3時間で撤回。サウジ資本に反発

3行サマリー

  • 米チャリティー速走大会「Games Done Quick」が、SNK『メタルスラッグ』30周年の協賛配信を、告知から約3時間で撤回しました(7月12日)。
  • 理由は、SNKの株式96%をサウジアラビアの政府系ファンドが保有していること。運営は人権上の懸念を挙げています。
  • 撤回は、大会が国境なき医師団に約240万ドルを集めた直後の出来事でした。日本の名作ゲームと湾岸マネーの距離が、あらためて問われています。

SNK『メタルスラッグ』30周年の協賛配信、始まって約3時間で止まった

速走(スピードラン)で寄付を集める米国のチャリティー大会「Games Done Quick(GDQ)」が、SNKと組んだ協賛配信を、告知からわずか約3時間で取りやめました。配信は『メタルスラッグ』シリーズの30周年を祝うもので、日本時間の7月13日未明、放送の最中に打ち切られています。

GDQは7月12日の午後、「SNKと一緒に『メタルスラッグ』30周年を記念する速走ショーケースをやれることがとても楽しみ」と告知しました。ところがこの投稿にはすぐに批判が集まり、同日のうちに配信そのものが停止されます。今夏のGDQ(Summer Games Done Quick)は、国境なき医師団に向けて2,408,701ドル、日本円でおよそ3億7千万円を集めた直後でした。せっかくの盛り上がりに水を差す幕切れで、走者たちが気の毒だったというのが、正直な第一印象です。

GDQの声明「この協賛の資金は受け取らない。今後この協賛先と組むこともしない」

元ネタGames Done Quick ‘Excited’ To Work With Saudi-Owned SNK For Around Three Hours Before Pulling Sponsorship Deal(Aftermath / 2026年7月12日)

We will not accept the funds from this sponsorship or continue to work with this sponsor again.(この協賛の資金は受け取らず、今後この協賛先と再び組むことはしません)

GDQは撤回にあたって、コミュニティから寄せられた懸念、とりわけSNK株式の過半をサウジアラビアの政府系ファンドが保有していること、そしてサウジ政府にまつわる人権上の懸念を受け止めた、と説明しました。あわせて、審査の甘さを認めています。「私たちのコミュニティが期待する水準の確認を怠った。深く反省し、全面的に責任を負う」。さらに、配信に関わった走者やホストには非がないとして、名指しで謝罪しました。今後は協賛先の資本構成まで踏み込んで見直す、とも述べています。

SNKは2022年にサウジ資本が96%を取得。つきまとう「スポーツウォッシング」批判

SNKは『メタルスラッグ』『KOF』『餓狼伝説』『サムライスピリッツ』を生んだ大阪発のゲーム会社です。そのSNKは、2020年にサウジアラビア側が株式の33%を取得し、2022年には皇太子ムハンマド・ビン・サルマン氏のミスク財団傘下、EGDC(Electronic Gaming Development Company)が96%まで買い増して、実質的な完全子会社になりました。今回批判が集まった背景には、この所有構造があります。

湾岸マネーがスポーツや文化に流れ込む動きには、以前から「スポーツウォッシング(人権批判から目をそらすためのイメージ改善)」という指摘が付きまといます。とりわけ今回は、寄付先が国境なき医師団だったことが事態を難しくしました。同団体はイエメンで、サウジ主導の連合軍による空爆の負傷者を治療してきた経緯があり、2015年には自分たちの病院が空爆を受けています。人道支援のために集めたお金と、批判の的になっている資本とが、同じ配信のなかで隣り合ってしまった。そこに、多くの人が引っかかったのだと受け止めました。

もっとも、SNKのサウジ化は今に始まった話ではありません。海外のファンからは冷静な声も上がっています。「SNKとサウジのつながりを知ったのは、正直これが初めて。それでも協賛をやめたGDQは立派だと思う」。一方で、こんな指摘もありました。「主要な上場ゲーム企業がどこもサウジ資本を一定割合抱えていると知ったら、ゲーム以外の趣味を探すしかなくなるよ」。どこで線を引くのか、という問いが、静かに突きつけられています。

日本の名作IPが次々と湾岸資本の傘下に。日本のファンにとっての居心地の悪さ

この問題は、SNKだけにとどまりません。EGDCは2026年4月にカプコン株を積み増し、任天堂やスクウェア・エニックス、バンダイナムコ、ネクソン、コーエーテクモ、NCソフトにも、濃淡はあれ出資しています。格闘ゲームの祭典EVOの経営権はサウジのQiddiyaが取得し、賞金総額7,500万ドル規模のeスポーツ・ワールドカップも同国が主催します。鉄拳を長く率いた原田勝弘氏の新スタジオにも、EGDCの資金が入っているとされます。

日本の遊び手にとって居心地が悪いのは、幼いころに100円玉を握って遊んだ『メタルスラッグ』のような作品まで、いつの間にか湾岸資本の下にある、という事実です。海外では「支援先として、この資本と組んでいいのか」が真剣に議論されますが、日本ではSNKのサウジ化そのものが、あまり大きな話題になっていません。作品への愛着と、その作品を支える資本の出どころ。この二つをどう折り合わせるかは、日本のファンにとっても他人事ではないと感じます。

線引きのない問いだけが残った

GDQの判断は、筋が通っています。見落としを認め、資金を受け取らず、走者に謝る。その一つ一つは誠実でした。それでも、では任天堂やバンダイナムコ、カプコンとの関わりはどうなのか、という問いには、誰も明快な答えを出せません。どこまでが許容範囲で、どこからが一線を越えるのか。その線は人によって違い、正解のない問いとして残りました。日本の名作が世界で愛され続けるほど、その名作を誰が所有しているのか、という問いも重くなっていく。今回の3時間は、それを小さく、しかしはっきりと映し出した出来事だったと思います。

編集部
吉沢まこと
Velleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。