📊 3行サマリー
- 韓国の大手プラットフォームNaverとKakaoが、2026年5月末までに全社員へChatGPTとClaude Codeの2ツールを並行配布。一般業務はChatGPT、ソフト開発はClaude Codeで役割分担する方針を明文化した。
- 背景にあるのはClaude Codeのenterprise codingシェア42%(ChatGPTは21%、Menlo Ventures調査)と、2026年4月にAnthropic Claudeが韓国の有料生成AI市場でChatGPTを初めて抜いた市場逆転。Anthropicは2026年初頭にソウル事務所を開設し、開設前4ヶ月で韓国利用が6倍に伸びた。
- 日本ではNECが2026年4月23日にAnthropicの日本初のグローバルパートナーに就任しClaude Code中心の体制を構築中。一方の韓国大手は単一ベンダー依存を避ける「2本立て」を選択しており、日本企業がどちらに寄せるかの判断材料が出揃ってきた。
NaverとKakao、5月末までに全社員へChatGPT+Claude Codeを並行配布
韓国を代表するインターネット大手のNaver(ネイバー)とKakao(カカオ)が、ChatGPTとClaude Codeを社内標準ツールとして全社員に配布する体制を整えていることを、2026年5月24日付のTech Timesが報じた。NaverはすでにChatGPTとClaude Codeの両方を社内AIツールキットに含めており、Kakaoは2025年初頭にOpenAIと提携した上で、2026年5月末までにClaude Codeの全社員展開を完了させる予定だ。両社とも、ChatGPTを汎用アシスタント、Claude Codeを開発の本命に置く役割分担を選んだ。特定ベンダーに依存しない「マルチモデル運用」を、社内方針として明文化した格好になる。
Tech Times:「ChatGPTは汎用・Claude Codeは開発」が役割分担の核
元ネタ:Naver and Kakao Deploy ChatGPT and Claude Code Together: Inside South Korea’s Dual-Stack Enterprise AI Shift(Tech Times / 2026-05-24)
The playbook emerging from Seoul’s largest tech firms is specific: ChatGPT serves as the default general-purpose assistant; Claude Code is the chosen tool for software development. Enterprises that pick only one are leaving capability on the table.
Naverの広報担当者はTech Timesの取材に対し、「業務やスタイルに合わせて社員が自分で使うAIツールを選べるよう支援している。AIの状況は速く変わるので、より良い道具と働き方を継続的に評価していく」と答えた。Kakaoは2025年2月にOpenAIと戦略提携を結びChatGPT Enterpriseをすでに社員に配布していた経緯がある。そこへClaude Codeを上乗せした形だ。2024年末の自社開発者向けカンファレンスで掲げた「AIモデル・オーケストレーション」戦略の延長線上に、この2本立てを位置づけている。
Claude Codeはenterprise coding 42%・ChatGPT 21%、倍の差がついた
2本配布に踏み切った最大の理由は、コーディング領域でのシェアの差だ。Menlo Venturesの調査ではClaude Codeがenterprise coding用途で42%のシェアを握っており、ChatGPT(21%)の倍の水準まで広がっている。「コーディングは汎用AIの一機能」ではなく、独立した調達カテゴリとして扱うべきフェーズに入った、ということだ。Anthropicが2025年5月にClaude Codeを正式リリースして以降、3ヶ月で利用が10倍に拡大したというデータも、企業のIT責任者が単一AIサブスクリプションでは取りこぼす能力を強く意識した背景がある。
市場全体でも逆転が進む。Anthropic Claudeは2026年4月、韓国の有料生成AI市場で初めてChatGPTを抜いた(KED Globalによる集計)。Anthropicは同時期にソウル事務所を開設し、開設前の4ヶ月間で韓国利用が6倍に増えたことを開設理由として挙げている。韓国は米国外で最大のChatGPT課金者数を抱える国でもあり、韓国の企業調達判断はアジア太平洋全域の先行指標として扱われている。Yanolja、Kakao Mobility、Woowa Brothers(Baemin運営)も2025年後半から2026年4月にかけてClaude Enterpriseの導入に踏み切っており、「単一ベンダーの2本立て」はNaver・Kakaoだけの話ではなくなりつつある。
NEC・NRIはAnthropic単独で深く——日本企業は「絞る」「並べる」の岐路に立つ
同じ時期、日本ではNECが2026年4月23日にAnthropicの日本初のグローバルパートナーに就任した。「Claude Cowork」を軸とした金融・製造・地方自治体向けのセキュアな業界別AIソリューションを共同開発し、Claude Codeを用いて日本最大級のAIネイティブ・エンジニアリングチームを構築する計画だ。野村総合研究所(NRI)も2026年3月にAnthropic Japanとのパートナーシップ拡大を発表した。Anthropic自身もダリオ・アモデイCEOが訪日して高市首相と面談、日本AI安全研究所と協力覚書を交わした上で東京事務所を開設している。
つまり日本のSIerやプラットフォーマーは、現時点ではChatGPTとClaudeを並行配布する韓国型ではなく、Anthropicに比重を置いた取引関係を先に固めている。社内エンジニアリング体制の刷新を一気に進めたい場合には合理的な選択だが、Claudeの性能優位やライセンス条件が将来変化した際の切り替えコストを背負う前提でもある。Harvard Business Reviewの分析では、世界平均でも社員の43%がすでに業務で2つ以上のLLMを使い分けており、単一モデルに依存している企業は18%に過ぎない。フォーチュン500の65%はマルチモデル戦略を「構築中」の段階で、韓国大手の決断はその先取りに当たる。
韓国の「2本立て」は単一ベンダー依存からの脱却モデル
NaverとKakaoが選んだ2ツール並行配布は、ベンダーロックインを避けつつ性能と価格の競争圧力を維持するための経営判断だ。両社の方針が広く模倣されれば、生成AIの企業調達は「どのモデルを選ぶか」ではなく「どのタスクにどのモデルを当てるか」というポートフォリオ設計に軸足を移す。日本企業がAnthropic単独で深掘りするか、韓国型の2本立てに切り替えるかの判断は、社内のソフト開発比率と、ベンダー切り替えに耐えうるガバナンス体制が決め手になる。AI調達を1社で済ます時代は、2026年中に終わるはずだ。


