📊 3行サマリー

  • インドのデータセンター市場で最大の事業者は、日本のNTT。稼働拠点は18、保有容量は265メガワット超にのぼる。
  • 国内財閥のリライアンスとアダニが計2,100億ドル(約32兆円)、米IT大手3社も675億ドル(約10兆円)の投資を表明した。
  • NTTは2027年までにインドの容量を700メガワットへ増やす計画。先に入った日本企業が首位を保てるかが焦点になる。

📝 インドのデータセンター市場、首位は日本のNTT。容量は2025年末で1,500メガワットに

インドのデータセンターの総容量が、2025年末で約1,500メガワットに達した。2026年中には1,800メガワット規模まで広がる見込みだ。生成AIの普及で計算資源の需要がふくらみ、世界の投資マネーがこの国に向かっている。

その市場で稼働容量が最も大きい事業者は、日本のNTTである。NTTのデータセンター部門は、デリー首都圏・ムンバイ・チェンナイ・ベンガルールに18拠点を構え、保有容量は265メガワットを超える。インド市場の規模は2025年で97.9億ドル(約1.5兆円)。2031年には210億ドル(約3.3兆円)へ伸びると予測されている(1ドル155円換算、以下同じ)。

📰 ResearchAndMarkets報告:主要39事業者のうちNTTが最大、稼働拠点は132

元ネタIndia Colocation Data Center Portfolio Report 2025-2028(Business Wire / ResearchAndMarkets / 2025年12月5日)

NTT Global Data Centers remains the largest colocation operator in India, followed by ST Telemedia Global Data Centers and Sify Technologies.

この報告書は、インド国内で稼働中の132拠点、建設中の84拠点、39の主要事業者・投資家を調べたものだ。そのなかでNTT Global Data Centersを「最大の事業者」と位置づけた。2位がシンガポール系のST Telemedia、3位がインド企業のSifyと続く。

NTTがこの座についた理由ははっきりしている。2016年にインドのデータセンター大手ネットマジックを買収し、ほかの海外勢より早く市場に入った。当時のインドはまだデータセンター不毛の地に近く、その時期に拠点網を押さえたことが、いまの首位につながっている。

🔥 リライアンスとアダニが計32兆円、米IT3社も10兆円。資金がインドに殺到する理由

首位のNTTを脅かしているのは、桁違いの投資表明だ。2026年2月にニューデリーで開かれたインドAIインパクトサミットの前後に、巨額の計画が相次いで明らかになった。

国内最大の財閥リライアンスは、AIとデジタル基盤に約1,100億ドル(約17兆円)を投じると発表した。中心になるのはグジャラート州ジャムナガルの「マルチギガワット級」データセンターで、2026年後半に120メガワット超が動き出す。もう一方の財閥アダニも、2035年までに約1,000億ドル(約16兆円)を投じ、データセンター容量を2ギガワットから5ギガワットへ引き上げる構えだ。2社合わせて約32兆円になる。

米国のIT大手も負けていない。マイクロソフトが2030年までに205億ドル、グーグルが150億ドル(アンドラプラデシュ州ビシャカパトナムに1ギガワットの拠点、2026年4月28日に着工)、アマゾンが2030年までに153億ドルを表明した。3社で675億ドル、約10兆円にのぼる。

なぜインドなのか。理由は大きく3つある。発電コストが安く、リライアンスのように太陽光由来の余剰電力を自前で抱える企業まである。英語が通じるIT人材が豊富で、開発と運用の両方を国内で回せる。そして14億人の国内市場そのものが、生成AIの一大消費地になりつつある。インドのAI市場は2027年に200億〜220億ドル規模へ達し、年率30%で伸びると見込まれている。米中どちらの技術圏にも完全には属さない「第三の極」を狙える立地でもある。

🇯🇵 NTTは2027年に700メガワットへ増強。日本企業の先行者利益はどこまで守れるか

NTTも手をこまねいているわけではない。インドでの容量を2027年までに700メガワットへ増やす計画を掲げ、足場を固める動きを続けている。2026年1月9日に登記された案件では、ムンバイのバラジITパークにある11階建てのデータセンターを55.9億ルピー(約62億円)で取得した。2025年6月にも同じITパークの用地を85.5億ルピー(約100億円)で押さえている。

ただ、規模の競争では分が悪い。リライアンス1社のマルチギガワット計画と、NTTの700メガワットを並べると差は明らかだ。財閥は自前の安い電力を持ち、米IT大手は自社クラウドという確実な需要を抱える。NTTの強みは、特定の通信網に縛られない「キャリアニュートラル」な立地と、長く築いてきた企業向けの取引関係にある。価格と規模で殴り合うのではなく、信頼性と中立性で選ばれる事業者であり続けられるか。そこが分かれ目になる。

これは日本にとって、海外インフラ事業の試金石でもある。NTTは早くインドに入り、首位という有利な位置を取った。その先行者利益が、AIブームで一気に流れ込む巨額資金の前でどこまで持つのか。守り切れれば、日本企業が世界のAI基盤づくりで存在感を保てる証明になる。押し切られれば、規模で勝てない日本勢の弱さが、もっとも分かりやすい形で表れる。

🏁 インドのデータセンター争奪戦は、日本企業の海外展開を映す鏡になる

インドのデータセンター市場は、日本企業が早く動いて首位を取った数少ない海外領域だ。だが、いま起きているのは、その有利な位置を国内財閥と米IT大手が物量で塗り替えにかかる局面である。NTTが2027年の700メガワットを足がかりに首位を保てるのか、それとも先行者利益が押し流されるのか。インド一国の話に見えて、世界のAIインフラ競争で日本企業がどこに立てるかを占う材料になる。個人的には、規模では勝てない以上、NTTがどんな「規模以外の武器」を打ち出すかに注目している。