📊 3行サマリー

  • ONE OK ROCKが2026年3月、5月の上海公演を「不可抗力」で中止。2025年11月以降、浜崎あゆみ・ゆず・JO1など10組超の日本アーティストが中国公演を失った。
  • 発端は2025年11月7日の高市早苗首相の台湾有事発言。中国当局は同月中に全会場へ「日本人アーティストの公演を受け付けない」よう通達。
  • 中国は2025年にIFPI(国際レコード産業連盟)の調査で世界4位の音楽市場(前年比+20.1%成長)に浮上。拡大する市場から日本が弾かれる矛盾が深刻化している。

📝 ONE OK ROCK、上海5万人規模のライブを「不可抗力」で返上。2026年も続く日本公演禁止の波

2026年3月6日、日本のロックバンドONE OK ROCKはアジアツアー「DETOX Asia Tour 2026」の一環として予定していた5月9日の上海・虹口サッカー場公演の中止を発表した。理由は公式Xで「予期せぬ事態」「不可抗力」とのみ説明された。同バンドは「またお会いできるのを楽しみにしています」とファンへメッセージを残したが、再開の見通しは示されていない。

ONE OK ROCKの中止は2025年11月以降に始まった大規模な禁止措置の延長線上にある。同年11月以降、浜崎あゆみ、ゆず、JO1、シド、大槻マキ(ワンピース主題歌歌手)、ジャズピアニストの上原ひろみなど10組を超える日本アーティストが中国本土・マカオでの公演をキャンセルさせられた。一部の公演では開演5分前の中止通知もあったとされ、ファンから強い怒りが噴出した。

📰 CNBCとAnime News Network:会場への通達は「2026年の申請も不可」

元ネタJapanese concerts in China are getting abruptly canceled as tensions simmer(CNBC / 2025年11月21日)、ワンオク上海公演中止はなぜ?中国での日本アーティスト公演中止が相次ぐ理由(MEDIA DOGS / 2026年3月7日)

“Authorities instructed Chinese venues to cancel all concerts featuring Japanese artists for the rest of 2025 and to stop submitting new applications for 2026 performances.”

CNBCはコンサートプロモーターの証言として「会場側は当局から”日本人アーティストの2026年以降の申請は受け付けない”と伝えられた」と報道。禁止は当初は2025年末限定と見られていたが、ONE OK ROCKのケースが示すように、事実上2026年も継続している。K-POPグループの中にも日本人メンバーを含む場合は香港・マカオ公演が禁止されたケースがあり、禁止は日本のコンテンツ全般に及んでいる。

🔥 高市首相の台湾発言が引き金。政治対立がエンタメ禁止に直結した構造

禁止措置の直接的な引き金は2025年11月7日、高市早苗首相が国会予算委員会で「台湾有事は存立危機事態になりうる」と答弁したことだ。中国政府はこれを台湾独立を支持するシグナルと受け取り、報復措置の一環として文化交流の締め付けを強化した。

アニメイベントの中止、映画の公開延期、コンサート禁止が同時に進行し、Japan Timesは「日本のポップカルチャーが日中対立の十字砲火に巻き込まれている(Culture caught in crossfire)」と報じた。政治的な対立が文化・エンタメ分野に即座に波及する構造は、2010年代の尖閣諸島問題前後の「反日デモ→日本製品不買」の連鎖と類似しており、今回は音楽ライブという極めて非政治的な場が標的になっている点が特徴だ。

🇨🇳 「金返せ」「中国人として恥ずかしい」——中国のファンも政府措置に反発

中国の一般市民の反応は政府の措置と必ずしも一致していない。上海で急遽キャンセルになったコンサートでは、チケットを持ったファンが「金返せ(退票)」とチャントするビデオがオンライン上に拡散した。CNBCのインタビューに応じた37歳のJ-POPファンは「一般市民が最初の被害者になるような形で日本公演への規制を行うべきではない。盲目的な反日感情を世論で煽ることはやめてほしい」と述べた。

コンサートプロモーターは「会場では反日感情を見せたファンは一度も見たことがない。政治を持ち込む人は誰もいなかった」と証言。また中国のSNS(微博)には「中国人として恥ずかしい」という投稿も現れ、禁止措置への批判は国内からも出ている。文化と政治の切り離しを求める声は大きいが、当局の方針は変わっていない。

🏁 世界4位の音楽市場に入れない日本——20.1%成長の中国が突きつける政治リスク

皮肉なのは、この禁止措置が中国の音楽市場が急成長している時期に重なっていることだ。IFPI(国際レコード産業連盟)の2026年グローバル音楽レポートによれば、中国は2025年に前年比20.1%の収益成長を記録し、ドイツを抜いて世界第4位の音楽市場に浮上した。日本は同2位(+8.9%)を維持しており、世界のトップ2の市場が政治的断絶によって切り離されているかたちだ。

これまで中国はアジア最大のエンタメ市場として日本アーティストにとって重要な収益源だったが、2025年11月以降の禁止措置は「ビジネスリスクとしての政治」を改めて浮き彫りにした。今後の日本アーティストのアジアツアーにおいて、中国本土を「リスク枠」として扱い、台湾・東南アジア・中東を軸に組み直す動きが加速するとみられる。日本のエンタメ産業にとって、中国の存在は「巨大な市場」から「不確実な変数」へと変質しつつある。