📊 3行サマリー
- Netflix『ブラッドハウンド』シーズン2(2026年4月3日公開)の影響で、原作ウェブトゥーンの世界読者数が公開後2週間で約22倍に急増。
- 言語圏別では韓国語サービス38倍・繁体中文123倍・英語20倍・タイ語12倍と非対称な伸び。シーズン2は4月6〜12日週で740万再生を記録。
- 原作ウェブトゥーンはNaver Webtoon掲載(作画:ジョン・チャン)。Naverと同一資本圏のLINEマンガや少年ジャンプ+の縦読み戦略にとっても、実写化による原作逆流モデルは参考事例になる。
📝 Netflix『ブラッドハウンド』公開後2週間で原作ウェブトゥーンの世界読者が22倍に
Netflixで2026年4月3日に配信が始まった韓国ドラマ『ブラッドハウンド』シーズン2を受けて、原作ウェブトゥーンの世界読者数がわずか2週間で約22倍に跳ね上がった。Naver Webtoonによる集計で、ティザー公開前(3月上旬)と公開後(4月3〜16日)を比較した数字である。増加分の大半は既存読者の再訪ではなく、英語・中国語(繁体中文)・タイ語など複数言語圏の新規流入が占めた点が、単なるメディアミックス連動とは異なる今回の特徴だ。
📰 Chosun Biz報道:シーズン2公開後、Naverが全地域で原作読者の急増を確認
元ネタ:Bloodhounds Webtoon Sees Surge in Readership Following Release of 2nd Season of Live-Action Netflix Series(Anime News Network / 2026年4月17日。原報道は韓国Chosun Bizによる李ジェウン記者の記事)
By region, views on the Korean service increased about 38 times, while Traditional Chinese views rose 123 times.
Chosun Bizは今回の急増について、Naver Webtoonが実写化タイトルに対し独自の「プロモーションレーン」(関連作品の無料開放・縦読み特集ページ・シーズン連動の先行エピソード配信)を組み合わせたことで、従来型の広告よりも遷移率が高い導線を設計できた点を挙げている。Netflixトップ10の韓国コンテンツ部門でシーズン2は4月6〜12日週に740万再生を、その前週(3月30日〜4月5日)に500万再生を記録しており、ドラマの視聴ピークと原作の読者流入ピークがほぼ同期している。
🔥 韓国38倍・繁体中文123倍、言語圏ごとに異なる”飛び火”の構造
今回のデータで目を引くのは、言語圏別の伸び率が極端に非対称である点だ。増加倍率は繁体中文123倍、韓国38倍、英語20倍、タイ語12倍の順で、繁体中文圏が韓国本国の3倍を超える勢いで伸びている。背景として考えられるのは3つの構造要因である。
第1に、繁体中文圏(台湾・香港)ではNetflix韓国ドラマの視聴が習慣化しつつも、原作ウェブトゥーンへの流入経路が未成熟だった。シーズン2公開をきっかけに「原作を読む」という行動が初めて大量に発生し、母数の小ささゆえ倍率が跳ね上がった。第2に、韓国本国では既読ユーザーが多く、純新規より「再訪」が中心となるため倍率が抑えられた。第3に、英語圏・タイ語圏では独立系のマンガ・アニメ読書文化が既に太く、原作流入は既存読者の回遊行動の延長になる。
倍率そのものより重要なのは、各言語圏の流入がすべて有料会員化の前段階であるプラットフォームの”固定客層”形成に寄与していることだ。Naverは今回のキャンペーンで原作の先行エピソードを一部地域で無料開放しており、読者ID登録とロイヤリティ蓄積のきっかけとして機能している。
🇯🇵 LINEマンガと少年ジャンプ+、日本の縦読み戦略が同じ逆流を再現できるか
この事例は日本の縦読みプラットフォームにとって示唆が大きい。Naverと同一資本圏(LYコーポレーション)に属するLINEマンガは、すでにオリジナル縦読み作品の映像化を進めており、2025年以降は一部作品でアニメ化・実写化との連動販促を試みている。しかしブラッドハウンドのような「実写化ドラマが原作ウェブトゥーンを22倍押し上げる」スケールの”逆流”を日本市場で実現できた事例はまだ出ていない。
構造的に越えるべき壁は2つある。第1に、映像化される作品と原作掲載プラットフォームの資本関係。今回はNetflix(配信)とNaver Webtoon(原作・資本関係は独立)という、独立した2社の連携だからこそNaver側が動線を設計できた。日本の場合、集英社『少年ジャンプ+』が実写化・アニメ化と連動する動きは強いが、Netflix側との共同プロモーション枠は限定的だ。第2に、多言語展開の同時性。今回のNaverは世界各地域サービス(英語・繁体中文・タイ語)で同時にキャンペーンを打った。一方、LINEマンガは日本市場中心でグローバル展開は限定的、少年ジャンプ+は多言語版を持つが地域別プロモの機動力は弱い。
逆に言えば、これら2つの壁を越えられる事業者——例えば集英社+Netflix+MANGA Plusの3者連携——が実現すれば、日本発原作でも同規模の”逆流”は設計可能だ。今回のNaverの手法は、日本側が「実写化は映像収益、原作は出版収益」という分断された発想から脱却するための明確な参照点になる。
🏁 Naverの”実写→原作”逆流が示す、ウェブトゥーン時代の新しい収益設計
従来のメディアミックスは「原作ヒット→映像化」という一方通行で語られてきた。しかし今回のブラッドハウンドは「映像化→原作ロイヤリティ形成→次回シーズン・スピンオフへの定着率向上」という逆流を数字で示した初の大型事例である。収益源が映像配信だけでも原作販売だけでもなく、「両方を往復させる読者・視聴者プール」そのものになっていく——これがウェブトゥーン時代の新しい収益設計の姿だ。Netflixのシーズン3がいつ発表されるかだけでなく、Naverがこの勢いをどの作品に横展開するかが、次の1年の注目点になる。

