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【インド】任天堂の名前を使った不動産会社、デリー高裁が2週間以内の社名変更を命令。インド政府の著名商標298件に日本のゲーム企業はゼロ

編集部
吉沢まことVelleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight
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【インド】任天堂の名前を使った不動産会社、デリー高裁が2週間以内の社名変更を命令。インド政府の著名商標298件に日本のゲーム企業はゼロ

3行サマリー

  • デリー高等裁判所が7月29日、インド・パトナの不動産会社に対し、2週間以内に社名から「Nintendo」を外すよう命じました。
  • 任天堂がこの会社に気づいたのは2025年11月。2026年2月17日に送った警告書に返答がなく、提訴に踏み切っています。
  • インド政府が公認する著名商標298件(2025年2月10日時点)に、日本のゲーム・アニメ企業は1社も入っていません。

デリー高裁、パトナの不動産会社に2週間以内の社名変更を命じた

インドのデリー高等裁判所は7月29日、ビハール州パトナで登記されていた「Nintendo India Private Limited」に対し、社名としても商標としても「Nintendo」を使わないよう命じる仮処分を出しました。担当はJyoti Singh判事です。是正の期限は2週間、本案の次回期日は12月4日に指定されています。

不思議なのは、この会社がゲームともゲーム機とも関係がないところです。登記上の事業内容は不動産の取得・管理・売買。ウェブサイトを持たず、「Nintendo」の商標出願もしていませんでした。それでも「Nintendo India」という社名だけが、法人登記簿に残っていたわけです。

Bar and Bench報道:裁判所は「任天堂の信用にただ乗りする狙い」と認定した

出典Nintendo gets relief from Delhi High Court against Bihar company ‘Nintendo India’(Bar and Bench / 2026年8月4日)

出典Did you know there was a Nintendo company in Bihar? Delhi High Court stops its name(News9live / 2026年8月5日)

with an objective of encashing on the goodwill and reputation of the Plaintiff(原告の信用と評判にただ乗りすることを目的として)

裁判所が根拠にしたのは、1999年商標法の第29条4項です。よく知られた登録商標については、まったく別の業種で使われた場合でも保護が及ぶという規定になります。判事は「Nintendo」が辞書に載っていない造語であり、任天堂が1889年から継続して使ってきた登録商標であることを重く見ました。インドでの商標登録は1983年までさかのぼります。

不動産とゲームでは商売がまったく違うので、ふつうなら混同は起きにくいはずです。それでも裁判所は、「Nintendo India」という名前を見た人がインド法人か関連会社だと思い込む可能性がある、と判断しました。

任天堂が気づいたのは2025年11月、2月17日の警告書に返事はなかった

時系列はこうです。任天堂がこの会社の登記を把握したのは2025年11月の第2週。調査で不動産業だと分かったあと、2026年2月17日に社名の使用をやめるよう求める警告書を送りました。返答がないまま、デリー高裁に商標権侵害の訴えを起こしています。

審理では、被告側の女性取締役1人がメールで「社名を商業的に使ったことはなく、今後も使うつもりはない」と認め、自身に対する恒久的な差し止めにも同意する意向を示していたことが明らかにされました。ほかの被告は出廷せず、任天堂は仮処分を一方の当事者だけで進めるよう求めています。

争う気のない相手にここまで手順を踏むのか、というのが最初の印象でした。ただ、商標は他人に使われ続けたぶんだけ薄まっていきます。相手が使う気がなくても、名前が登記簿に残っているかぎり放置はしない。そういう線の引き方なのだと受け止めました。

インド政府の著名商標298件に、日本のゲーム・アニメ企業は1社もない

ここで気になったのが、任天堂はインドで「著名商標」として公認されているのか、という点です。インド特許意匠商標総局が公開している公式の著名商標リスト(2025年2月10日版・全298件)を、2026年8月6日に全文検索してみました。

任天堂は入っていません。セガ、カプコン、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、コナミ、サンリオ、東映のいずれも見当たらず、ゲーム・アニメの日本企業は1社も載っていませんでした。リストに名前がある日本企業は、ソニー、AIWA、トヨタ、東芝、キヤノン、スズキ、ヨネックス、カシオ、ホンダ、セイコーエプソン、アシックス、ブリヂストン、オムロン。自動車・電機・精密機器・スポーツ用品と、製造業ばかりです。

つまり任天堂は、政府のリストに載っていない状態で、裁判所の個別判断によって著名商標なみの保護を引き出したことになります。第29条4項は「よく知られていること」を要件にしますが、それを証明する作業は訴えるたびに一からです。

リストへの掲載は自動ではなく、申請と立証が要るしくみです。載っていないこと自体が知名度の低さを意味するわけではありません。それでも、日本のゲーム・アニメ企業が1社も通していないという事実は、インド市場での法務の手当てが後回しにされてきたことの裏返しだと思います。

日本のゲーム会社は、インドでは訴えて初めて名前を守れる

インドは日本のアニメ視聴で世界3位に伸びた市場で、任天堂も2027年2月から3月にかけてSwitchの公式販売を始めると発表しています。売り始める前に、名前だけが先に使われていたわけです。

この構図は任天堂に限りません。政府の著名商標リストにゲーム・アニメ企業が1社もいないということは、日本のコンテンツ企業がインドで名前を守ろうとするたび、今回と同じ手順を踏む必要があるということです。登記の監視、警告書、そして提訴。任天堂は2025年11月から2026年7月まで、8か月をかけて仮処分にたどり着きました。

本案の期日は12月4日です。仮処分はあくまで暫定で、「Nintendo India」の名前が最終的にどう処理されるかはこれから決まります。

編集部
吉沢まこと
Velleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。