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【アメリカ】ちいかわ、10月1日から初の公式英語吹替。劇場版158.4億円の人気作で、なぜ英語が最後だったのか

吉沢まこと
Velleity Note 編集長
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【アメリカ】ちいかわ、10月1日から初の公式英語吹替。劇場版158.4億円の人気作で、なぜ英語が最後だったのか

3行サマリー

  • 『ちいかわ』が2026年10月1日から初の公式英語吹替をYouTubeで週次配信する。公式英語チャンネルは9月19日に開設された。
  • 劇場版『映画ちいかわ 人魚の島の秘密』(7月24日公開)は興行収入158.4億円、観客動員はおよそ1086万人。
  • 韓国語と中国語の公式吹替はすでに存在しており、英語はいちばん後に回った形になる。日本国内のTVアニメは新作を休止し、12月25日まで過去25話を再放送する。

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Seriesちいかわ 公式英語吹替全2本

『ちいかわ』初の公式英語吹替版の配信と、海外・日本の反応を追う連載

  1. 2026/9/26【アメリカ】ちいかわ、10月1日から初の公式英語吹替。劇場版158.4億円の人気作で、なぜ英語が最後だったのか(この記事)
  2. 2026/10/3【世界】ちいかわ英語吹替版、第1話は1日余りで24万回再生。日本は配信対象外で見られない

ちいかわ、10月1日から初の公式英語吹替。公式英語チャンネルは9月19日に開設された

ナガノ原作の『ちいかわ』が、2026年10月1日から初めての公式英語吹替版をYouTubeで配信します。配信は週に1本のペースで、受け皿になるのは9月19日に開設されたばかりの公式英語チャンネルです。

これまで英語圏で『ちいかわ』を正規に見る方法は、Sentai Filmworksがライセンスを持つHIDIVEの英語字幕版が中心でした。8月20日からはODK Mediaの配信サービスAmasian TVが米国で20話を無料公開しています。つまり字幕での視聴環境は整いつつあったところに、公式の吹替が初めて加わる形になります。

英語吹替の声優キャストは、発表記事にも公式チャンネルの概要にも記載がなく、9月26日時点で公表されていません。

劇場版は興行収入158.4億円、観客動員はおよそ1086万人

出典:Chiikawa Film Earns 15.84 Billion Yen; TV Anime Streams English Dub on YouTube on October 1(Anime News Network / 2026年9月23日)

出典:Chiikawa anime to get official English dub, set to stream weekly on YouTube starting October 1(AUTOMATON WEST / 2026年9月24日)

Chiikawa anime to get official English dub, set to stream weekly on YouTube starting October 1

英語吹替の発表は、劇場版の成績と同じタイミングで出てきました。2026年7月24日に公開された『映画ちいかわ 人魚の島の秘密』は、公式Xの告知によると興行収入158.4億円、観客動員はおよそ1086万人に達しています。日本円で150億円を超える作品は年に数本という水準で、キャラクターグッズ中心だった作品が興行でも大きな数字を出したことになります。

この規模の実績が出た直後に英語チャンネルが立ち上がったのは、偶然ではありません。国内の興行で数字を出してから、英語圏への入口を用意する順序になっています。ただし劇場版そのものの海外展開については、AUTOMATON WESTが未確定と明記しており、9月26日時点で公開地域や時期の発表はありません。

韓国語と中国語の吹替が先にあり、英語がいちばん後に回った

今回の発表でいちばん意外なのは、英語が「初」だという点です。『ちいかわ』にはすでに韓国語と中国語の公式吹替が存在しており、英語版はそれらより後になりました。世界最大の市場向けの言語が最後に来るのは、日本のアニメの海外展開としては珍しい順番です。

理由として大きいのは、この作品の面白さが言葉そのものに強く依存していることです。『ちいかわ』の主人公は流暢に喋らず、短い声と擬音、独特の語尾で感情を伝えます。英語圏のファンコミュニティでも、うさぎの「ハ?」をどう表記するのか、ハチワレの「やだ」は英語で何になるのかといった点が、配信開始前から具体的に話題になっていました。声の出ないキャラクターの擬音をどう処理するかについては、先行した韓国語版やタイ語版が原音をそのまま残していたという指摘も出ています。

もうひとつは、中国語圏での商業的な成功が先に来ていたことです。2024年3月から5月にかけて上海で開かれたポップアップストアは、Sixth Toneによると営業3日間で800万元(当時のレートでおよそ110万ドル)を売り上げ、ピーク時には7000人の行列ができました。需要が先に立ち上がった市場から順に吹替が用意された、と考えると順序の説明はつきます。

トレーラーは公開からおよそ7時間で5.9万回、最も支持されたのは「ハチワレの声がかわいい」

英語圏の反応は、いまのところ歓迎が優勢です。公式英語チャンネルを日本時間9月26日13時台に確認したところ、登録者数は3.84万人、公開されている動画は6本でした。同日に公開された英語トレーラーは、公開からおよそ7時間の時点で再生5万9027回、高評価7166、コメント419件に達しています。主題歌「ひとりごつ」の動画は7万4000回、告知用のショート動画は4万5000回でした。

コメント欄で最も多くの支持を集めていたのは、ハチワレの英語の声がかわいい、という趣旨の投稿で、978の高評価が付いていました。次点は声を聞いて涙が出たという内容で605。英語圏のファンが反応しているのは吹替の存在そのものより、具体的な声の当て方でした。作品への関心が声という一点に集まっているのが、確認していていちばん印象的でした。劇場版を米国の映画館でも公開してほしいという要望も166の支持を集めていました。

Redditのちいかわ専用板でも、英語エピソード配信の告知スレッドが1419票と48件のコメントを集めています。別の関連スレッドもそれぞれ869票、508票、388票と反応があり、ニッチな板としては大きい数字です。なお個々の投稿は匿名の個人によるもので、それ自体を事実の根拠にはできませんが、受け止めの傾向は読み取れます。

反発は吹替そのものではなく「字幕版も出してほしい」に集中している

歓迎一色というわけではありません。ただし不満の向き先は、予想されるものとは少しずれています。

目立つのは、吹替を否定する声ではなく「字幕版も並行して出してほしい」という要望です。告知動画のコメント欄では字幕版を求める投稿に58の支持が集まり、吹替のアニメは見ない、日本語音声に字幕が付いたものを公式で出してほしい、という趣旨の投稿がRedditでも複数確認できます。公式が英語チャンネルで何を配信するかを吹替と明言しているため、字幕派の受け皿が示されていないことへの不安が出ている形です。

質そのものへの批判もあります。日本在住の英語話者を名乗るユーザーは、ハチワレとヨロイさんの声が原作の印象とかけ離れており、中国語版や韓国語版のほうが雰囲気を再現できていた、自分は日本語版を見続ける、と書いています。一方でX上には、英語吹替には普段乗り気ではないが今回は原語に近くて驚いた、という転向組の投稿もありました。評価が割れているのは、キャラクターの声が作品の核だと認識されているからこそです。どちらの投稿も作品を軽く扱っていないぶん、言葉が具体的でした。

なお公式英語チャンネルの表記では、キャラクター名はChiikawa、Hachiware、Usagi、Momonga、Yoroi-sanのようにローマ字のままで、英語圏向けの改名は確認できませんでした。

国内は12月25日まで再放送、新作休止と英語進出が同じ週に重なった

日本のアニメ産業の側から見ると、今回の動きは輸出の順番が変わりつつあることを示しています。Anime News Networkによると、公式サイトはTVアニメの新作エピソードを一時休止すると発表しました。休止中は初期のエピソードと劇場版に関連する回を中心に、影響力のある過去25話を12月25日まで再放送します。休止の理由は発表されていません。

国内で新作が止まる時期と、英語圏で初の公式吹替が始まる時期が重なったことに、海外のファンも気づいています。Redditの休止スレッドでは、来週から英語吹替があるから大丈夫だという反応や、劇場版と海外展開で手一杯なのではないかという推測が出ていました。ただし制作体制と休止の因果関係について公式の説明はなく、これはファンの受け止めにとどまります。

日本のIPにとって重要なのは、国内放送が止まっても海外での接点は増やせる、という運用が成立し始めていることです。グッズと劇場版で稼ぎ、TV放送は休みながら、英語圏には無料のYouTubeで入口を作る。テレビの放送枠を海外展開の前提にしない形が、ここでは選ばれています。

英語が最後になった作品が、10月1日から最大市場の入口を開く

『ちいかわ』の英語吹替開始が示しているのは、海外展開の順序が「市場の大きさ」ではなく「翻訳の難しさと需要の立ち上がり」で決まったということです。

理由は二つあります。ひとつは、この作品の魅力が短い声と擬音と語尾にあり、英語に置き換える難度が高かったこと。もうひとつは、中国語圏で先に商業的な成功が出ていたため、そちらから順に吹替が用意されたことです。実際、英語圏のファンが今いちばん反応しているのも作品の設定や物語ではなく、ハチワレの声が原作と合っているかという一点でした。歓迎と「字幕版も出して」という要望、そして声が違うという批判が同時に出ているのは、声そのものが作品の中身だと受け止められている証拠です。

残っている問いは、この入口がどれだけ広がるかです。公式英語チャンネルの登録者は9月26日時点で3.84万人にとどまり、劇場版の海外公開も未定のままです。10月1日からの週次配信が実際にどれだけ再生されるかが、158.4億円を生んだ作品が英語圏でも通用するかの最初の実測値になります。

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吉沢まこと
Velleity Note 編集長(EIC)・エディトリアルディレクター

Webデザイナー、雑誌出版社のWebディレクター、コンテンツマーケター、Web広告プランナーを経て、現在は愛知県の業界No.1企業のインハウスのAIプロダクトマネージャー兼データサイエンティスト。Velleity Noteでは編集長としてメディアの編集方針を定めるとともに、AIとの共著で記事を制作する自動化ワークフローの設計とシステム開発を手がけている。