📊 3行サマリー

  • 2026年5月9日14時10分、シンガポールのSuntec City Convention Centre 4階で開かれていたDoujin Market 2026の初日に、呪術廻戦・虎杖悠仁のコスプレをした18歳男性が、論争を呼んできた元ブロガーAmos Yee(27)を殴る・蹴るで暴行した。
  • 容疑者Bosco Chun Ho Wang(中国籍シンガポール永住者)は公的迷惑罪と故意傷害罪で起訴され、有罪なら最大3年の禁固か、S$5,000(約56万円)の罰金が科される。
  • 主催のNeo Tokyo Projectは事前にAmos Yeeを入場禁止としていたが、事件は会場外で発生。主催側は「公衆の安全は警察の管轄」として責任を否定し、SNSで拡散した動画から日本のオタクイベント文化が抱える「コスプレ自警団化」リスクが議論になっている。

🥊 呪術廻戦・虎杖悠仁コスプレの18歳が、5/9 Doujin Market初日に元ブロガーを殴り蹴る

シンガポール警察は2026年5月11日、5月9日(土)に同地のオタク即売会「Doujin Market 2026」で起きた暴行事件で、中国籍シンガポール永住者のBosco Chun Ho Wang(18)を公的迷惑罪(public nuisance)と故意傷害罪(voluntarily causing hurt)の二罪で起訴したと発表した。事件はSuntec City Convention Centreの4階で午後2時10分ごろ起きている。容疑者はアニメ『呪術廻戦』の主人公・虎杖悠仁のコスプレ姿で現場におり、被害者の元ブロガーAmos Yee(27)を殴打・蹴り・肘打ちで連続して攻撃したとされる。両罪で有罪なら、故意傷害で最大3年の禁固もしくはS$5,000(約56万円)の罰金、公的迷惑罪で最大S$2,000の罰金が科される。

📰 South China Morning Post:「コスプレイヤーが床にうずくまるYeeを殴り続けた」

元ネタTeenager charged after assault on Singaporean blogger Amos Yee at anime event(South China Morning Post / CNA配信 / 2026年5月11日)

Videos of the incident, which took place outside the Doujin Market anime convention, show a cosplayer raining punches, kicking and elbowing Yee as he crouches on the floor.

🔥 なぜ呪術廻戦コスプレ姿の参加者が手を出したのか——背景にAmos Yeeの過去と「事前ban」

被害者のAmos Yeeは、2015年に16歳で故リー・クアンユー初代首相を批判する動画を投稿し、シンガポール政治の議論を二分した人物だ。その後米国に移住し、児童に関する性的犯罪で有罪判決を受け、2026年に強制送還でシンガポールに戻ったばかりだった。主催のNeo Tokyo Project(NTP)は、Amos YeeがDoujin Market 2026への来場を予告したことを受け、SNS上で上がった懸念に応じる形で事前に入場禁止リストに加えていた。それでも当日Suntec周辺に現れたところを、参加者の一人だった容疑者が呪術廻戦・虎杖の衣装を着たまま追跡し、暴行に及んだ流れになる。動画はFacebookの「Currypotato Curry」アカウントから流出し、TikTok・Xを介して数百万回再生レベルで拡散した。

🇯🇵 日本のコミケでも他人事ではない——コスプレ自警団化と「オタク現場の治安維持」の構造

事件の核は「アニメイベントの参加者が、私的な判断で被害者扱いされていた来場予告者に物理的制裁を加えた」点にある。日本側でも、コミックマーケット運営は2024年以降「コスプレで会場外を歩かない/会場周辺で配布物を渡さない/コスプレで政治的・性的逸脱行為に及ばない」というルールを繰り返し周知してきた。今回はその逆で、日本発のコスプレ文化を取り入れた海外のオタクイベントで、コスプレ着用者が会場の外で「私刑」を実行した形になる。シンガポールは東南アジアでコスプレ・コミケ系の文化を最初に商業化した拠点で、2008年から続くAFAに加え、2026年だけでもDoujin Market・DOKI DOKI Anime Market・AFA Creators Super Festなど主要4イベントを抱える。日本のIPホルダーが東南アジア展開を加速させているなか、現地イベントの治安は集英社・MAPPAなどライセンス供与側にとっても他人事ではなくなっている。Doujin Market主催がSNSで「主催の責任ではなく警察案件だ」と踏み込んだことは、東南アジア各国のアニメイベント運営がどこまで治安維持を負うかを問う先例として残る。

🏁 「呪術廻戦コスプレが私刑」の絵柄が独り歩きする前に、構造の議論を残せるか

拡散している動画はインパクトが強すぎる。衣装と暴行の対比が目立ち、「呪術廻戦の主人公が論争人物を殴った」という絵だけが切り抜かれている。容疑者が刑事責任を問われている事実、被害者の前歴をめぐる別の議論、主催の入場禁止対応が機能しなかった理由は、ほとんど語られていない。日本のオタク文化を輸入したシンガポールのオタクイベントが、輸入元の日本では起きにくい形の私刑事件で世界に広がった——この皮肉をコスプレ画像の消費だけで終わらせるかどうかは、東南アジアでのアニメ産業の現場運営を考える側にも跳ね返る。Doujin Marketの一件は、その縮図と読める。