2026年7月20日 海外メディアとファンの愛を、脚色なしで日本語に @VelleityNote
Home/アニメ・コミックス/【サウジアラビア】東映と映画を作ったサウジのアニメ会社、リヤドで制作工程を公開。手話通訳つきで耳の聞こえない人も招いた
アニメ・コミックス サウジアラビア

【サウジアラビア】東映と映画を作ったサウジのアニメ会社、リヤドで制作工程を公開。手話通訳つきで耳の聞こえない人も招いた

編集部
Velleity Note 編集部Overseas Reception, Read Straight
公開 2026/07/19
最終更新 2026/07/19
verified現地の一次ソースで確認 約5分で読めます
【サウジアラビア】東映と映画を作ったサウジのアニメ会社、リヤドで制作工程を公開。手話通訳つきで耳の聞こえない人も招いた

3行サマリー

  • 7月16日、リヤドのプリンス・ファイサル・ビン・ファハド芸術ホールで「Manga Majlis」が開かれ、サウジのManga Productionsに所属する4人の作り手がアニメ制作の工程を頭から順に説明した
  • 主催者は手話通訳を手配し、耳の聞こえない参加者を他の観客と同じ議論の場に招いた
  • 同社は東映アニメーションと長編『ザ・ジャーニー』を共同制作した会社で、これまでに4,000人以上の制作人材を育てたと公表している

リヤドで4人の作り手が、アニメの作り方を頭から順に話した

7月16日、リヤドのプリンス・ファイサル・ビン・ファハド芸術ホールに、アニメとマンガのファンが集まった。「Manga Majlis Community Initiative」というイベントで、壇上に並んだのは作品の宣伝担当ではなく、実際に手を動かしている4人だった。Manga ProductionsでManga Arabia関連のプロデュースを担当するラミス・アル・スンタリ、キャラクターデザイナーのアマニ・アル・ルワイス、監督のリヤド・ドサリ、脚本のハーテム・アル・オマリ。企画の種がどう脚本になり、脚本がどう絵になり、それが何度書き直されるのか。1本のアニメが形になるまでの順番を、そのまま観客に開いた回だった。

登壇者たちが繰り返したのは、「アニメの作り方に決まった型はない」という点だった。ヒットしたマンガが出発点になることもあれば、脚本家が持ち込んだ原案から始まることも、プロデューサーの一言から動き出すこともある。どこから始まっても、試して、直して、また試す作業からは逃げられない。

Arab News報道:プロデューサーは「実験を外したら制作は成り立たない」と話した

元ネタManga Majlis event in Riyadh shines a light on anime production process(Arab News / 2026年7月17日)

Every project comes with its own challenges, and each one teaches us something new while helping us develop new ways of working.

アル・スンタリはこう続けている。企画ごとに事情が違うので、実験にどれだけ時間がかかるかは事前に読めない。だから計画段階がいちばん苦しい、と。リサーチについても「必要な答えが出るまで調べ続けるので、どの企画でもここがいちばん時間を食う」と語った。制作会社の広報文ではあまり出てこない、身も蓋もない話だ。

キャラクターデザインを担当するアル・ルワイスは、脚本を絵に変える手順を説明した。まず物語を読み解き、資料を当たり、監督と詰めながら、その話が置かれている文化的な背景に合う世界を組み立てる。監督のドサリは、アニメは書き手・デザイナー・監督・プロデューサーが常に連絡を取り合わないと崩れる仕事だと話し、脚本のアル・オマリは、決定稿にたどり着くまでに何度も書き直す過程を語った。

手話通訳を用意し、耳の聞こえない参加者を客席の端に置かなかった

この日の特徴として現地メディアが真っ先に挙げたのは、登壇者の顔ぶれではなく運営の設計だった。主催者はろう者コミュニティのメンバーを招待し、手話通訳を配置した。会場の後ろで別枠の見学をさせるのではなく、他の参加者と同じ議論に加われる形にしている。

アニメ・マンガ系のイベントで、この種の配慮が「後から足すもの」ではなく最初の設計に入っている例は、日本を含めてまだ多くない。ファン向けのコミュニティ企画でそこまで手を回したという事実が、サウジ側がアニメを一過性の流行として扱っていないことを示している。

東映と『ザ・ジャーニー』を作った会社が、いまは自前の作り手を壇上に並べている

Manga Productionsは、ムハンマド・ビン・サルマン財団(Misk)傘下の制作会社だ。日本のアニメファンに近いところでは、2021年の長編『ザ・ジャーニー』を東映アニメーションと共同制作した会社、と言えば通りがいい。監督は静野孔文、脚本は冨岡淳広。作画はリヤドと東京の両方で進み、制作チームは300人を超えた。日本側はキャリアの長いベテランが多く、サウジ側は23〜36歳の若い作り手が中心という編成だった。

あれから5年。今回リヤドの壇上に立ったのは、日本のスタッフではなくサウジの監督・脚本・キャラクターデザイナーだった。同社は制作分野で4,000人以上を育てたと公表しており、教育省・文化省と組んだ「マンガ教育プログラム」は「Madrasti」プラットフォームを通じて300万人以上の生徒に届いているという。配信での累計再生数は100を超えるプラットフォームで16億回を超えたとしている。

日本のアニメ現場にとって、サウジは発注元というより共作の相手に寄ってきている

日本のアニメ産業は、中東からの資金という文脈でサウジの名前を聞くことが多かった。ただ、今回のような催しを積み重ねている側が見ているのは資金よりも人だ。制作工程を公開の場でしゃべれる監督や脚本家が現地に育っていれば、次の日本との仕事は「日本に発注する」形から「日本と分担する」形に近づく。日本のアニメ会社にとっては、制作を丸ごと請け負う相手ではなく、企画段階から口を出してくる相手が増えるということでもある。

もう一点、日本の読者に関係するのは人材の流れのほうだ。サウジ側が4,000人規模で育てた層は、いずれ制作単価や納期の比較対象になる。日本のアニメ制作の人手不足がよく話題になるが、その受け皿として海外の若手が入ってくる経路は、こういう地道な催しの延長線上にできていく。

アニメの作り方を自分の言葉で説明できる作り手が、リヤドに出てきた

7月16日の催し自体は、大きなニュースではない。新作の発表もなければ、大型契約の署名式でもない。それでも押さえておく価値があるのは、日本から輸入したコンテンツを楽しむ側だったサウジが、制作の中身を自分たちの言葉で説明する側に回っている点だ。手話通訳まで用意して裾野を広げにきているところも含めて、この地域のアニメ熱は消費で止まっていない。日本のアニメが海外でどう受け止められているかを追うなら、興行成績の数字より、こういう催しに誰が壇上に立っているかを見たほうが早い。

編集部
Velleity Note 編集部
Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。