📊 3行サマリー
- 韓国最大の海賊版ウェブトゥーンサイト「Newtokki」と日本マンガ専門の姉妹サイト「Manatokki」、ウェブ小説の「Booktokki」が2026年4月27日深夜に同時閉鎖した
- SimilarWebによれば Newtokki だけで2026年3月の月間アクセスは1億2,600万件、韓国ウェブコミック業界への被害は2024年時点の業界推計で年398億ウォン(約2,700万米ドル)
- 5月11日に施行される韓国の改正著作権法は刑罰を最長7年・罰金1億ウォンに引き上げ、悪質侵害には損害額の最大5倍まで懲罰賠償を科す。運営者の1人は2022年に日本国籍を取得しており、引き渡しが日本マンガ業界の宿題として残る
Newtokkiら3兄弟サイトが2026年4月27日に同時閉鎖、5月11日の改正著作権法施行を前に
韓国の海賊版ウェブトゥーン最大ハブ Newtokki が、日本マンガ専門の姉妹サイト Manatokki、ウェブ小説の Booktokki と一緒に2026年4月27日に閉鎖した。サイトには「日付が変わるまでにサービスを停止する」「ユーザーデータはすべて削除する」「同名サイトが今後現れても自分たちとは無関係」という運営者声明が掲示された。閉鎖タイミングは2週間後に控えた5月11日の改正著作権法施行のすぐ前。Korea Herald は「政府の緊急遮断制度を察知した先手の自主閉鎖」とみる業界関係者の声を伝えている。
Korea Herald:3月単月1億2,600万アクセスの「scanlation ecosystem」中核が崩壊
元ネタ:Major comics piracy hubs are shutting down. Here’s how it happened.(The Korea Herald / 2026-04-29)
On Monday, Newtokki, a major illegal webtoon site in Korea, abruptly shut down.
SimilarWeb のデータでは Newtokki 単体で2026年3月だけ1億2,600万アクセスを記録した。韓国の海賊版エコシステムでは、公式公開直後の原稿(raw)を最速でアップロードする中核ノードとして機能していた。海外勢はそこから素材をスクレイプして他言語に翻訳し、各国の海賊版サイトに再アップロードする。Korea Herald は「scanlation ecosystem の急所が抜けた」と書く。Newtokki が止まると、英語・スペイン語の海賊版翻訳供給まで一拍遅れる構造になる。
改正著作権法は刑罰7年・罰金1億ウォン・5倍懲罰賠償の三段構え
5月11日に施行される改正著作権法の強化点は3つある。1つめが文化体育観光部に与えられた違法サイトの即時遮断権限で、これまで必要だった事前審査プロセスが省略される。2つめが刑事罰の上限引き上げで、最長7年以下の懲役または1億ウォン以下の罰金になる。3つめが民事の懲罰賠償で、故意や常習の侵害には損害額の最大5倍まで請求できる。Newtokki 側の閉鎖通知が「日付が変わるまで」と異常に急いでいたのは、この5月11日というデッドラインを直視せざるを得なかったからだろう。
韓国業界、政府主導から越境捜査へ——スペイン・中国でも海賊版が連鎖摘発
Korea Herald が描いたのは、Newtokki 1件にとどまらない海賊版の連鎖摘発だ。スペインでは2026年3月、大手スペイン語マンガ海賊版 TuMangaOnline(別名 ZonaTMO)が国家警察の摘発で停止し、アルメリアで容疑者3人が逮捕された。1月には Bato.to の運営者が中国で逮捕されサイトが沈黙した。共通しているのは、韓国政府が条約ルートで動くのではなく、Naver Webtoon・Kakao Entertainment ら韓国の権利者が現地法律事務所・調査会社・捜査機関と直接タスクフォースを組むようになったこと。Korea Herald 取材によれば、TuMangaOnline 摘発はスペインの法律事務所と国際反海賊版企業が証拠を組み立て、警察に渡したことで実現した。Bato.to の中国摘発は、日本側の反海賊版団体 CODA(角川・講談社・集英社・小学館・スクウェア・エニックスを代表する組織)が中国の調査会社と組んで通報まで持ち込んだ案件だ。
Manatokkiは日本マンガ専門、CODAも越境連携で日本国籍取得運営者を追う
姉妹サイト Manatokki は、日本マンガのスキャン版を大量に抱えた事実上の「日本マンガ専門」海賊版だった。日本のメディアでは Manatokki 単体で月400億ウォン規模を稼いでいたという報道もある。日本のマンガ家・出版社からすれば、最も悪質な海外プラットフォームの1つが消えたことになる。
ただ話はここで終わらない。Korea Herald は「Newtokki 運営者3人のうち1人が、韓国当局の追及を逃れるために2022年に日本国籍を取得した」と書いている。これまで韓国の権利者は日本側に犯罪人引き渡しを求めても、日本国内の出版社・関係機関と十分に連携できず、思うような成果を得られなかった。Bato.to の中国摘発が CODA 主導で動いた事例を見ると、引き渡しもまた日本マンガ業界が能動的に動くかどうかで景色が変わる話のように見える。
奈良会談での日韓IP協力合意、引き渡し問題が日本マンガ業界の宿題として残る
政府レベルの動きも進んでいる。Korea Herald は、本年初めの奈良首脳会談で、李在明大統領と高市早苗首相が「知的財産保護での協力を拡大する」と合意したと書いている。日韓のマンガ・ウェブトゥーン業界からすれば、この合意が運営者の身柄引き渡しという具体的な動きまで降りてくるかどうかが当面の見どころだ。Naver Webtoon は社内ツール「Toon Radar」で各話に不可視のウォーターマークを埋め込み、リーク発生件数を24時間以内で約90%減らし、対象作品の有料取引を平均23%増やした。日本側の出版社にとっても、価格より「タイミング差」が海賊版需要を生むという長年の業界共通認識を、技術と同時公開で塞ぎにいく以外に手はないように思える。


