📊 3行サマリー

  • 韓国公正取引委員会(公取委)が、ウェブトゥーン・ウェブ小説の主要事業者100社余りを対象に、収益分配の実態調査を5月4日付で開始
  • 焦点は3つ。収益分配(RS)、先払金(MG)、二次著作権。前年2025年は同委員会が23社1,112条項を是正させており、その延長線上の動き
  • 韓国ウェブトゥーン輸出の45%が日本向け。ピッコマ・LINEマンガの作家契約にも、是正の余波が及ぶ可能性が高い

📝 韓国公取委、ウェブトゥーン100社余りの収益分配構造を一斉調査開始

韓国の公正取引委員会(KFTC、以下「公取委」)が、ウェブトゥーンとウェブ小説の収益構造と取引慣行を本格的に解明する実態調査に着手した。書面調査の対象は国内の主要プラットフォームとCP(Contents Provider=コンテンツ提供事業者)合わせて100社余り。結果次第では、是正命令や標準契約書の改定にまで踏み込むことになる。

韓国のウェブトゥーン産業は世界の縦読み漫画市場を牽引してきた一方で、プラットフォーム・CP・作家の三者間で売上をどう分けているのかが長年見えにくかった。今回の調査は、その不透明な分配を産業全体で開けにいく動きである。

📰 edaily報道:5月4日に書面調査着手、契約3類型を重点対象に

元ネタKorea Fair Trade Commission Launches Probe into Webtoon, Web Novel Industry Practices(Anime News Network / 2026年5月9日)/原報道:edaily「웹툰·웹소설 ‘수익구조’ 들여다본다…공정위, 실태조사 착수」(2026年5月4日)

The Korea Fair Trade Commission has launched a full-scale investigation into the revenue structures and business practices of the webtoon and web novel industry.

edailyとAnime News Networkの報道によると、調査が焦点を当てているのは次の3類型である。

  • 収益分配(RS/Revenue Sharing)の設計。プラットフォーム・CP・作家の三者がどの比率で売上を分け、その内訳が当事者にどこまで開示されているか
  • 先払金(MG/Minimum Guarantee)の支給と差引き方式。作家に先払いした最低保証金を、後から売上で差し引く「後減算」の運用実態
  • 二次著作権の取り扱い。原作からアニメ・ドラマ・ゲームへ展開する際に、作家にどこまで権利と分配が戻るか

調査の主軸は書面アンケートで、必要に応じて踏み込みインタビューと専門家ヒアリングを併用する。市場シェア、ヒット作の獲得競争、流通構造まで横断的に見るとされている。

🔥 RS/MG/二次著作権が焦点——昨年は23社で1,112条項を是正させた前例

今回の調査が情報収集だけで終わらないと見られるのは、公取委が前年2025年に同産業へ示した動きが軽くないからだ。

2025年、公取委は主要CP23社の標準契約141種類を点検し、1,112件の不公正な条項を発見、是正を命じた。内容は「作家への一方的な契約解除権の留保」「二次著作物への作家関与を排除する条項」「報酬支払いの根拠が曖昧な条項」など多岐にわたり、1社あたり平均で48件もの問題条項が見つかった計算になる。

今回の100社調査は、その是正命令の効果検証であると同時に、CPの上位にあるプラットフォーム(Naver Webtoon、Kakao Entertainmentなど)との垂直的な取引慣行までを射程に入れている。MG後減算の運用実態が浮かべば、ヒット作以外の作家に長期間収入が発生しない「事実上のタダ働き」構造が、はじめて制度面から問題化することになる。

韓国のウェブトゥーン市場は2024年時点で年間2兆ウォン(約2,200億円)規模に到達した。だが作家の年間平均所得は産業の急成長に追いついていない、と現地メディアは繰り返し指摘してきた。今回の調査がRSとMGの設計にどこまで切り込めるかが、2026年下半期の韓国エンタメ規制の最大の焦点になる。

🇯🇵 ピッコマ・LINEマンガに直結——日本市場45%が韓国側の契約改定の前線に

この調査を、日本のウェブトゥーン読者や産業関係者が他人事として済ませにくい理由は単純だ。韓国ウェブトゥーン産業の海外輸出は日本が45%と国別1位で、北米(13.5%)と中華圏(14.0%)を合わせても日本ひとつには届かない。

日本市場の最前線に立っているのは2社のサービスである。

  • ピッコマ(Kakao Piccoma運営)。日本のアプリ収益ランキングで非ゲーム1位、2024年は年間消費支出ベースで日本一の漫画アプリに。累計取引高は1,000億円超
  • LINEマンガ(LINE Digital Frontier運営/Naver傘下)。2023年・2024年と『入学傭兵』が年間連載ランキング1位、4,000万ダウンロードを突破

両社は韓国本社のRS設計と契約テンプレートを基本的に踏襲しているため、公取委が韓国側に契約是正を求めれば、その変更は日本法人と契約する作家・CP側にも反映されざるをえない。とくにLINEマンガは日本オリジナルの縦読み作品の比率を上げており、日本の縦読み漫画作家の取り分にも直接の影響が及びうる。

逆方向から見れば、韓国規制の波が結果的に日本作家の処遇改善を押し進める構図にもなる。日本ではいまも縦読み漫画作家のロイヤルティ条件が表に出にくいケースが多いだけに、韓国の標準契約改定が業界横並びの基準引き上げを促す可能性は十分にある。

🏁 ウェブトゥーン産業の収益構造、創作者側の取り分が問われる時代へ

2025年の1,112条項是正、そして2026年の100社実態調査と続く韓国公取委の動きは、世界の縦読み漫画市場が「広げるフェーズ」から「分け方を整えるフェーズ」へ入りつつあることの輪郭をはっきりさせている。輸出の45%を引き受けている日本市場の動向と切り離せない話だ。日本のピッコマやLINEマンガで作品に課金している読者にとっても、その課金額が作家にいくら届いているのか、その透明性が問われる局面に入った。