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【世界】津田健次郎さん、AI音声の模倣動画188本の削除を求めTikTok運営会社を提訴。9月30日に判決

吉沢まこと
Velleity Note 編集長
公開
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3行サマリー

  • 東京地裁は2026年9月30日、声優の津田健次郎さんがTikTokの運営会社に動画の削除を求めた訴訟の判決を言い渡す予定です。
  • 訴状によると、津田さんの声をAIで模倣したとされる動画は2024年7月以降に188本投稿され、アカウントのフォロワーは一時20万人を超え、月50万〜75万円の収益があったとされています。
  • この訴訟はAFPが東京発で配信し、カナダのCP24やクウェートのKuwait Timesなど、アニメ専門ではない一般紙にまで載りました。

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Series津田健次郎さんのAI音声訴訟全2本

声優・津田健次郎さんが生成AIによる声の模倣動画をめぐりTikTok運営会社を訴えた裁判の経過を追う連載

  1. 2026/9/28【世界】津田健次郎さん、AI音声の模倣動画188本の削除を求めTikTok運営会社を提訴。9月30日に判決(この記事)
  2. 2026/9/30【世界】津田健次郎さんのAI音声訴訟、東京地裁が声にもパブリシティー権と初判断。188本の動画は削除済みで請求は棄却

東京地裁が9月30日に判決、争点はAI音声の模倣動画188本を削除できるかどうか

声優の津田健次郎さんがTikTokの運営会社を相手取って起こした訴訟の判決が、2026年9月30日に東京地裁で言い渡される予定です。津田さんが求めているのは、自分の声をAIで模倣したとされる動画の削除です。

訴状によれば、対象の動画は2024年7月以降に188本が投稿されました。生成AIで複製された声をめぐって、日本の声優が自らプラットフォームの運営会社を訴えた例はほとんどありません。判決がどこまで踏み込むかは、同じ立場に置かれたほかの実演家が次に何を根拠に動けるかを左右します。

津田さんは『呪術廻戦』の七海建人役などで知られ、英語圏のアニメファンにも名前が通っています。日本国内の民事訴訟でありながら、この件が通信社の配信に乗った理由のひとつはそこにあります。

AFPは「TikTok側は一般的な男性の声だと主張している」と報じている

出典:Japanese voice actor’s court fight against TikTok AI voice cloning(The Japan Times / 2026年9月27日)

出典:Japanese anime voice actor takes TikTok to court over AI voice clone(AFP/Kuwait Times / 2026年9月27日)

According to court records seen by AFP, TikTok argues that it is a “generic male voice” and that any similarity to Tsuda’s is subjective at best.

AFPは裁判記録を確認したうえで、TikTok側が「一般的な男性の声」であって、津田さんの声との類似は主観的なものにすぎないと主張している、と伝えています。津田さんの声を「低く、つやのある声」と形容し、その声質そのものが争点になっていることを記事の軸に据えました。

法的な根拠として報じられているのは、不正競争防止法2条1項1号の周知表示混同惹起と、パブリシティー権の侵害の二本立てです。著作隣接権を前面に出す構成ではありません。声の権利を正面から扱う条文が日本にないため、既存の法律を組み合わせて争う形になっています。

発信者情報開示命令は出たのに投稿者を特定できず、相手はTikTok運営会社だけになった

この件で動いている手続きは、性質の違う2つに分かれます。報道を読み比べていて、ここが一番つまずきやすいところだと感じました。混ぜてしまうと、なぜ相手がTikTokの運営会社だけなのかが見えなくなります。

ひとつめは発信者情報開示請求です。津田さん側は2025年6月に申し立て、同年8月に東京地裁が開示命令を出しました。ところが、TikTok側に残っていたログの保存期間が切れており、誰が投稿したのかを突き止められませんでした。命令には勝ったのに、相手の名前が出てこなかったということです。

ふたつめが、今回判決を迎える本訴です。2025年11月に東京地裁へ提起されたもので、被告はTikTokの運営会社だけです。動画を作って投稿した本人は被告に入っていません。投稿者が匿名のまま逃げ切れる構造だからこそ、プラットフォームに削除を求める以外の道が残らなかった、という順序になります。

ここで引っかかるのは、投稿者の特定に必要なログをどれだけ保存しておくかを決めているのが、ほかでもないプラットフォームの側だという点です。保存期間が過ぎれば投稿者は匿名のまま残り、声を使われたと考える側には、その同じプラットフォームを相手に争う道しか残りません。裁判所が開示を命じても実際には誰も特定できないのなら、この制度がいま誰を守れているのかという疑問は残ります。

なぜ今なのか、という点もここに関わります。生成AIによる音声合成は、特別な設備も専門知識もいらない作業になりました。模倣する側は数分で1本作れてしまいます。一方で、発信者情報の開示手続きは申し立てから命令まで数か月単位の時間がかかります。技術の速度と手続きの速度が噛み合っていないことが、この訴訟の形そのものに表れています。

法務省の検討会は2026年8月、声を「人格の象徴」としてパブリシティー権の保護対象に挙げた

声優業界が声のAI利用に反対の声を上げ始めたのは、この訴訟より前です。2024年10月15日、梶裕貴さん、福山潤さん、山寺宏一さん、中尾隆聖さんら有志26名が「NOMORE無断生成AI」を始動し、日本俳優連合と日本音声製作者連盟が賛同しました。無断学習と無断生成に業界として線を引く、という意思表示でした。

制度側も動いています。2026年8月7日、法務省の検討会が報告書を公表し、声は「人格の象徴」であってパブリシティー権の保護対象に含まれる、と明記しました。今回の判決は、この報告書が出たあとに言い渡される最初の判断のひとつになります。

日本俳優連合は2026年5月に公式SNSで津田さんの提訴を支持する趣旨の表明を出したと報じられています。連合サイト上の原文は確認できていないため、ここは報道ベースの情報として扱います。

なお津田さん本人と所属事務所の公式コメントは確認できていません。この記事で書いているのは訴状の内容と裁判記録にもとづく報道であって、本人の発言ではありません。

AFPの東京発記事はカナダ・台湾・クウェートの一般紙にまで届いた

海外での受け止め方を見るとき、この件は反応の量ではなく、報じられ方の広がりで測るのが正確です。

AFPが2026年9月27日に東京発で配信した記事は、カナダのCP24、クウェートのKuwait Times、台湾のTaipei Times、パキスタンのDawnに転電されました。いずれもアニメ専門媒体ではなく、一般ニュースを扱う媒体です。The Japan Timesは同じ日に署名記者による自社取材記事を出しています。アニメ業界の英語圏向け情報源であるAnime News Networkは、それより早い2026年5月26日に提訴を報じていました。

一方で、英語圏のSNSやコミュニティで大きな議論になった形跡は確認できませんでした。ここは正直に書いておきます。数字で示せる反応データが取れていない以上、「海外で炎上した」とは書けません。起きているのは、日本国内の一民事訴訟が通信社の配信網に乗り、アニメに縁のない地域の朝刊にまで届いたという現象です。津田さんという固有名詞が英語圏で通用することと、AI音声という主題が国境に関係なく問題になっていることの両方が効いています。

海外のファンがこの領域に敏感になっている例は、ほかにもあります。ブラジルでは『聖闘士星矢』の車田正美さんが巨額の横領被害を訴えた際、現地のファンが生成AIを使わない応援イラストのタグを立ち上げました(【ブラジル】聖闘士星矢の車田正美さんが46億円の横領被害を提訴)。作り手の権利が脅かされた場面で、海外のファンダムがAIの使用可否を自分たちの問題として持ち出す流れができつつあります。

争われているのは動画188本ではなく、声を複製された人が何を根拠に止められるかだ

この訴訟の実質的な争点は、削除される動画の本数ではありません。声を無断で複製された人が、どの法律を持ち出せば止められるのか、という一点です。

理由は手続きの経緯がそのまま示しています。開示命令が出ても投稿者にたどり着けず、残った相手はプラットフォームだけでした。そしてそのプラットフォームは「一般的な男性の声だ」と反論していると報じられています。似ているかどうかを主観の問題に落とし込まれたとき、実演家の側に何が残るのか。不正競争防止法とパブリシティー権という、声のために作られたわけではない条文の組み合わせで、そこを突破できるかが問われています。

判決は2026年9月30日に言い渡される予定です。結果がどちらに転んでも、同じ構図で悩んでいる実演家にとっては、次に取れる手の輪郭がはっきりする一日になります。

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吉沢まこと
Velleity Note 編集長(EIC)・エディトリアルディレクター

Webデザイナー、雑誌出版社のWebディレクター、コンテンツマーケター、Web広告プランナーを経て、現在は愛知県の業界No.1企業のインハウスのAIプロダクトマネージャー兼データサイエンティスト。Velleity Noteでは編集長としてメディアの編集方針を定めるとともに、AIとの共著で記事を制作する自動化ワークフローの設計とシステム開発を手がけている。