【韓国】シフトアップ、ステラーブレイドは給料あと3カ月分で中止寸前だった。救ったのはソニー

3行サマリー
- 韓国シフトアップのキム・ヒョンテCEOが、『ステラーブレイド』の開発中に「月給を3カ月分しか払えない時期があった」と韓国メディアINVENのインタビューで語りました(2026年9月20日公開)。
- 複数の投資家と大手パブリッシャーが「リスクが高く、損益分岐点にも届かない」として出資を断り、最終的にソニー・インタラクティブエンタテインメントとのパブリッシング契約で開発が続きました。
- 同作は2024年4月26日にPS5で発売され、2026年1月時点の累計販売は約610万本。2026年11月にはNintendo Switch 2版の発売が予定されています。
シフトアップCEO、ステラーブレイドの開発中に「給料は3カ月分しか払えなかった」と証言
韓国のゲーム会社シフトアップの代表、キム・ヒョンテ氏が、アクションゲーム『ステラーブレイド』の開発期間中に会社が深刻な資金難に陥っていたことを明かしました。韓国メディアINVENのインタビューで、月給を3カ月分しか支給できない状況に置かれた時期があったと語っています。
同作は2024年4月26日にPS5で発売され、日本でも同日に日本語音声つきで発売されました。2026年1月時点の累計販売は約610万本に達しています。その代表作が、発売の数年前には資金の尽きる寸前まで追い込まれていた。まずこの落差が印象に残りました。
INVENインタビュー:「本作を諦めて別プロジェクトに移れば、会社の価値をより高く評価する」と投資家に言われた
出典:김형태 대표 인터뷰(キム・ヒョンテ代表インタビュー)(INVEN / 2026年9月20日)
出典:“We could only pay salaries for about three months.” Shift Up CEO talks about Stellar Blade’s difficult development and facing rejection from investors(AUTOMATON WEST / 2026年9月22日)
We could only pay salaries for about three months.
キム氏によれば、シフトアップは複数の投資家と大手パブリッシャーに資金を求めましたが、その多くが断りました。理由は「リスクが高く、損益分岐点にも届かない」というもので、なかには「本作を諦めて別のプロジェクトに移れば、会社の価値をより高く評価する」と伝えてきた投資家もいたといいます。MMORPGのような、当時の韓国市場で手堅いとされたジャンルへの転換を促す声です。
キム氏は当時、韓国でこの種のゲームを作ることが正しい判断なのか自分でも疑念を抱いていたとも述べています。最終的にソニー・インタラクティブエンタテインメントとのパブリッシング契約が成立し、開発は継続されました。GamesRadar+やTheGamerも同じ内容を報じており、発言の中身は複数媒体で一致しています。
開発開始は2019年、NIKKEの配信は2022年。ガチャ運営の会社が買い切りアクションに賭けた3年間
この話が海外で強い反応を呼んだのは、時系列を並べると資金難の深さが見えてくるからです。『ステラーブレイド』は2019年4月に「Project EVE」の名で発表されており、開発期間はおよそ5年に及びます。一方、シフトアップの収益柱として知られる『勝利の女神:NIKKE』のアジア圏配信が始まったのは2022年でした。
つまり開発の前半、会社にはNIKKEの売上がまだありません。シフトアップは2013年12月に設立され、それ以前の自社タイトルは『デスティニーチャイルド』などのモバイル作品でした。基本プレイ無料のモバイル運営で回していた会社が、買い切りのコンソール向けアクションゲームに数年分のリソースを注ぎ込む。投資家から見れば、実績のないジャンルへの転換に映ったはずです。
結果だけを見れば、判断を誤ったのは断った側でした。シフトアップは2024年7月11日に韓国取引所(KOSPI)へ上場し、2024年通期の売上は2198億ウォンで前年比30%増を記録しています。
Redditの反応は「ソニーの担当者に拍手を」。投資家の判断を笑う声が並んだ
このインタビューは海外の掲示板Redditでも取り上げられ、ゲーム系の大型コミュニティであるr/gamingのスレッドは763の賛成票と249件のコメントを集めました。以下はいずれも筆者による意訳で、逐語訳ではありません。個別のコメントは現地の受け止めを示すものであり、事実の根拠としては扱っていません。
- 「この作品を見て『どうしても欲しい』と思ったソニーの担当者に拍手を送りたい」(賛成票827)
- 「今ごろあの投資家たちは頭を抱えているんじゃないか。売上の数字を見たあとでは」(賛成票25)
- 「投資家が怖がったのはお色気寄りのファンサービス要素だろう。結果的にゲーマーのほうは怖がらなかったわけだが」(賛成票74)
- 「『NIKKEの資金で食いつないだのでは』と言おうとしたが、記事を読むと開発開始は2019年でNIKKEのアジア配信は2022年。当時どんな企画書だったのか気になる」(賛成票95)
もう一方のr/Gamesでも、それまでシフトアップが知られていたのはガチャ運営だけであり、買い切りアクションへの転換は当時かなりの飛躍に見えたはずだ、という指摘が支持を集めていました。スレッドはr/gaming「Stellar Blade was almost cancelled」(2026年9月22日)およびr/Games の同題スレッド(同日・賛成票150、コメント43件)です。
拾ったのはソニー、広げたのはニーア。日本のプラットフォームとIPが支えた610万本
日本の読者にとって、この話は他人事ではありません。出資を断られ続けた『ステラーブレイド』を最終的に引き受けたのは、日本企業であるソニー・インタラクティブエンタテインメントでした。発売当初はPS5独占タイトルとして展開され、日本でも2024年4月26日にグローバルと同日発売、日本語吹き替えも収録されています。
日本のIPとの接点も小さくありません。2024年11月には、スクウェア・エニックスの『NieR:Automata』とのコラボDLCが9.99ドルで配信され、2Bの衣装などが追加されました。韓国製のアクションゲームが、日本のハードで売られ、日本のゲームの意匠を借りて話題を広げたことになります。
その独占関係はすでに解けています。PC版は2025年6月11日に発売され、3日で100万本を記録。2026年11月5日から6日にかけてはNintendo Switch 2版「Complete Edition」の発売が予定されており、任天堂のハードにも展開されます。累計約610万本の内訳は、PS5版が約370万本、Steam版が約240万本です(いずれも2026年1月時点)。
断った投資家が見誤ったのは、韓国市場の常識のほうだった
投資家たちの判断は、当時の情報だけを見れば不合理ではありません。基本プレイ無料が主流の韓国市場で、実績のない会社が買い切りのコンソール向けアクションに数年を費やす。損益分岐点に届かないという読みには根拠がありました。見誤っていたのは個別の作品の出来ではなく、「韓国のスタジオがコンソール市場で戦えるか」という前提のほうでした。裏を返せば、当時その前提を疑えたのがソニーだけだったということでもあります。
シフトアップは現在、キム・ヒョンテ氏が39%、テンセントが35%を保有する上場企業です。続編『Stellar Blade: Blood Rain』は2026年6月のSummer Game Festで発表され、今度は同社の自社パブリッシングで進められる予定です。3カ月分の給料しか払えなかった会社が、自力で続編を出す側に回る。資金を出さなかった投資家が見送ったのは、一本のゲームではなく、その後の市場そのものだったのだと受け止めました。
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