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【ドイツ】ゲームズコムでインディー3社の機材が盗難。日本にも拠点を置くUkiyo Studiosは「毎年盗まれてきた」と証言

編集部
吉沢まことVelleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight
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【ドイツ】ゲームズコムでインディー3社の機材が盗難。日本にも拠点を置くUkiyo Studiosは「毎年盗まれてきた」と証言

3行サマリー

  • ドイツ・ケルンで開催中のゲーム見本市gamescom 2026で、8月28日までに少なくとも3社の出展社がブースからの機材盗難を公表した。
  • スペインのTessera Studiosはノートパソコン2台とSteam Deck 1台、アメリカのiam8bitは未発売2作の開発中ビルドが入ったノートパソコン2台を失っている。
  • 日本とオーストラリアに拠点を置くゲームマーケティング会社Ukiyo Studiosは、gamescomで毎年何かを盗まれてきたと証言した。

gamescom会期中、少なくとも3社のブースからノートパソコンが消えた

ドイツ・ケルンで8月26日から30日まで開かれているゲーム見本市gamescom 2026で、出展社が相次いで機材の盗難を公表しました。被害を明らかにしたのは、非対称型サバイバルホラー『Mimic』を出展していた個人開発者、パブリッシャーのiam8bit、そしてスペインのTessera Studiosの3社です。

『Mimic』の開発者は8月28日の朝にブースへ着いた時点でノートパソコンが消えていたと説明しています。盗まれたのは自分の1台だけではなく、同じ区画のほかの出展社の機材もまとめて持ち去られていました。充電器は残され、本体だけが抜かれていたそうです。

iam8bitは、ビジネスエリアの自社ステーションからノートパソコン2台が一晩でなくなったと公表しました。この2台にはメディアやクリエイター向けにデモしていた『Petal Runner』と『Escape Academy 2』の開発中ビルドが入っており、未完成のゲームが外部に流出する恐れがあると説明しています。Tessera Studiosは水曜日にインディーエリアのブースへ戻ったところ、収納キャビネットがこじ開けられ、ノートパソコン2台とSteam Deck 1台が消えていたと報告しました。デモだけでなく社内情報や個人情報も入っていた機材でした。

Video Games Chronicle報道:被害の3社は別々のホールに離れていた

出典‘It’s heartbreaking’: Numerous Gamescom devs say their equipment was stolen(Video Games Chronicle / 2026年8月29日)

出典Indie Dev Releases Tearful Message After Multiple Laptops Are Stolen At Gamescom(Kotaku / 2026年8月29日)

「昨夜、ブースが荒らされました。私のものだけではありません。ノートパソコンが全部盗まれています」

Video Games Chronicleによると、『Mimic』とiam8bitのブースはどちらもビジネスエリアのホール4.1、西口のすぐ近くに並んでいました。一方でTessera Studiosのブースはホール10.2のインディーエリアで、まったく別の建屋です。同社はスペインの出展枠でもさらに2件、会場全体ではもっと多くの被害を聞いていると投稿しています。1か所への侵入では説明がつかない広がり方でした。

日本にも拠点を置くUkiyo Studios「ドイツで見本市に出るコストだと思っていた」

今回いちばん重い証言をしたのは、被害当事者ではなく、その投稿に返信した会社でした。日本とオーストラリアに拠点を置くゲームマーケティング会社Ukiyo Studiosです。同社は日本のインディー作品を海外の見本市に連れていく側の立場で、BitSummitや東京ゲームショウ、台北ゲームショウ、PAXにも出展してきました。

Video Games Chronicleによると、Ukiyo Studiosは2年前にもgamescomのブースからパソコンを盗まれており、警察に被害届を出そうとしたところ、gamescom側の人物に「gamescomとケルン市の印象が悪くなる」として止められた、と投稿しています。さらに同社は、gamescomでは毎年何かを盗まれてきた、ドイツで見本市に出るためのコストだと割り切ってきた、とも書いています。この証言はVGCが同社の投稿を引用して報じたもので、gamescom側からこの件についての反論は出ていません。

読んでいて胸が重くなったのはこの部分でした。単発の不運ではなく、出展する側が何年も飲み込んできたものが今回いっせいに表に出てきた形です。

gamescomは8月29日に声明を出しました。盗難の報告は把握しており、被害を受けた出展社の落胆も理解している、としたうえで、会場全体の警備は制服の警備員が担当していること、個別ブースの警備は別料金で予約できること、機材には盗難保険をかけるよう出展規約と技術ガイドラインに記載していることを説明しています。すべての案件は警察に届けられ、捜査が始まっているとも述べました。同時に「報告されているのは個別の事案である」とも書いています。

この整理は制度としては正確です。ただ、個別ブースの警備は追加費用、保険も自己負担という枠組みは、大手には払える金額でも、1人か数人で来ているインディーには重くのしかかります。Video Games Chronicleは、昨年のgamescomで税関の大規模な立ち入り検査があり、警備員として働く多くの人が公的な身分証明書や警備員番号を提示できなかったと労働組合Verdiが指摘していた、というドイツの公共放送WDRの報道もあわせて伝えています。

Redditでは主催者の声明に「警備費は何に使われたのか」と反発が集まった

この件は海外のゲームコミュニティで大きく広がりました。Redditのr/gamingに立った報道スレッドは、日本時間8月30日時点で1万340ポイント、コメント831件に達しています。gamescomの声明を扱った別スレッドも400件近い議論になりました。以下は当日の観測にもとづく整理です。

もっとも支持を集めたのは、警備の実効性を問う一言でした。4000件を超える賛同がついたのは「その警備費はいったい何に使われていたのか」という趣旨の投稿です。次に伸びたのは被害者の属性に目を向けたもので、「いちばんつらいのは、盗まれたのが小さなチームやソロの開発者で、その機材が本当に必要な人たちだということ」という指摘に3700件以上の賛同が集まりました。

三番目に伸びたコメントは、警察への届出を止められたというUkiyo Studiosの証言を引用したうえで、盗難そのものより、今後開発者が出展をためらうようになることのほうが業界にとって損失が大きい、と書いています。gamescomの声明に対しては「要約すると『知ったことか』という回答」という受け止めが最上位に来ており、主催者が警備の不備を認めず出展社側の責任に寄せた、と読まれていました。

業界側からの投稿もありました。長年gamescomに通っているという参加者が、今年の警備は目に見えて緩く、警備員が近くのホテルの脇でタバコを吸ったり酒を飲んだりしていた、と書いています。こちらは匿名の投稿なので裏付けは取れていませんが、同種の受け止めがSNS上で複数見られる状況です。

一方で、コミュニティの動き方には救いもありました。別の開発者が新しい機材を提供し、CD Projekt Redも機材の提供を申し出ています。ファンの側はSteamのウィッシュリスト登録を呼びかけ、『Mimic』の開発者は残りの会期を最後まで乗り切りました。

日本のインディーが海外の見本市に出るとき、機材の保険は自分でかけるしかない

日本のメディアでは、8月29日にGame Sparkが『Mimic』開発者の被害を報じています。ただ、iam8bitとTessera Studiosの被害、gamescomの声明、そしてUkiyo Studiosの証言までは日本語ではほとんど伝わっていません。日本の読者にとって本当に効いてくるのは、最後のUkiyo Studiosの部分だと思います。

日本のインディー開発者が海外の見本市に自力で出るケースは、ここ数年で確実に増えました。BitSummitで海外パブリッシャーと話がついて、そのままgamescomや台北、PAXへ、という流れも珍しくありません。その導線を担ってきた会社の1つが、gamescomで毎年何かを盗まれ、被害届すら出しにくい空気があったと証言したわけです。

gamescomの規約どおりに読めば、個別ブースの警備は追加で買うもの、機材の盗難は自分で保険をかけるもの、ということになります。渡航費とブース代で予算が尽きる規模の開発者にとって、そこは真っ先に削られる項目です。開発機に入っているのは未発売のビルドと、社内資料と、個人情報でもあります。Tessera Studiosがわざわざそう書いたのは、金額よりそちらの被害のほうが重かったからでしょう。

海外の見本市に出るときは、機材の盗難保険と、開発機のデータ管理を渡航費と同じ列に並べておく。今回いちばん実務的な教訓はここに尽きます。そして主催者側には、規約の説明ではなく警備そのものの見直しを求める声が、いま海外のコミュニティから集まっています。

編集部
吉沢まこと
Velleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。