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【アメリカ】ホワイトハウスがナルトやポケモンを政策広報に使用。日本のファン2万4000人が署名、茂木外相は「不適切」

編集部
吉沢まことVelleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight
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【アメリカ】ホワイトハウスがナルトやポケモンを政策広報に使用。日本のファン2万4000人が署名、茂木外相は「不適切」

3行サマリー

  • トランプ大統領は6月9日、自分の顔を『NARUTO -ナルト-』風に合成したAI動画をSNSに投稿しました
  • ファンが立ち上げた署名「Protect Japanese Manga」には、約2万4000人が賛同しています
  • 毎日新聞によると、外務省は4月と6月に在日米国大使館へ懸念を申し入れました

ホワイトハウスの広報動画に、ナルト・ポケモン・遊戯王が次々と登場している

アメリカの政府機関の公式アカウントが、日本のアニメやゲームのキャラクターを政策広報の素材として使う例が続いています。2025年9月には国土安全保障省が、移民・関税執行局(ICE)の摘発映像に英語版『ポケットモンスター』の主題歌を重ねた動画を公開しました。2026年3月には、ホワイトハウスの公式Xがイランへの攻撃映像に『遊☆戯☆王』や『ドラゴンボール』の場面を差し込んだ動画を投稿しています。同じころ、ホワイトハウスは任天堂の『ポコピア』のフォントを模した画像で「Make America Great Again」と発信しました。

そして6月9日、トランプ大統領本人が、自分の顔を『NARUTO -ナルト-』のキャラクターに合成したAI動画をTruth Socialに投稿しました。ここで一気に空気が変わったと感じています。日本の作品が、作品とは無関係の文脈で使われていることが、誰の目にも分かる形になったからです。

毎日新聞:外務省は4月と6月、在日米国大使館に懸念を申し入れた

出典米政府のアニメ無断使用、日本政府が申し入れ(毎日新聞 / 2026年8月3日)

出典Japanese Officials Keep Lobbying Trump To Stop Posting Political Memes That Involve Franchises Like Mario, Pokemon, And Naruto(Kotaku / 2026年8月6日)

Unless bigger companies with Nintendo’s level of resources and clout muster up the legal gumption to do something about it, it seems like the meme-ing will unfortunately continue.
(任天堂ほどの資金力と影響力を持つ企業が法的に動かないかぎり、ミーム投稿は残念ながら続くのだろう)

毎日新聞は8月3日、外務省が在日米国大使館を通じてアメリカ側に懸念を伝えたと報じました。同紙によると、申し入れは4月と6月の複数回にわたり、「公的機関であっても、知的財産を使用する場合は制作者の許諾が必要になる」という趣旨だったとされています。著作権侵害の可能性と、作品のイメージが損なわれることへの配慮を求めた形です。なお、この申し入れの内容は毎日新聞の報道によるもので、外務省が公表した資料ではありません。

閣僚も公の場で同じ趣旨をすでに述べています。IGNとKotakuの報道によれば、茂木敏充外相は4月の国会答弁で、『Wii Sports』を使った動画に触れながら「公的機関であっても権利者の同意なく著作物を複製することは不適切だ」と述べました。小野田紀美大臣も6月の記者会見で、ナルトの動画について「著作権者からの許諾を得ることが大原則だ」と語っています。外交ルートと閣僚発言の両方で同じ線を引いているところに、政府側の温度が見えます。

署名2万4000人。発端は、亡くなった高橋和希さんの作品が戦争の映像に重なったこと

動いたのは政府だけではありません。アニメと漫画のファンである鈴木ナナさんが3月にChange.orgで立ち上げた署名「Protect Japanese Manga」には、約2万4000人が賛同しています。きっかけは、イランへの攻撃映像に『遊☆戯☆王』と『ドラゴンボール』が差し込まれた動画でした。

鈴木さんは、『遊☆戯☆王』の作者・高橋和希さんが2022年に離岸流に流された人を助けようとして亡くなったことに触れ、その人柄と作品が伝えてきたものが軍事の文脈で使われたのが悲しかった、と説明しています。署名の文面は、これらの作品が勇気や友情、諦めない気持ちを伝えてきたと述べたうえで、原作者の意図とは違う文脈で使われることへの懸念を訴える内容です。作品を守りたいという気持ちが、著作権という言葉より先に立っている文章でした。

権利者の側で名前を出して反応したのは、いまのところ株式会社ポケモンだけです。同社は国土安全保障省の動画について、自社は関与しておらず、許諾を求められてもいないという声明を出しました。任天堂と集英社からは、本稿の時点で公式の見解を確認できていません。

海外の議論は「なぜ権利者は訴えないのか」に集まっている

日本側の報じ方が「外交ルートでの申し入れ」を軸にしているのに対し、英語圏の反応はほぼ一点に集中していました。訴訟です。

Kotakuの記者アシュ・パリッシュさんは、記事の締めで「任天堂ほどの資金力と影響力を持つ企業が法的に動かないかぎり、ミーム投稿は続くのだろう」と書いています。ここで名前が挙がるのが権利者であって政府ではないところが、日本の記事との一番の違いでした。

技術者が集まる掲示板Hacker Newsでは、毎日新聞の記事が8月6日に投稿され、筆者が確認した時点で63ポイント・43コメントがついていました(2026年8月6日時点/JST 8月7日未明)。最初に伸びたのは「権利者が訴えて賠償を取ればいいのでは。それをしないのは、権利者が気にしていないからでは」という投稿です。これに対しては、政府を相手取る訴訟は費用も年数もかかるので「まず頼む」のが第一段階だという指摘や、日本企業は騒ぎを大きくするより外交で処理する道を選んだのだろうという読みが並びました。特定の投稿を事実の根拠にはできませんが、議論の重心が「日本政府の姿勢」ではなく「権利者の打ち手」に寄っていたのは確かです。

同じ構図はほかの作品でも起きています。TheGamerによれば、歌手のサブリナ・カーペンターさんや、『Halo』のマスターチーフ役の声優スティーブ・ダウンズさんも、自分たちの作品が政府の投稿に使われたことに声を上げてきました。日本のIPだけが標的になっているわけではない、という前提は押さえておきたいところです。

日本のIPが世界で通じるほど、止める手段は権利者の側に少なくなる

この件が示しているのは、日本のコンテンツが「説明しなくても伝わる記号」になったという事実です。ナルトの構図を使えば強さが伝わり、ポケモンの主題歌を流せば追跡と捕獲が伝わる。だからこそ広報の素材として選ばれています。皮肉な形の到達点だと感じます。

一方で、記号として強くなるほど、権利者が取れる手は減っていきます。相手が国家機関であれば、差止めも賠償請求も現実的な選択肢になりにくい。日本政府が外交ルートで繰り返し申し入れているのは、そこが空白だからでしょう。海外のファンが「なぜ訴えないのか」と言い、日本の官房が「許諾が大原則だ」と言い続けている状況は、当面変わらないと見ています。次に動きがあるとすれば、権利者自身が名前を出して声明を出したときです。

編集部
吉沢まこと
Velleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。