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【フランス】35年放置の遊園地跡にドラゴンボールパーク構想。サウジ資本が10億ユーロ超と報じられ、東映アニメの「世界唯一」が揺らぐ

編集部
吉沢まことVelleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight
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【フランス】35年放置の遊園地跡にドラゴンボールパーク構想。サウジ資本が10億ユーロ超と報じられ、東映アニメの「世界唯一」が揺らぐ

3行サマリー

  • パリ近郊クルディマンシュにある遊園地ミラポリスの跡地に、ドラゴンボールをテーマにしたパーク構想が浮上したと、フランスの2媒体が報じました。ミラポリスは1987年に開園し、わずか4シーズンで1991年に閉園しています。
  • 資金の出し手として名前が挙がっているのは、サウジアラビアの政府系ファンドPIFの傘下にあるキディヤ・インベストメント・カンパニーです。2025年5月19日のシューズ・フランス首脳会議で、観光と娯楽の大型案件を検討する覚書がすでに交わされていました。
  • キディヤは2024年3月に東映アニメーションと組み、リヤド近郊に約50万平方メートル、高さ70メートルの神龍を据えた「世界唯一」のドラゴンボールパークを建てると発表済みです。フランス版が実現すれば、その「唯一」という言葉の意味が変わります。

パリ近郊の30ヘクタールに、ドラゴンボールのパーク構想が浮上した

パリ中心部から北西へ30キロメートルほど、ヴァル=ドワーズ県クルディマンシュに、30年以上も放置されたままの土地があります。1991年に閉じた遊園地ミラポリスの跡地です。フランスでは有数の廃墟探索スポットとして知られてきたこの約30ヘクタールに、いまドラゴンボールのテーマパークを建てる案が持ち上がっている、と2026年7月末からフランスのメディアが相次いで報じています。

報道によれば、話を進めているのはサウジアラビアの政府系ファンドPIFの傘下にあるキディヤ・インベストメント・カンパニーで、エリゼ宮(フランス大統領府)が数か月前から協議を主導しているとされます。金額は確定していないものの、関係者の間では10億ユーロを超える規模になりうるという見方が出ているそうです。7月末にはイル=ド=フランス地域圏知事のジョルジュ=フランソワ・ルクレール氏が主宰する省庁横断の会議が開かれ、10ほどの大臣官房が顔をそろえたと伝えられています。

ただし、ここは正確に書いておきたいところです。開業日も、最終決定も、まだ何ひとつ発表されていません。キディヤもPIFも東映アニメーションも、この件について公式には何も述べていません。

Hospitality ON「現時点で公式に確認されたものは何もない」

出典Nouveau parc à thèmes en Île-de-France: le pari à un milliard d’euros du fonds souverain saoudien(Hospitality ON / 2026-07-31)

出典Mirapolis: a Dragon Ball theme park coming to Val-d’Oise?(Sortiraparis / 2026-08-03更新)

Le projet à l’étude serait un parc inspiré de l’univers Dragon Ball. Rien n’est confirmé officiellement à ce stade.

フランスのホスピタリティ業界紙 Hospitality ON は、この情報がもともと Politico によって明らかにされたもので、外交・政府・産業のそれぞれの関係者への取材に基づくと書いています。一方 Sortiraparis は、地元紙のル・パリジャンが7月31日に報じた内容を引いています。出どころの異なる2つの流れが、同じ時期に同じ案件へたどり着いた形です。

1987年にサウジ資本で開園し4シーズンで潰れた土地に、またサウジ資本が戻ってくる

この場所の来歴を知ると、話の見え方が少し変わります。ミラポリスは1987年、当時首相だったジャック・シラク氏の手で開園しました。出資したのはサウジアラビアの富豪ガイス・ファラオン氏です。フランス版ディズニーランドを目指したものの、来場者が伸びずに1991年、たった4シーズンで幕を下ろしました。

つまり、サウジの資金で生まれてサウジの資金とともに消えた土地に、35年を経てふたたびサウジの資金が戻ってこようとしている、という構図になります。個人的には、この巡り合わせの妙に一番心が動きました。

下地はすでにありました。2025年5月19日、フランス政府が海外投資を呼び込むために開くシューズ・フランス首脳会議の場で、「フランスにおける観光と娯楽の大型プロジェクトを検討する」という覚書が交わされています。これはエリゼ宮のプレス資料に記載された確定情報です。同じ日にPIFはパリに、欧州大陸で初となる拠点を開いています。

立地も、選ばれる理由が説明できます。跡地はRER A線の西の終点セルジー=ル=オーから1キロメートルも離れておらず、フランス有数の集客力を持つパルク・アステリックスまで30キロメートルほど。パルク・アステリックスは2025年に295万人という過去最高の来場者数を記録しており、この一帯にレジャー需要があること自体は数字で裏づけられています。

東映アニメがリヤドに約束した「世界唯一」と、フランス2600万部の市場がぶつかる

日本にとって見過ごせないのは、この案が実現した場合に生じる矛盾のほうです。

キディヤは2024年3月、東映アニメーションと組んでリヤド近郊に「世界唯一のドラゴンボールテーマパーク」を建てると発表しました。約50万平方メートルの敷地に、高さ70メートルの神龍がそびえるという規模です。「世界唯一」という言葉は、東映アニメーションにとって最大級のIP輸出案件を特別なものに見せる、いわば約束の部分でした。フランスにもう一つできるとすれば、その約束は形を変えることになります。

それでもフランスが候補に挙がるのには理由があります。フランスは日本を除けば世界最大のマンガ市場で、ドラゴンボールだけで約2600万部が売れてきたと Hospitality ON は報じています。ドラゴンボールにとってフランスは、単に人気がある国ではなく、世代をまたいで作品が根づいた土地です。リヤドのパークが観光開発の目玉として設計されているのに対し、フランスのそれは読者の厚みの上に建つことになります。同じIPでも、寄りかかっている土台が違います。

日本のファンからすれば、ドラゴンボールの大型施設が日本になく、サウジアラビアとフランスで検討されているという事実そのものが、一番引っかかる点かもしれません。ただ、これは日本が軽んじられているという話ではありません。国が主導して娯楽施設に巨額を投じる仕組みが日本にはなく、サウジアラビアにはある。その差が、置き場所の差になって表れているだけです。

決まっているのは覚書1本。跡地には約400人が暮らしている

期待だけで終わらせないために、障害も書いておきます。Hospitality ON によれば、跡地には2017年から約400人が生活しており、2024年には別の再開発案が環境当局から影響評価の不足を指摘されています。同じヴァル=ドワーズ県では、2019年に国が大型商業施設計画のユーロパシティを断念した前例もあります。土地が空いていないという現実は、資金の多寡では解けません。

いま確定しているのは、2025年5月に交わされた覚書1本だけです。ドラゴンボールという固有名詞も、10億ユーロという規模も、現時点ではすべて報道の段階にとどまります。それでも、日本の作品が海を渡った先でどれほどの重さを持つに至ったかを測る材料としては、十分に興味深い話だと受け止めました。続報が出たときに、また丁寧に追いかけたいと思います。

編集部
吉沢まこと
Velleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。