📊 3行サマリー
- 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』が5月15日に全米894館で公開。初週末は推定約81万ドル(約1.2億円)で全体13位だった。
- 日本では1月30日公開で累計約27億円・観客159万人。2021年の前作22.3億円を上回った。
- 主題歌に米R&BシンガーSZA、エンドロールにガンズ・アンド・ローゼズ『Sweet Child O’ Mine』を起用したが、現地の批評は作画を絶賛しつつ展開の遅さに酷評と、評価が割れた。
📊 ガンダム続編、全米894館で初週1.2億円。日本の27億円とは別の数字になった
サンライズ/バンダイナムコフィルムワークスの劇場アニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』が、2026年5月15日に北米で劇場公開された。Anime News Networkなどの集計によると、初週末の興行収入は推定約81万ドル(約1.2億円)で、全米ランキングは13位。上映規模は894館だった。曜日別では金曜が約42.8万ドル、土曜約23.0万ドル、日曜約15.2万ドルという内訳になる。
日本での数字とは桁が違う。同作は今年1月30日に国内365館で封切られ、初週末は1位。3日間で51万1500人を集め、約8億4900万円を売り上げた。その後も上映は長く続き、累計は約27億円・観客159万人に達している。2021年に公開された前作『閃光のハサウェイ』の最終22.3億円を超え、ガンダム劇場映画でも上位に食い込んだ。本国で1位、海外で13位。同じ作品で、これだけ受け取られ方が分かれた。
📰 Anime News Network:全米13位発進、バンダイナムコが初めて北米を自社配給
元ネタ:2nd Gundam Hathaway Film Earns Estimated US$810,000 in U.S. Opening Weekend(Anime News Network / 2026年5月18日)
The second Gundam Hathaway film earned an estimated US$810,000 across 894 theaters, finishing 13th in its U.S. opening weekend.
配給の体制も今回の見どころだ。キルケーの魔女は、これまで北米のアニメ映画配給を担ってきたGKIDSではなく、製作元のバンダイナムコフィルムワークスが直接北米配給に乗り出した初のガンダム映画になる。参考までに、GKIDSが手がけた2025年2月公開の『機動戦士GQuuuuuuX -Beginning-』は784館で約88.2万ドルの初週だった。館数を増やしても初週の数字はほぼ横ばい。これが今回の現実だ。
🔥 SZAとガンズで西側を狙った続編、ぶつかったのはマリオとモータルコンバット2
製作側は、海外のファン層を広げる仕掛けを用意していた。オープニングに米R&BスターSZAの楽曲、エンドロールにガンズ・アンド・ローゼズの名曲『Sweet Child O’ Mine』を据えるという、アニメ映画としては異例の選曲だ。日本のロボットアニメに、グラミー常連と1980年代ロックの代表曲を重ねる。狙いははっきりしている。コアなガンダムファンの外側にいる音楽リスナーを、劇場に呼び込むことだ。
ただ公開週の相手が悪かった。同じ週末の北米市場には『プラダを着た悪魔2』『モータルコンバット2』『Michael』といった大型作品が並び、894館という限定的な規模のキルケーの魔女は埋もれやすい位置にいた。村瀬修功監督による硬派な政治劇は、もともと幅広い層に向けた作品ではない。話題の主題歌と作品の中身のあいだには、距離があった。
💬 米批評家の評価は真っ二つ——作画は絶賛、会話劇の長さには酷評
現地レビューの反応は、はっきり割れた。まず作画は広く支持された。手描き2Dのキャラクターと3DCG背景を融合させた映像は、複数のレビューで「冒頭から完成度が高い」「メカ戦の見せ方が鋭い」と評価され、IMDbのユーザースコアは7.8。2021年の前作6.6を上回っている。
一方で、展開の遅さには不満が集まった。GIANT FREAKIN ROBOTやPlugged Inといった媒体は「映像は美しいが、ほとんど何も起きない」「会話が延々と続いて退屈で長い」と書いている。上映時間の大半は人物の対話に割かれ、モビルスーツ戦は終盤の十数分に集中する。暗転した画面に声だけが数分流れる場面もあって、ここで集中が切れた観客もいたようだ。
もうひとつ、新規ファンには敷居が高い。本作は三部作の中編にあたり、前作を観ていないと人物関係も政治背景もつかみづらい。「ハサウェイ未見だときつい」という注意書きは、好意的なレビューにも繰り返し添えられていた。シリーズの予習を前提にした作りが、初週の伸び悩みに響いたとみていい。
🏁 日本のIPは海外の劇場で何を売れるのか——ハサウェイが残した宿題
この一件は、日本のアニメIPが海外の劇場で戦うときの線引きを、わかりやすく示している。『鬼滅の刃』のように世界興行を塗り替える作品がある一方で、国内で27億円を稼ぐ人気作でも、海外の一般客にそのまま届くとは限らない。ガンダムという名前の強さと、中編で会話中心という作品性のあいだのギャップが、初週13位という結果に表れた。
SZAとガンズ・アンド・ローゼズの起用は、その溝を音楽で埋めようとした試みだった。効果が数字に直結したとは言いにくい。それでも、製作元が配給まで自社で握り、海外向けに具体的な手を打ち始めた点は、日本のアニメビジネスにとって次につながる動きだと思う。キルケーの魔女が突きつけたのは「海外で何が売れるか」ではなく「海外の劇場に、何を、どう届けるか」という宿題だ。三部作の最終章で、この答えが書き換わるのか。そこを見ておきたい。


