【フランス】任天堂『リズム天国』10年ぶり新作にAdoの新曲。現地メディアは絶賛、ユーザー評価は10点満点で7.4と割れた

3行サマリー
- 任天堂の音楽ゲーム『リズム天国』シリーズ10年ぶりの新作が、2026年7月2日にフランスでも39.99ユーロで発売された。収録ミニゲームは80以上でシリーズ最多。
- 日本では発売3週間で累計519,451本を売り、ファミ通の週間ランキングで首位を守った。フランスのレビューサイトSensCritiqueのユーザー平均点は10点満点の7.4にとどまる。
- ゲーム発売翌日には、つんく♂が書き下ろしAdoが歌う新曲「Love me forever!」が配信された。フランスのAdoファンコミュニティはこの1曲に強く反応している。
任天堂『リズム天国』10年ぶり新作、日本で52万本。フランスは絶賛と落胆に割れた
任天堂の音楽ゲーム『リズム天国』シリーズの完全新作『Rhythm Paradise Groove』(日本名『リズム天国 ミラクルスターズ』) が、2026年7月2日に日本とフランスで同時に発売された。フランスでの価格は39.99ユーロ。シリーズの完全新作としては2016年のニンテンドー3DS版以来、10年ぶりになる。
日本での立ち上がりは強い。7月6日から12日の週で126,073本を売り、累計519,451本。発売3週間で半年分の勢いを使い切ったような数字で、ファミ通の週間ソフトランキングでも首位を守った。フランスでは様子が違う。専門メディアは最上級の評価を付け、プレイヤーは10点満点で7.4点を付けた。同じソフトを触って、この開きが出た。
Nintendo Town、「革命的ではないが、ただ面白い」とシリーズ最多80ミニゲームを評価
元ネタ:Rhythm Paradise Groove (Nintendo Switch) – Le test(Nintendo Town / 2026年7月1日)
Rien de révolutionnaire certes mais simplement drôle, amusant, entrainant, accessible et efficace en solo comme en multijoueur.
フランスの任天堂専門メディアNintendo Townは発売前日にレビューを出し、総合評価を最上位の「Excellent」とした。褒めているのは、80を超えるミニゲームというシリーズ最大のボリューム、ソロ専用の新モード「Beatspell」、そしてWarioWareチームらしい不条理な笑いの3点だ。同誌は本作を「9年走り続けた初代Nintendo Switchの幕を引く一本」と位置づけている。
欠点も同じ調子で並んでいる。技術的な見どころはないこと、リズム感のない人には苦行になりかねないこと、ノーミスを狙う「パーフェクト」チャレンジの出現が完全にランダムで自分から挑めないこと。褒め方も貶し方も具体的で、フランスの読者はこの手のレビューを信用する。
つんく♂が半年かけて書き、Adoが歌った「Love me forever!」がフランスのファンを動かした
ゲーム本体より強い反応が出たのは、発売翌日に配信された1曲のほうだった。シリーズを通して音楽を手掛けてきたつんく♂が書き下ろし、Adoが歌う新曲「Love me forever!」である。編曲は平田祥一郎。ゲーム内では通常のミニゲームではなく、曲そのものを聴かせる独立したステージとして収録されている。
きっかけはAdoが2021年にYouTubeへ投稿した「MM学園合唱部」楽曲のカバーだった。つんく♂の説明によれば、Adoが出演を承諾したあと、彼女の声に見合う曲を書くのに半年近く苦しみ、Adoのライブに足を運んだことで作曲の方向性が根本から変わったという。つんく♂は2014年に喉頭がんで声帯を失っており、自分の声を使わずに曲を書き続けている作家だ。その人がAdoのために書いた1曲、という背景がある。
フランスのAdoファンアカウントは発売当日に「AdoがRhythm Paradise Grooveに登場、楽曲は『Love me forever』」と投稿した。Adoは日本のアーティストとしてはフランスでの知名度が高く、当ブログでもこれまで海外公演の話題を扱ってきた。任天堂のゲームソフトの発売が、そのままAdoの新曲の話題として現地に届いた形になる。
SensCritiqueのフランス人ユーザーは7.4点、「音楽が前ほど中毒にならない」
フランス最大級のレビューコミュニティSensCritiqueでの評価は7.4点(10点満点、35人)。メディアの「Excellent」と比べると明らかに温度が低い。書き込まれた3本のレビューを読むと、不満の中身がはっきりしている。
7月8日に投稿した長年のファンBiqueeetteは「過去作の大ファンだが、正直がっかりしている」と書き、理由を2つ挙げた。ひとつは楽曲が以前より中毒性がなく、着想が乏しく感じられること。もうひとつは、逆説的だがミニゲームが以前ほどリズムに依存していないように思えること。過去作では曲のテンポそのものが攻略の鍵だった、という指摘だ。
7月6日のTasty Croustyは「任天堂はリズムゲームの鍋を火にかけ直した。たしかにグルーヴはある。ただし、以前ほどの愛嬌はない」と書いた。見出しでは本作を「盛りだくさんの食べ放題、ただし味付けを犠牲にしたのでは」と表現している。分量は増えたが密度が薄まった、という評価だ。7月10日のVirgile_Krは「もっとくれ」と題した好意的なレビューで、シリーズ全作を遊んできた立場から新作の登場そのものを歓迎している。
3本のうち2本が、量は最多なのに記憶に残る曲が減ったと言っている。フランスの古参プレイヤーは、このシリーズをミニゲーム集ではなく音楽作品として記憶してきた。80という数字は、彼らにとって加点にならなかった。
日本は本数で語り、フランスは曲で語る。同じソフトの評価軸がずれている
日本での報じられ方は販売本数が中心だ。週間126,073本、累計519,451本、ランキング首位。市場規模とシリーズ復活の成功度が数字で語られる。フランスの現地報道と口コミが向いているのは、価格39.99ユーロという手頃さ、ミニゲームの本数、そして「昔の曲のほうが良かった」という音楽への評価だ。同じソフトなのに、測っている物差しが違う。
任天堂は本作の欧州展開で、Nintendo Musicでの楽曲先行配信、MicromaniaやFnacといった現地小売とのキャンペーンなど、音楽側からの導線をはっきり用意した。Adoの新曲を発売翌日にぶつけたのも同じ発想だろう。ゲームを売るために曲を売る、という設計だ。フランスの反応を見る限り、その設計は正しい方向を向いていた。刺さらなかったのは新曲の力ではなく、旧作の楽曲を覚えている古参の記憶と競争させてしまったことのほうだ。10年空けたシリーズは、新規客の期待より先に、待っていた人の記憶と戦うことになる。
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