【アメリカ】手塚治虫『リボンの騎士』のNetflix映画、米批評4本のうち3本が低評価。日本ではラランドのサーヤ主演に賛否
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3行サマリー
- 手塚治虫『リボンの騎士』を原案とするNetflix映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』が8月8日、世界独占配信を開始しました。上映時間は1時間49分です。
- 英語圏の批評は辛口に傾いています。Metacriticに載った2本は、ロジャー・イーバート・ドットコムが100点満点で50点、ガーディアンが40点でした(8月10日時点)。
- 日本で話題の中心になったのは作品評ではなくキャストです。主演はお笑いコンビ・ラランドのサーヤさん、にじさんじの3人が長編アニメの声優に初挑戦しました。
手塚治虫『リボンの騎士』の新作アニメ映画が8月8日、Netflixで世界配信された
手塚治虫さんの『リボンの騎士』を原案にした長編アニメーション映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』が、2026年8月8日にNetflixで世界独占配信されました。制作はスタジオOUTLINEとTwin Engine、監督は『呪術廻戦』第1期のエンディング映像や『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の一編を手がけた五十嵐祐貴さんで、本作が初の長編監督作です。上映時間は1時間49分、レーティングはPGです。
物語は原作をなぞりません。災厄「ネルガル」に故郷シルバーランドを滅ぼされた王女サファイアが、逃げ延びた先のゴールドランドで仲間と出会い、リボンの力で変身して戦います。1953年から連載された原作の骨組みだけを借りて、別の話に作り直した形です。配信前の経緯は【フランス】手塚治虫『リボンの騎士』のアニメ映画、8月8日にNetflixで世界同時配信にまとめています。
ロジャー・イーバートは50点、ガーディアンは40点。批評サイトの採点は100点満点で半分前後
出典:The Ribbon Hero review: Netflix anime is gorgeous but gossamer-thin(RogerEbert.com / 2026年8月7日)
出典:‘The Ribbon Hero’ Is an Infectiously Hopeful Magical Girl Take on a Classic(Gizmodo / 2026年8月8日)
it just feels like a pale, frustrating imitator of the magical-girl stories it would go on to inspire.(この作品が後に生んだ魔法少女ものの、青ざめた、もどかしい模倣にしか感じられない)
そう書いたのは、ロジャー・イーバート・ドットコムのクリント・ワージントンさんです。Metacriticの換算で50点でした。ガーディアンのフィル・ホードさんは40点をつけ、非常にゆるいリメイクで拍子抜けする、と評しています。編集部で8月10日にRotten Tomatoesを確認した時点では、掲載されていた批評は4本。うち3本が否定寄りで、肯定寄りは英Loud and Clear Reviewsの5点満点3点だけでした。批評が5本に届いていないため、Tomatometerもメタスコアもまだ表示されていません。
【追記 2026/08/17】8月17日にRotten Tomatoesを見直したところ、掲載された批評は6本に増えていました。加わったのはio9のアイザイア・コルバートさんと、But Why Tho?のイライジャ・ゴンザレスさん(10点満点で7点)で、どちらも肯定寄りです。これで否定寄り3本、肯定寄り3本と、評価はきれいに割れました。ただ、5本を超えてもTomatometerの数字はまだ出ていません。Metacriticのほうは掲載2本のままで、同サイトは4本でメタスコアを出すと明記していますから、こちらも表示までにあと2本必要です。
批評家が突いたのは、原作の「男装の王女」という核が薄まった点
厳しい評の理由は、演出の粗さよりも改変の方向に集まっています。ガーディアンのホードさんは、性別を入れ替えた原作が多くの人に先駆的だと受け止められてきたのに対し、本作は主人公サファイアの女性らしい側面だけに寄せていると指摘しました。ロジャー・イーバートのワージントンさんも、原作を唯一無二にしていた要素をあえて避けていると書いています。Polygonのサマンサ・ネルソンさんは、原作は論争的であると同時に画期的だったとしたうえで、本作はほぼすべての面で失敗していると切り捨てました。
1953年の少女漫画が、女性の主人公が剣を取る話としてどれだけ早かったか。その一点で評価されてきた作品ですから、そこを平らにならすと、褒めどころが「よく動く戦闘アニメ」に寄っていきます。批評家がそろって物足りなさを口にしたのは、そういう構図でした。改変そのものが責められているというより、改変して何を差し出したのかが見えない、という不満だと受け止めました。
アメリカの一般視聴者の評価は批評家より甘く、称賛の書き込みも並ぶ
一方で、観た人の反応は別の温度です。Gizmodoのアイザイア・コルバートさんは、終盤が脱線気味だと断ったうえで、手塚作品を教条的になぞるのではなく作り直す道は歩む価値があった、と肯定的にまとめています。音楽を担当した神前暁さんと高田龍一さんのスコアも高く評価しました。同記事は、手塚作品にここまで踏み込んだ例として浦沢直樹さんの『PLUTO』を引き合いに出しています。Netflixが手塚作品を大きく作り替えるのは、これが初めてではありません。
Rotten Tomatoesの一般ユーザー欄では、8月10日時点で「2026年のアニメ映画で最高の1本」「魔法少女ものを塗り替えうる」といった書き込みが並ぶ一方、テンポが速すぎて話がつながらないという不満も同居していました。Xの英語の投稿も同じ傾向で、配信直後には短い称賛が目立ちます。ただ、個々の匿名投稿は作品の質を測る根拠にはなりません。ここでは、批評家の採点より一般の評価のほうが明るい、という傾向として受け取るのが妥当だと思います。
日本で論点になったのは作品ではなく、ラランドのサーヤさんとにじさんじ3人の起用
日本側の反応は、別のところで動きました。主人公サファイア役は、お笑いコンビ・ラランドのサーヤさんです。KAI-YOUの報道によると、にじさんじの月ノ美兎さんがヘケート、ルンルンさんがチック、でびでび・でびるさんがタックを演じ、3人とも長編アニメーションの声優は初めてでした。ほかに細谷佳正さん、小林星蘭さん、内山昂輝さん、新谷真弓さん、手塚祐介さんが名を連ねています。
この配役をめぐって、日刊ゲンダイDIGITALは、サーヤさんのせりふが棒読みに聞こえるとしてアニメファンから賛否が出ていると報じました。同記事は、長く読み継がれてきた手塚作品が宣伝の材料として扱われることへの懸念もあった、としています。この点について制作側や本人からの公式なコメントは出ていません。
作品そのものを論じた英語圏と、誰が声を当てるかを論じた日本語圏。同じ8月8日に同じ映画が配信されて、話題の入口がここまで分かれるのは珍しいことだと思います。
手塚作品のリメイクは、海外では作品として、日本では「誰が声を当てるか」で採点された
『リボンの騎士』は、海外では手塚治虫という固有名詞で読まれます。だから批評は原作の何を受け継いだかを問い、受け継ぎ方が足りないと判定しました。日本では原作を知っている人がずっと多いぶん、話題は制作体制のほうへ向かいます。どちらも作品への期待の裏返しですが、出てくる論点はまるで違いました。
数字が出た時点で評価が固まるのか、それとも一般評との差が残るのか。手塚作品の海外リメイクがどう受け止められるかを測る材料として、続報を追う価値があります。
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