【アメリカ】ソニーの『Marvel’s Wolverine』、AI生成疑惑を開発元が否定。発売4日で2度の火消し

3行サマリー
- Insomniac Gamesは2026年9月18日、『Marvel’s Wolverine』のゲーム内看板が生成AIで作られたとする指摘を「UVマップのバグ」だと否定した。
- 翌9月19日にはホットフィックスv1.001.005を配信し、批判が集中していた嗅覚表現「Scent Trails」の不透明度を下げた。
- 本作は9月15日発売のPlayStation 5独占タイトルで、販売はソニー・インタラクティブエンタテインメント。Metacriticは批評121件で77点。
Insomniac、ウルヴァリンのAI生成疑惑を「UVマップのバグ」と否定
発売から4日目の2026年9月18日、『Marvel’s Wolverine』のゲーム内に置かれたトイレの案内看板が、SNS上で思わぬ扱いを受けました。文字が崩れている、これは生成AIが作ったものではないか。そうした指摘とともに画像が拡散したのです。これに対してInsomniac Gamesでコミュニティ・マーケティング責任者を務めるJames Stevenson氏が、自身のXで即座に否定しました。
原因として挙げられたUVマップは、3Dモデルの表面にテクスチャ画像を貼り付けるための座標データです。ここがずれると、文字や模様が引き伸ばされて崩れて見えます。言われてみれば、手描きの看板が歪むのと生成AIが文字を書き損じるのとでは、崩れ方の質が違う。ただ今のプレイヤーは、崩れた文字を見た瞬間にまずAIを疑う位置にいます。その反射の速さのほうが、この件の本題だと受け止めました。
そして翌19日、発売直後から不満が集まっていた嗅覚表現の修正を含むホットフィックスv1.001.005が配信されます。発売4日のあいだに、開発元が2度も公の場で説明を出したことになります。いずれも公式Xの投稿と公式パッチノートで確認できる事実です。
Insomniac公式パッチノートとKotaku、9月18日と19日に出た2つの説明
出典:Update v.01.001.005(Insomniac Games / 2026年9月19日)
出典:Insomniac Confirms Wolverine Doesn’t Contain AI-Generated Assets After A Weird-Looking Sign Goes Viral(Kotaku / 2026年9月18日)
出典:New Marvel’s Wolverine update makes the game’s infamous scent trails “less intense”(GamesRadar+ / 2026年9月19日)
Stevenson氏がXに書いた返答は、たった2文でした。
This is a UV map bug and we have a fix coming. There are no AI generated assets in Marvel’s Wolverine.
(訳:これはUVマップのバグで、修正を用意しています。『Marvel’s Wolverine』に生成AIで作られたアセットは一切ありません。)
一方、公式パッチノートは嗅覚表現の扱いについてこう書いています。
The team continues to evaluate ways to further improve Senses in the game, including exploring toggleable options for a future update.
(訳:チームは、今後のアップデートでの切り替えオプションの検討を含め、ゲーム内の感覚表現をさらに改善する方法を引き続き検討しています。)
短い2文と、含みを持たせた1文。返し方の違いが、それぞれの問題の性質をよく表しています。
画面を覆う青い「においの軌跡」に不満が集中、Redditでは1,983コメント
本作の目玉である嗅覚追跡は、ウルヴァリンが追う対象のにおいを青い軌跡として画面に描くしくみです。ところが発売直後から「常時表示で画面が青く染まり、せっかくの景観が潰れる」という声が海外プレイヤーのあいだに広がりました。
r/gamingに立ったホットフィックスの報告スレッドは、9月20日時点で13,512の支持と1,983件のコメントを集めています。r/Gamesのパッチノート共有スレッドにいたっては、支持580に対してコメント519件。支持数とほぼ同数の書き込みが集まるのは通常の比率ではありません。賛否が割れて議論が伸びた形です。海外プレイヤーのあいだでは、この青い軌跡を「fart trails(おならの軌跡)」と呼ぶ揶揄も定着しました。
Reddit最多8,075票の声は「なぜボタン1つで消せないのか」
以下はRedditの上位コメントの意訳です。個々の匿名投稿は事実の根拠ではなく、議論がどこに集まったかを示すものとして紹介します(票数は各コメントの支持数、2026年9月20日時点)。
- 8,075票:なぜボタンひとつで切り替えられないのか。前に出たウルヴァリンのゲームはとっくに解決していた。検討中というトグルが、アクセシビリティ設定の項目ではなくボタン操作であってほしい。
- 7,324票:簡単にオフにできないほどゲームの内部に組み込まれている、という事実がとにかくおかしい。
- 973票:スパイダーマンの探知表示のように、押しているあいだの数秒だけ見えればいい。ウルヴァリンが息を吸い込んでにおいに集中している、と考えればいいだけではないか。
- 165票(r/Games):嗅覚と聴覚が鋭いヒーローのゲームを作り、その力を画面に出すと決め、しかもその力が邪魔になるレベルデザインにした。制作の会議で何があったのか知りたい。
おもしろいのは、AI疑惑のほうは上位に自省的な書き込みが並んだことです。疑いを広げた側のコミュニティが、同じ場所で自分たちにブレーキをかけていました。
- 446票:そもそも生成AIが出すタイプの破綻に見えない。動画を見れば2つのドアで見え方が違うと分かる。未完成のデカールにしか見えない。
- 327票:この手のものを即座に、しかも自信満々にAIのせいにする人は、AI画像を使う人と同じくらい怠慢だ。
身元が確認できる発信としては、Insomniac Gamesの公式職にあるStevenson氏本人がXで直接否定しており、KotakuとGamesRadar+がそれぞれ記事にしています。疑いを広げたのも、火を消したのも、同じプラットフォーム上の短い投稿でした。
ソニーが売る大作でのAI疑惑は、日本メーカーの「使っていない」表明を前倒しにする
『Marvel’s Wolverine』の販売元はソニー・インタラクティブエンタテインメントで、本作はPlayStation 5独占タイトルです。つまり今回の火消しは、日本企業が世界に出している看板の上で起きました。
ここで目を引くのは、疑惑が立ってから否定までの速さです。テクスチャの不具合というきわめて技術的な話を、開発元の担当者が名前を出して当日のうちに説明しました。裏を返せば、生成AIの利用が疑われた時点で、企業側には「使っていない」ことを証明する説明責任が事実上発生しています。黙っていれば、疑いのほうが既成事実になってしまう。
日本のメーカーも同じ場所に立っています。レベルファイブは2026年9月、発表会で使った映像に生成AIを用いたことを謝罪しました(レベルファイブが発表会の生成AI映像を謝罪した件はこちら)。このときも、海外の掲示板が先に疑いを可視化しています。制作物のどこに何を使ったかを自分から出しておかないと、ユーザーの目のほうが先に回る。今はその順序になっています。
発売4日で2度の即応。Metacritic77の大作が残した設計の宿題
『Marvel’s Wolverine』は9月15日発売、批評家評価はMetacriticで121件の批評をもとに77点、OpenCriticでもトップ批評家平均79点・推奨率68%と、水準は満たしています。売上についてはアナリスト企業Alinea Analyticsが発売3日で約190万本・約1億3000万ドルと推計していますが、これはソニーの公式発表ではなく第三者による推計値です。
数字そのものは悪くありません。それでも発売4日で2度の説明を強いられたのは、嗅覚という題材を画面にどう出すかという設計の判断が、プレイヤーの許容と噛み合わなかったからでしょう。Redditの上位コメントが一様に指摘したのは「消せないこと」であって、嗅覚表現があること自体ではありませんでした。作り手が一番の売りだと考えた機能ほど、抜け道を用意しにくい。その難しさが出た一件だと感じます。
Insomniacは切り替えオプションについて「検討している」と書いたにとどまり、実装は約束していません。この一行が実際のアップデートとして出てきたときが、本作が次に評価される場面になります。
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