【韓国】親日論争の女優ハヨン、主演ドラマは日本ドラマのリメイクだった。放送は独立運動記念日の直前、2027年2月

3行サマリー
- 女優ハヨンさんが8月12日、自身のSNSに自筆の謝罪文を出し、曽祖父の親日行跡を「無知なまま家族の自慢のように話してきた」と認めました
- 李在明大統領は8月15日の光復節祝辞で親日財産の調査・還収を明言し、親日財産帰属法は12月3日に施行されます
- ハヨンさんの主演ドラマは2018年のテレビ朝日系『リーガルV』のリメイクで、放送開始は2027年2月26日、独立運動記念日の3日前です
Series女優ハヨン 親日論争全3本
韓国の女優ハヨンの曽祖父をめぐる親日行跡の論争が、出演作・広告・放送予定にどう波及したかを追う連載です。
- 2026/8/12【韓国】女優ハヨン「4代続く医師の家系」発言が親日派論争に。曽祖父は韓国人で初めて日本の医師免許を取得していた
- 2026/8/17【韓国】親日論争の女優ハヨン、主演ドラマは日本ドラマのリメイクだった。放送は独立運動記念日の直前、2027年2月(この記事)
- 2026/9/1【韓国】親日論争のハヨン、Netflix『トラウマコード』続編を降板。日本のNetflixは8月29日に特集動画を出していた
ハヨンが8月12日に自筆で謝罪。主演ドラマは日本ドラマのリメイクだった
韓国の女優ハヨンさん(33)をめぐる曽祖父の親日行跡の論争は、本人の謝罪という段階に入りました。8月7日のKBS2「屋根部屋の問題児たち」で「4代続く医師の家系」と語ったことが発端で、所属事務所は8月10日に「事実無根」と否定し、翌11日にそれを撤回して謝罪。そして12日、ハヨンさん本人が自身のSNSに自筆の謝罪文を掲載しました。「恥ずかしいことに、そうした無知な状態で、いろいろな場で曽祖父の話を家族の自慢のように持ち出してきました」と書いています。
ここに、日本の読者だけが引っかかる事実がもう一つ重なりました。彼女がいま撮影中の主演作が、日本ドラマのリメイクなのです。前回の記事で触れた「事務所の謝罪」から4日で、話は本人の言葉と、作品そのものの出自にまで広がりました。
マイデイリー単独:撮影は9割まで進み、SBSは主演交代に踏み切れない
出典:[単独]「親日論争」ハヨン、涙を流して撮影中断…「揺れたメンタル」(マイデイリー / 2026-08-16)
出典:独立運動家の子孫イ・インチョル、ハヨン家に一言…「上海の臨時政府に行ってみろ」ついに涙(スポーツ京郷 / 2026-08-15)
関係者によると、ハヨンは13日、撮影の途中で涙を流して感情を制御できず、ついに撮影が中断された。
マイデイリーは8月16日、SBSドラマ「勝算あります」の撮影現場の様子を単独で報じました。同紙によると、8月13日の撮影中にハヨンさんが感情を抑えられずに涙を流し、撮影が一時中断。数時間の休憩を挟んでどうにか撮り終えたといいます。論争が表面化した翌日の8月11日は彼女の誕生日で、現場で予定されていたケーキのお祝いも取りやめになったと伝えています。ここは1媒体の単独取材です。裏づけがもう1本出るまでは、そのつもりで読むのがよいと思います。
一方でSBSの立場は動いていません。「かなりの部分の撮影が進んだ状態だ。当該事案については認知しており、現在、事案の推移を詳しく見守っている」という公式コメントのままです。マイデイリーによれば撮影は9割ほど終わり、早ければ3週間以内にクランクアップする見込みで、数十億ウォンの制作費を抱えたまま主演を差し替えるのは現実的に難しいとされます。
原作は米倉涼子主演『リーガルV』。放送開始は2027年2月26日で、独立運動記念日の3日前
「勝算あります」は、2018年にテレビ朝日系で放送された『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』のリメイクです。原作では米倉涼子さんが演じた元弁護士の主人公が、韓国版では男性に変更され、イ・ジェフンさんが事務長クォン・ベクを演じます。ハヨンさんの役どころは新人弁護士ヨ・シムヒです。放送枠はSBSの金土ドラマで、開始は2027年2月26日の予定。
この編成が、いま重い意味を持ってしまいました。韓国で3月1日は三・一独立運動を記念する祝日で、放送開始はその3日前にあたります。日本の作品を原作にしたドラマが、独立運動記念日をまたいで放送される。しかもその主演が「親日派の子孫」というラベルを貼られている。制作陣は8月12日の時点で「撮影を進めながら状況を注視する」と説明していましたが、日付そのものは動かせません。
民族問題研究所は「親日人名辞典には未収録」。それでも大統領は光復節に財産還収を明言した
曽祖父の安相浩(アン・サンホ、1872〜1927)については、8月14日に民族問題研究所が公式見解を出しています。同研究所は「安相浩の親日行跡自体は明白だ」としつつ、自らが編纂した『親日人名辞典』には収録されていないことも認めました。そのうえで、問題の本質は「先祖の植民地協力の経歴について最小限の歴史的省察もないまま発言し、大衆を傷つけた歴史認識と省察の不在にある」と指摘しています。子孫に責任を負わせることには慎重な姿勢を示しながら、語り方には厳しい。この線引きが、韓国側の議論のかなり正確な現在地だと受け止めました。
そこへ8月15日、李在明大統領が光復節81周年の祝辞で「親日反民族行為者が不当に蓄積した財産を調査・還収し、歴史的責任を確実に問う」と述べました。親日財産帰属法は5月7日に国会を通過し、6月2日に公布され、12月3日に施行されます。マイデイリーによると、この発言を受けてハヨンさんの家系の財産還収の可能性にも関心が集まっており、法律の専門家は、還収の可否は安相浩が同法の「親日反民族行為者」の法的基準に最終的に合致するかどうかにかかっていると見ているそうです。まだ何も決まっていない段階の話です。
現場の温度も紹介しておきます。8月13日放送のMBN「ザ・パンチ」に出演した弁護士のイ・インチョルさんは、独立運動家・宋基周(ソン・ギジュ)の外曽孫という立場から「独立運動をされた方々は血の涙を流した。子孫も同じだ」と語り、「ハヨンを個人的に非難するつもりはない。本人が親日行為をしたわけではないから」と線を引いたうえで、上海の大韓民国臨時政府の旧跡を訪ねてほしいと呼びかけ、最後は涙をこぼしました。ネット上ではもっと直截で、マイデイリーは「親日をすれば3代栄え、独立運動をすれば3代滅びる現実はなくなるべきだ」といった書き込みが目立つと伝えています。個々の匿名の声を事実の根拠にはできませんが、空気の方向はうかがえます。
【追記 2026/08/19】光復節の祝辞で触れられた親日財産帰属法の改正について、YTNが8月16日にその中身を報じました。核心は、第2期の親日財産調査委員会が12月に再発足することです。2010年に第1期が活動を終えてから16年ぶりの再稼働で、改正ではすでに売却・現金化された財産まで追跡して還収できるよう法的な根拠が強められました。ただし基準は厳しく、政府が公式に認定した親日反民族行為者は1,000人余りいる一方、第1期で財産の還収が決まったのは160人ほどです。民間の『親日人名辞典』の4,300人余りと比べても一部にとどまり、安相浩はその辞典にも載っていません。第2期の判断次第で対象に含まれる可能性は残る、というのがYTNの結論です。翌17日にはMBCラジオ「キム・ジョンペの視線集中」でイ・ジュンシク前独立記念館長が、安相浩は反民族行為真相糾明委員会の決定にも含まれていない人物だと述べ、第2期が重大な親日反民族行為と認定するかどうかは現時点でははっきりしない、と話しています。出典:ハヨンの曽祖父、財産還収は可能か…12月に調査委が発足(YTN / 2026-08-16)、“親日論争”俳優ハヨンの曽祖父、「親日財産調査委員会」復活→財産返還に該当するか?(WOW!Korea / 2026-08-18)
【追記 2026/08/24】放送局のSBSが8月20日、ソウル経済新聞の取材に「出演俳優に関する最近の事案を厳重に受け止めている」「現在、制作会社や関係者とともに多角的に慎重な議論を進めている」と答えました。降板や配役の変更は発表されておらず、決まった事項があれば公式ルートで案内するとしています。同紙は撮影がほぼ終わっている段階だと伝えたうえで、いま交代を決めれば撮り直しの分だけ制作日程と費用の負担が重くなる、という業界の見方を添えていました。放送を止めるか、このまま出すか。判断はまだ先送りされています。出典:SBS「『勝算あります』ハヨン『曽祖父の親日』厳重に受け止めている」(ソウル経済 / 2026-08-20)
【追記 2026/08/26】『勝算あります』の制作側が8月26日、「現在も従来の立場と同様、内部で協議を続けている状況だ」と答えました。「多数のスタッフと出演者への被害を最小限に抑えなければならない現実的な事情を考慮し、必要な残りの日程などを多角的に調整している」とも述べ、個々の撮影日程の確認には応じていません。これに先立って韓国メディアは、ハヨンさんの降板がないまま9月3日に撮影を終える予定だと報じました。通常のドラマが最終撮影日に合わせて行う打ち上げについては、日程がまだ決まっていないということです。出典:よりによって米倉涼子主演の日本ドラマを原作とする作品に出演 “親日”騒動の韓国女優、降板せず撮影終了か(スポーツソウル日本版 / 2026-08-26)
日本語の「親日」と韓国語の「親日派」は別の言葉。日本の読者が見落としやすい線引き
日本語の「親日」は日本が好き、という程度の意味ですが、韓国語の「親日派(チニルパ)」は植民地期に日本の統治へ協力した人物を指す歴史用語で、いまも強い非難を含みます。この違いは前回も書きました。今回あらためて考えたいのは、その先です。
日本ドラマのリメイクという事実は、日本の読者には「よくあること」にしか見えません。実際、韓国では日本の漫画・小説・ドラマを原作にした作品が途切れずに作られてきました。それでも今回それが「よりによって」と書かれるのは、主演の家族史と作品の出自と放送日が、同じ一点に集まってしまったからです。個々の要素はどれも問題視されてこなかったのに、重なった瞬間に別の意味を持つ。ここが、日本から見ていると一番読み違えやすいところだと思います。
そしてもう一つ。批判の矛先は、曽祖父の記録そのものよりも、それを知らないまま誇らしげに語った態度に向いています。民族問題研究所の言い方も、イ・インチョルさんの言い方も、そこは一致していました。日本のファンが韓国のドラマや音楽を追いかけるとき、この区別を持っているかどうかで、次に似た出来事が起きたときの見え方はかなり変わります。
問われているのは曽祖父の記録ではなく、家族史をどう語るかに移った
ハヨンさんは8月12日の謝罪文で、今回の件をきっかけに自分で資料を探し、曽祖父の親日的な行跡を知ったと書いています。初動は検証のない「事実無根」で、これは信頼を削る動き方でした。それでも記録を認め、本人名義で謝罪するところまでは来ています。
残っているのは、撮影が9割終わった主演作の行方と、12月3日に施行される法律の適用範囲です。SBSは制作会社と議論中だと述べるにとどまり、放送予定の2027年2月26日は動いていません。日本ドラマのリメイクという出自も、いまさら変えられません。次に何が起きるかは、彼女の側が積み重ねる行動と、法律の運用が決めます。少なくとも「知らなかった」という説明は、もう一度は使えないはずです。
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