【中国】ビリビリ・ワールドに40万人集結。日本アニメが築いた熱狂の裏で、日本作品の配信は半減していた

3行サマリー
- アジア最大のアニメ・ゲーム展「ビリビリ・ワールド2026」が上海で開かれ、30カ国以上から約40万人が来場。来場者の18%が外国パスポート保持者だった。
- 会場の主役は原神・ブルーアーカイブ・黒神話といった中国産タイトル。コスプレイヤーは6万人超、痛車は約1000台に達した。
- その一方で、この熱狂の源流だった日本アニメの配信本数は1シーズン平均13本へと半減。2025年11月の高市首相の台湾発言以降、日中関係の冷え込みが影を落としている。
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ビリビリ・ワールド2026、上海に40万人。来場者の18%が外国パスポート保持者だった
中国の動画・ゲーム企業ビリビリが7月10日から12日にかけて上海で開いた「ビリビリ・ワールド2026」に、30カ国以上から約40万人が詰めかけた。運営によれば来場者のおよそ18%が外国パスポートを持つ人で、海外にチケットを売り出したのは今年が初めてだという。日本のコミックマーケットにあたる中国最大のACG(アニメ・コミック・ゲーム)の祭典が、いよいよ国境をまたいだ集まりになってきた。
会場は上海の国家会展中心の8ホールを占め、広さは24万平方メートル。過去最多の170社が700を超えるブースを出した。痛車のオーナーが約1000人、コスプレイヤーは6万人を超えた。街の経済効果も大きく、開催週の上海行きの海外便予約は前年より35%増え、ホテルの予約は前週比126%増、会場から5キロ以内に限れば600%も跳ね上がったとビリビリは説明している。
第一財経の報道:170社700ブースで、上海の夏の消費を動かす中心になった
元ネタ:Bilibili World, Asia’s Largest Anime and Gaming Expo, Draws Tens of Thousands of Overseas Fans to Shanghai(Yicai Global / 2026年7月13日)
Bilibili World 2026 attracted around 400,000 fans from more than 30 countries and regions worldwide to Shanghai, with around 18 percent of all attendees holding foreign passports.
中国の経済メディア・第一財経(Yicai)は、この規模を「上海の夏の消費を動かす中核エンジン」と位置づけた。会場ではマーベル・スタジオのケビン・ファイギ社長が11日に登壇し、新作『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』を宣伝している。ファイギの訪中は7年ぶり、中国のアニメイベントへの登場は初めてだった。ハリウッドの最高幹部がわざわざ足を運ぶほど、この場の宣伝価値は高いと見られている。
会場の顔ぶれは原神・ブルーアーカイブ・黒神話。日本アニメが育てた祭が、中国産IPの見本市になった
ただ、今年の目玉として名前が挙がったのは、原神、ブルーアーカイブ、黒神話といったタイトルだった。miHoYoの原神、Yostarが手がけるブルーアーカイブ、Game Scienceの黒神話・悟空。いずれも中国の会社が作った、あるいは中国で強く支持されているゲームである。かつて中国の若者を二次元文化へ引き込んだのは日本のアニメやマンガだったが、その祭の主役はいま国産IPに入れ替わりつつある。
面白いのは、会場を埋めるコスプレや痛車という文化そのものが、もともと日本のオタク文化から輸入されたものだという点だ。中国のファンは日本発の遊び方を受け継ぎながら、その中身を自国のキャラクターで満たしている。土台は日本、上に乗るコンテンツは中国。この逆転が、いまの中国二次元市場のいちばん分かりやすい風景になっている。
現地の熱量は政治と切り離されている。6万人のコスプレと1000台の痛車が語るもの
ゲーム会社Yostarのブース担当者は第一財経に対し、「今年いちばん目立った変化は外国人来場者の急増だった」と話し、会場ではさまざまな言語が飛び交って国際的な空気が生まれていたと語っている。ゲーム業界アナリストの張書楽(Zhang Shule)は、ACGファンにとって毎夏の上海行きは「文化の巡礼」であり、上海はアニメ・ゲーム産業の世界的な文化拠点へと育ちつつあると評した。
現地のファンの熱は、日中の外交関係が冷えているかどうかとはほとんど無関係に見える。18%という外国人比率、6万人のコスプレイヤー、1000台の痛車、そして周辺ホテルの600%増という数字は、政治の温度とは別の場所でこの熱狂が回っていることを示している。ファンは相変わらず日本発のキャラクターや作品を求めているし、日本のオタク文化の作法を楽しんでいる。問題は、その受け皿になるはずの日本作品が、公式にはなかなか届かなくなっていることだ。
日本作品の配信は1季あたり13本へ半減。高市首相の台湾発言後、2026年冬にさらに縮んだ
中国本土で正式に配信される日本の新作アニメは、2023年から2026年にかけて1シーズン平均13本ほどにとどまっている。2020年から2023年の平均26本と比べると、ちょうど半分の水準だ。2025年夏こそ『SAKAMOTO DAYS』『ダンダダン』などで21本と過去3年で最多になったが、その後は再び細っていった。日経アジアの報道によれば、2026年冬の落ち込みは、2025年11月の高市早苗首相による台湾関連の発言をきっかけにした日中関係の悪化と重なっている。
今年のビリビリ・ワールドに日本人アーティストの出演が組まれなかったことも、同じ空気の表れだと日経アジアは伝えている。それでも中国のファンはソニーなど日本企業のコンテンツを渇望し続けている、というのが現地取材の見立てだ。政治が窓口を狭め、ファンの需要はそのまま残る。この二つのズレが、いまの日本アニメと中国市場の関係を一言で表している。
世界最大のファン市場で、日本アニメは「源流」から「数ある選択肢の一つ」に変わりつつある
つまりこういうことだ。中国の二次元文化は日本アニメが種をまいて育ったのに、その一番大きな収穫期に、日本作品は公式ルートで半分しか届いていない。空いた場所を埋めたのが原神やブルーアーカイブといった国産IPで、40万人の熱狂はいまそちらへ向かっている。日本のアニメ業界にとって中国は最大級のファン市場であり続けているが、その市場での立ち位置は「文化の源流」から「数ある選択肢の一つ」へと静かに滑り落ちている。
政治が動かせないファンの熱は確かにそこにある。それをどう正式なビジネスにつなぎ直すかは、配信の窓口が細るほど難しくなる。日本にとっての宿題は、外交が凍っている間にも中国のファンとの回路をどう保つか、という一点に尽きる。
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