📊 3行サマリー

  • 格闘ゲームの世界大会EVOが6月26〜28日にラスベガスで開幕。登録者は5,774人で、前年の8,541人から32%減り、30年の歴史で最大の落ち込みになった。
  • サウジの政府系メガプロジェクトQiddiyaが2026年2月にEVOを100%取得。今回はその所有下で初めて開かれる大会で、ファンの一部がボイコットを呼びかけている。
  • 出場ゲームの主役はストリートファイター6・鉄拳8・餓狼伝説など日本の格闘ゲーム。餓狼を出すSNKは2022年からサウジ資本が96%を握っている。

📝 格闘ゲームの祭典EVO、サウジ買収後の初開催で参加者が過去最大の32%減

世界最大の格闘ゲーム大会「EVO(Evolution Championship Series)」が、6月26日からラスベガス・コンベンションセンターで始まる。今年の登録者は12タイトル合計で5,774人。前年の8,541人から32%減り、約30年の歴史で最も大きい前年割れになった。

落ち込みの背景には、開催時期の変更や旅費の高騰だけでなく、もう一つ大きな事情がある。サウジアラビアの政府系メガプロジェクト「Qiddiya(キディヤ)」が2026年2月にEVOを100%買い取り、今年はその完全所有下で開かれる初めての大会になったことだ。コミュニティの中では「草の根の祭典が国家資本に飲み込まれていいのか」という議論が起きている。

📰 Tech Times報道:登録5,774人、ストリートファイター6は4年連続トップでも前年比43%減

元ネタStreet Fighter 6 Leads EVO 2026 Despite 43% Drop in Competitors as Saudi Ownership Divides FGC(Tech Times / 2026年6月16日)

The registration decline has fueled a debate within the Fighting Game Community about whether EVO’s community identity can survive corporate transformation at this scale.(登録者の減少は、EVOのコミュニティとしての個性がこれほどの規模の企業化を生き延びられるのか、という議論に火をつけた)

出場タイトルの最上位は、4年連続で首位のストリートファイター6(カプコン)。登録2,414人、賞金は10万ドルだ。ただしラスベガス会場に限ると、前年の4,228人から43%も減っている。2位は鉄拳8(バンダイナムコ)の1,354人、3位はライアットの新作2XKOが1,080人で初出場を決めた。日本勢では餓狼伝説 City of the Wolves(SNK)、ギルティギア ストライヴ(アークシステムワークス)、バーチャファイター5 R.E.V.O.(セガ)なども名を連ねる。

🔥 著名解説者Sajamがボイコット宣言、Redditには「EVOは死んだ」の声

現地の格闘ゲームコミュニティ(FGC)の反応は割れている。影響力のある解説者・アナリストのSajamは、EVOを含むサウジ系イベントをボイコットする意向を公に表明した。買収を報じたReddit投稿には「Evo is dead(EVOは死んだ)」と短く書き込むユーザーが相次ぎ、「近所のゲームショップの大会や、コミュニティ主導のCombo BreakerやCEOを応援する」という声も目立った。

もっとも、EVOのゼネラルマネージャー、リック・タイハー氏は減少の主因として別の要因も挙げる。「6月という時期が毎年の旅行計画に合わず、2026年の旅費高騰も重なって、いつものように集まるのが難しくなった」。例年8月だった日程が6月26〜28日に前倒しされ、登録期間が圧縮されたうえ、夏のトーナメントシーズンの旅費予算とぶつかった格好だ。買収を受け継いだRTSのスチュアート・ソウCEOも「コミュニティにとって大切なものへの投資を続ける」と火消しのコメントを出している。減少のどこまでがボイコットによるものかは、正確には測れない。

🇯🇵 東京のEVO Japanはギネス記録、ラスベガスは43%減という対照

面白いのは、同じストリートファイター6でも日本と米国で数字が真逆になっている点だ。5月1〜3日に東京で開かれたEVO Japan 2026では、ストリートファイター6部門に7,168人が集まり、単一タイトルの格闘ゲーム大会として史上最大とギネス世界記録に認定された。一方でラスベガスは同じタイトルが43%減。これは競技人気が落ちたのではなく、開催地と運営をめぐる構造の変化が数字に出たと見るほうが筋が通る。

日本にとってEVOは他人事ではない。出場ゲームの中核はカプコン・バンダイナムコ・SNK・セガ・アークシステムワークスといった日本メーカーの作品で、EVOは日本生まれの格闘ゲーム文化を世界に見せる最大の舞台だった。その餓狼伝説やKING OF FIGHTERSを出すSNKは、2022年にムハンマド・ビン・サルマン財団が96%を取得し、すでにサウジ資本の傘下にある。日本の看板IPが集まる祭典の所有権が国家資本に移ることは、日本のプレイヤーやメーカーにとっても無関係ではいられない。

🏁 日本の格ゲー文化を世界に広げた「巡礼」が、国家資本の所有で岐路に

EVOは1996年の「Battle by the Bay」以来、実績や招待に関係なく誰でも参加でき、無名の選手でもトップ8に勝ち上がれるオープンブラケット方式を守ってきた。これが招待制のeスポーツ大会と一線を画し、世界中のファンにとって「巡礼」と呼ばれる理由でもあった。その方式自体は今年も変わらない。だが、運営も収益も国家資本を通る大会で、草の根の個性をどこまで保てるのか。5,774人が集まるラスベガスが、その問いへの最初の答えを出す場になる。