📊 3行サマリー
- 韓国の大衆音楽市場は2025年に9,817億ウォン規模まで成長し、その54%が1万席以上の大型公演で発生したが、本場ソウルに5万席のドーム公演場が1つもない
- 李在明大統領が5月末の国務会議で「5万席前後の国家象徴公演場が必要」と発言、文化体育観光部は2031年着工・2034年完工を目標に5万席アリーナの建設計画を提示
- K-POPの大型公演は東京ドーム・日産スタジアム・ロンドンWembleyに依存しており、TWICE日産14万・SEVENTEEN日本ドーム43万・Stray Kids東京ドーム31万など売上の相当部分が日本の公演インフラに流れ込む構造
📝 韓国に5万席ドームが1つもなく、K-POPの本場が海外公演に頼る逆転構造
韓国の大衆音楽公演売上は前年比29%増の9,817億ウォン(約1,100億円)を記録し、史上最大規模に膨らんだ。だがその売上の54%を生んでいる「1万席以上の大型公演」を受け入れる会場が、本国にほとんど存在しない。ソウルワールドカップ競技場はサッカー日程と芝の問題で押さえにくく、ジャムシル五輪主競技場は改修工事中、コチョクスカイドームはプロ野球が優先。結果として韓国のアーティストはサッカー場と1万5千席体育館を転々としている。一方で同じK-POPアーティストが、東京ドーム・日産スタジアム・ロンドンWembleyでは5〜7万席を埋めている。
📰 国民日報「集なきK-POP」——2025年大衆音楽売上の54%は1万席以上の大型会場で発生
元ネタ:매출은 사상 최대라는데…집 없는 K팝, 지갑 닫는 뮤지컬(국민일보 / 2026-05-31)
K팝은 해외에서 5만~7만석 규모의 공연장을 가득 채우지만, 정작 종주국인 한국에는 이를 수용할 5만석급 공연돔이 없다.
記事は予術経営支援センターKOPISの「2025年公演市場チケット販売現況分析」を引いている。2025年の大衆音楽公演は4,677件・7,749回、チケット販売は764万枚・9,817億ウォン。前年比で公演件数17%増・販売額29%増という急成長だが、1万席以上の公演に絞ると357万枚・5,300億ウォン(チケット販売の46.8%、金額の54%)。市場規模は中型ホールから完全にスタジアム級に移動している。
🔥 1万席以上の公演は4年で10倍、ジャムシル改修中・コチョクは野球優先・ワールドカップ場は芝問題
1万席以上の公演は2021年14件(44回)から2025年157件(359回)と10倍超に増えた。同期間でチケット販売額は194億ウォンから5,301億ウォンへ約27倍。にもかかわらず、ソウルで使える大型会場は「他用途のスキマを縫う」しかない。ジャムシル五輪主競技場は2027年まで改修中、ワールドカップ競技場はサッカー日程と芝へのダメージで大型公演に消極的、コチョクスカイドームはキウムヒーローズのホームで野球が優先。残った高陽総合運動場やインスパイア・アリーナ(仁川)は1万8千〜2万席規模で、5万人を一度に動員できる屋根付き会場は本場ソウルに存在しない。
🏛️ 李在明大統領「国家象徴公演場が必要」——文体部は2034年完工目標、4都市が5万席ドーム誘致で4파전
李在明大統領は5月末の国務会議で「現在推進中の2万〜3万席公演場は規模が小さい。5万席前後の国家象徴公演場が必要だ」と発言した。これを受けて崔煇英文化体育観光部長官は、6月の地方選挙後に新しい地方政府と協議して立地を決めると表明。文体部はすでに首都圏に5万席規模の公演型アリーナを2031年着工・2034年完工する計画を持っている。並行して忠北オソン・忠南天安・釜山・ソウルの4都市が5万〜7万席ドーム誘致で競合する「ドーム4파전(4파戦)」の構図になっている。ただし業界からは「2〜3万席アリーナと5万席ドームは役割が違う。後者はワールドツアー最終日や記念日に全国のファンが集まる『天井』であり、地方アリーナでは代替できない」(日本のアミューズ関係者談)との指摘が出ている。
🇯🇵 韓国アーティストの大型売上が日本のドームに吸い込まれる「コリアパッシング」の逆構造
本国に5万席ドームがないため、K-POPの大型公演売上は実質的に日本に流れ込んでいる。aespa東京ドーム9万4千人、G-DRAGON東京ドーム8万人、Stray Kids東京ドーム・京セラドーム6公演で31万5千人、SEVENTEENは日産スタジアム2公演14万4千人・日本ドームツアー9公演で43万5千人、TWICEは日産スタジアム2公演14万人、ENHYPEN日本4都市40万人。これらの収益とグッズ売上の相当部分が日本の公演インフラと地域経済を回している。BTSはWembley 2日間12万人、SoFi Stadium 4公演で21万4千枚(約3,330万ドル)。本国に「天井」がないかぎり、K-POPの最大級チケット収益はこれからも東京・大阪・福岡・ロンドンに吸い込まれ続ける。韓国政府が言う「コリアパッシング」(グローバルポップスターがアジアツアーで韓国を飛ばす現象)はインバウンドの話だが、その鏡像として「アウトバウンドK-POP収益の海外流出」も同じ構造で進んでいる。
🏁 文体部の2034年完工が間に合うか——8年後の韓国に「K-POPの家」ができるかが争点
2031年着工・2034年完工というスケジュールは、いまブレイクしている第4世代・第5世代アイドルの活動ピークが終わる時期と重なる。8年後にハコができても、その時に5万席を埋めるのはたぶん別の世代だ。韓国エンターテインメント資本が国内に還流するかどうかは、ハコの完成スピードと、地方選挙後の立地決定が政治的に空転しないかにかかっている。今回の李在明大統領発言が「もう一度の公約」で終わるか、実際の起工式までつながるかは、夏以降の文体部の予算編成と地方政府の手の挙げ方を見るしかない。

