📊 3行サマリー

  • 世界初の「ドラゴンボール」テーマパークが、サウジアラビアの巨大都市開発「キディヤ」内で建設中。広さは50万平方メートル超で、東京ディズニーランドにほぼ匹敵する。
  • 7つのエリアに30以上のアトラクションを置き、中央には高さ70メートルの神龍(シェンロン)。共同開発は『ドラゴンボール』のアニメを手がける東映アニメーション。
  • サウジ国民の約8割が日本アニメの視聴経験を持つ一方、建設地に日本が選ばれなかったことをめぐり、元・週刊少年ジャンプ編集長の発言が日本国内で論争を呼んだ。

📝 世界初の「ドラゴンボール」テーマパーク、リヤド近郊で建設が進む

サウジアラビアの首都リヤドから車で40分ほどの場所に、「キディヤ(Qiddiya)」という新しい都市が作られている。エンターテインメントとスポーツを丸ごと詰め込んだ巨大開発プロジェクトで、その一角に『ドラゴンボール』を題材にしたテーマパークが計画されている。世界で初めて、そして現時点では唯一の、ドラゴンボール専門テーマパークになる。

事業を進めているのはサウジ政府系のキディヤ投資公社。計画が公表されたのは2024年3月で、その後2026年に入ってからは建設予定地(キディヤ市内のディストリクト10「アニメワールド」)の造成と基盤工事が完了したと発表されている。一部エリアは2027年ごろ、全面開業は2029〜2030年ごろという見方が報じられているが、公式な開業日はまだ出ていない。「いつ行けるのか」は、ファンにとって今いちばん気になる宙づりの部分だ。

📰 計画を発表したのはキディヤ投資公社、アニメ制作は東映アニメーションが組む

元ネタ世界初となる『ドラゴンボール』テーマパーク建設へ!(ドラゴンボール オフィシャルサイト / 2024年3月22日)。続報としてキディヤ投資公社が2026年に建設状況を公表している。

サウジアラビアのQiddiya Investment Companyが進めるギガプロジェクト「Qiddiya」にて、世界初となる『ドラゴンボール』のテーマパークの建設が決定しました。

パークの開発はキディヤ投資公社と、日本の東映アニメーションが手を組む形で進む。東映アニメーションは1986年放送開始のテレビアニメ『ドラゴンボール』以来、シリーズの映像化を一貫して担ってきた会社だ。原作の著作権表記は「©BIRD STUDIO/SHUEISHA, TOEI ANIMATION」で、鳥山明氏の原作・集英社・東映アニメーションという日本の権利者がそろって関わっている。サウジの国家プロジェクトに、日本の作品と日本の制作会社が深く食い込んでいる構図だ。

🔥 広さ50万平米・神龍は高さ70メートル、規模はディズニーランド級

パークの広さは50万平方メートルを超える。東京ディズニーランド(約51万平方メートル)とほぼ同じ大きさだと考えると、規模感がつかみやすい。敷地は7つのエリアに分かれ、それぞれ「カメハウス」「カプセルコーポレーション」「ナメック星」「ビルスの星」など、作品でおなじみの場所を再現する。アトラクションは目玉となるライド5基を含めて30以上。中央のランドマークは高さ70メートルの神龍(シェンロン)で、その内部を大型ジェットコースターが通り抜ける設計になっている。

アラビア語メディアの紹介によれば、AR(拡張現実)を使った体験も用意される。来場者が画面の前で動きをまねていくと、まるで悟空と一緒に修行しているような感覚になる、という趣向だ。子ども向けに振り切るのではなく、悟空の幼少期から『ドラゴンボール超』の戦いまでを順にたどれるようにして、原作世代の大人も狙っている。

では、なぜ日本ではなくサウジなのか。背景にあるのは「ビジョン2030」だ。サウジは石油に依存しない経済への転換をめざし、観光や娯楽の分野へ巨額の資金を投じている。キディヤ自体がその象徴的なプロジェクトで、そこに集客力の強い日本のIPを呼び込みたい思惑がある。サウジでは日本アニメの人気が高く、複数の報道によれば国民の約8割が日本アニメの視聴経験を持ち、そのうち約4割が『ドラゴンボール』を見たことがあるという。王族にもファンがいると伝えられる。資金と熱量の両方がそろっていた、ということになる。

🇸🇦 サウジ各紙は「世界初」を前面に歓迎、現地のアニメ熱が後押し

サウジ国内での受け止めは、おおむね前向きだ。アル・リヤド紙、アシャルク・アルアウサト紙、オカズ紙、国営サウジ通信(SPA)といった主要メディアがそろって「世界初・唯一のドラゴンボール・テーマパーク」という見出しで報じ、自国の娯楽産業の前進として扱っている。批判的なトーンよりも、観光資源の誕生を歓迎する論調が目立つ。

その土台には、サウジでアニメ文化がすでに根づいている事実がある。日本アニメを題材にしたイベントや展示が各地で開かれ、サウジの企業が日本式のアニメ・マンガ制作に乗り出す動きも続いてきた。ドラゴンボール・テーマパークは、そうした流れの「総仕上げ」のような位置づけで現地に受け止められている。

一方で、世界のファンの反応はひと色ではない。一つの作品だけで50万平方メートルの巨大パークが成立するのか、採算面を疑問視する声も海外コミュニティでは出ている。歓迎と慎重論が並んでいるのが、現時点の正直なところだ。

🇯🇵 日本では「日本の子が行けない」と論争、元ジャンプ編集長が問題提起

日本側の報道で目を引いたのは、規模やアトラクションの話よりも「建設地が日本ではない」ことへの違和感だった。火種になったのが、元・週刊少年ジャンプ編集長の鳥嶋和彦氏の発言である。鳥嶋氏は鳥山明氏の担当編集として『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』を世に送り出した人物で、作品の出発点を間近で見てきた立場にある。

2025年夏に出たインタビュー記事は「ドラゴンボールのテーマパークは作るべきじゃない」という強い見出しで広まった。記事で語られた趣旨は、ジャンプは日本の子どもたちが支えて育ててきた文化であり、その子どもたちが簡単には行けない場所にパークを作ることへの疑問、というものだった。

ただし、その後の経緯も押さえておきたい。鳥嶋氏はX(旧Twitter)で声明を出し、記事の見出しや内容が実際のインタビューの状況や事実とかけ離れた形で広まったことに遺憾の意を示した。「サウジに作るから反対しているのではない」とも明言し、日本の子どもたちに何かを返す仕組みがあるなら検討の余地はある、という考えを補足している。つまり論争の中身は「サウジ反対」ではなく、「日本のファンへの還元をどう設計するか」という問いだったわけだ。見出しだけが一人歩きしやすい話題だけに、ここは切り分けて読む必要がある。

🏁 開業日は未定でも、世界初がサウジで動き出した意味

整理すると、こういうことだ。日本生まれの『ドラゴンボール』の世界初テーマパークは、日本ではなくサウジアラビアで、ディズニーランド級の規模で実際に土地の造成まで進んでいる。日本の作品力・サウジの資金力・現地の高いアニメ人気という3つがかみ合った結果であり、開業日が未定でも計画自体は前に動いている。

ここで日本にとって考えどころなのは、人気IPを持っていることと、それを大規模な体験へと事業化することは別の能力だ、という点だ。鳥嶋氏が投げかけた「日本のファンへの還元」という問いは、海外で日本IPが評価されるほど重みを増していく。世界初のドラゴンボール・パークがサウジで形になりつつある今、その問いを日本側がどう引き取るのか。開業を待つあいだに、いちばん見ておきたいのはそこだと思う。