📊 3行サマリー

  • Tencent Musicが発表した2026年Q1売上はRMB79億元(約1,650億円、前年比7.3%増)、純利益はRMB22.7億元
  • 音楽関連サービス収入は12.2%増の65.1億元、なかでもコンサート・グッズ・広告など非会員収入はRMB19.4億元で28%急増
  • 2025年秋以降、日本人アーティストの中国公演は中止続出。中国音楽IP市場の構造的成長から、日本のレコード会社が締め出される構図が定着しつつある

📝 Tencent Music、Q1 2026音楽事業12.2%成長と非会員サービス28%急増

中国の音楽配信最大手Tencent Music Entertainment Group(騰訊音楽娯楽集団、NYSE:TME)が2026年5月12日に発表した第1四半期決算は、総売上RMB79億元(約11.5億ドル、前年同期比7.3%増)、Non-IFRS純利益RMB22.7億元(約3.3億ドル、7.0%増)だった。

目を引くのは、音楽関連サービスのなかでサブスクリプション以外の収入が急伸している点だ。コンサート・デジタルアルバム・グッズ販売・広告収入を含む「非会員音楽サービス」は前年比28.0%増のRMB19.4億元。会員料金が6.6%増のRMB45.7億元で頭打ちぎみなのに対し、オフライン周辺収益は4倍以上のペースで伸びている。

📰 TechNode:オフライン公演・広告・グッズが成長エンジンに

元ネタTencent Music reports Q1 2026 revenue up 7.3% as non-membership music services rise 28%(TechNode / 2026年5月12日)

Music-related services revenue increased 12.2% to RMB6.51 billion ($944 million). Within that, … non-membership music services revenue jumped 28.0% to RMB1.94 billion, helped by offline performances and advertising.

同社はIPの収益化柱として「デジタルアルバム、コンサート、グッズ、オフラインイベント」を挙げた。WeChat動画チャンネル経由の流入転換、SVIP・ファン会員プロダクトの拡張、AIによる楽曲推薦・楽曲生成・旧譜カタログのプロモーションも成長の柱に並ぶ。

🔥 メンバーシップ頭打ちを「IP収益化+オフライン経済」が補う形に

会員収入は前年同期比6.6%増にとどまり、SpotifyやApple Musicと同じく中国市場でもサブスクリプション飽和の兆しがある。それを補っているのが、コンサート関連の物販・チケット手数料・スポンサー広告・限定グッズ・ファンクラブ会費といった「アーティスト周辺収益」だ。

中国のオフラインライブ市場は2024年に過去最大を更新したと中国演出行業協会が報告。当局も大型公演の規制を緩めつつある。Tencent Musicはこの追い風を、保有する音楽IPに直結させてマネタイズしている格好だ。決算で同社経営陣は「AIは創作の参加を広げるが、人間の創造性を置き換えるものではなく、むしろプレミアムIPの希少性と本質的価値を高める」と述べた。

🇯🇵 日本人アーティスト中止続出のなか中国音楽IP市場は最高益更新

このオフライン成長エンジンから完全に外れているのが日本の音楽IPだ。2025年11月の高市早苗首相の国会答弁を機に日中関係が緊張して以降、ONE OK ROCK、浜崎あゆみ、ゆず、JO1、シドなど中国でのライブが直前中止に追い込まれた邦人アーティストは30組を超える。2026年5月時点でも上海・北京での日本人公演は事実上凍結が続く。

日本のレコード会社、マネジメント、ライブプロモーターから見ると、中国市場で最も伸びているコンサート&グッズ収益のチャネルから自社IPがブロックされている状態だ。中国側プラットフォームでの楽曲配信は続いているものの、Tencent Musicが収益の屋台骨に据えた「オフライン経済圏」へのアクセスを断たれているため、IPのフル収益化ができない。Disney、Universal、ソニーピクチャーズが現地パートナーシップでオフライン展開を確保している横で、邦人アーティストだけが取り残されている。

🏁 日本の音楽IPホルダーは中国「オフライン経済圏」から構造的に排除へ

Q1決算が示したのは、中国音楽市場の収益の重心が「ストリーミングからオフラインIPへ」と移ったことだ。Tencent Music一社で年換算1兆円規模の音楽IP経済が動くなか、日本人アーティストだけが外交リスクを理由に締め出されている。一時的な公演中止というニュースの裏で、中国における日本音楽IPの立ち位置が「配信のみ・オフライン排除」に固定化された格好だ。日本のレコード会社が次に打つ手は、台湾・香港・韓国を経由した東アジアIP流通網の再構築しかないだろう。