どんなニュース?
ソニーミュージックエンターテインメントが2025年後半、ベトナムの大手エンターテインメント企業YeaH1グループに49%出資し、V-pop(ベトナムポップ)の国際展開に本格的に乗り出した。両社が設立した合弁会社SYE Holdingsは、YeaH1のリアリティ番組「Tan Binh Toan Nang(タン・ビン・トアン・ナン)」で選抜された7人組ボーイバンド「UPRIZE」を国際市場へ売り出す計画で、2026年4月のアルバムリリースに向けて動いている。
ソニーが東南アジアの音楽産業に直接資本を注ぎ込んだのは、V-popが「K-popの10年前」と酷似した条件を持つからにほかならない。「K-popのプレイブックをそのまま使う」——そう公言する戦略の中身と、日本市場への含意を整理する。
元記事・原文引用
元ネタ:Can Vietnamese Pop Be the Next K-Pop? Sony Thinks So(Outlook Respawn / 2026年1月30日)
“Sony and YeaH1 are using the K-pop playbook to introduce V-pop abroad.”
なぜ今、話題になっているの?
背景にある構造を整理すると、3つの力学が同時に働いている。
第一に、K-popモデルの「汎用化」。SM・YG・HYBEが確立した「オーディション選抜→専属育成→グローバル同時展開」というパイプラインは、特定の文化に依存しない「工業化されたポップ製造の公式」だ。YeaH1はその公式をベトナム語コンテンツで再実装しようとしている。UPRIZEの選抜番組がK-pop系育成番組のフォーマットをそのまま使っているのは偶然ではない。
第二に、東南アジア市場への資本流入。TikTokやSpotifyの普及で、英語圏以外のコンテンツが初めて「グローバルチャートに乗れる時代」になった。ソニーの判断は、その窓が開いているうちに「次のK-popポジション」を確保するという賭けだ。K-popが世界に出たとき、主要レーベルは出遅れた。今度は乗り遅れないという意思が透けて見える。
第三に、ベトナムの人口構造。中央値年齢31歳という若い国で、スマートフォン普及率は90%超。国内1億人市場でファンベースを育ててから国際展開する「内需先食い型」の戦略が成立する。これはK-popが韓国国内で確立したのと同じ条件であり、インドネシアやフィリピンよりもV-popに有利な点だ。
日本への影響は?
日本はK-popの最大輸出市場のひとつであり、BTS・SEVENTEEN・BLACKPINKが証明したように「応援するための文化インフラ(FC・グッズ・来日ツアー)」が世界で最も整備されている国だ。V-popが同じ戦略を踏襲するなら、日本は必然的に主要ターゲットになる。
より重要なのは競合構造の変化だ。日本国内のアイドル産業に加え、すでにK-popが大きなシェアを持つ中、そこにV-popが参入するとなれば、日本のポップ市場は「韓国・ベトナム・日本の3極競争」へと踏み込む可能性がある。特にティーン向け市場は過熱が予想される。
また、今回の出資はソニーミュージックジャパンの親会社が直接関与する形だ。UPRIZEが国際的に成功すれば、日本でのプロモーション展開が次のステップになるのはほぼ確実だ。日本のファンが「V-popのファンになる」日は、思ったより近いかもしれない。
まとめ
「V-popはK-popの次になれるか」という問いに対して、ソニーは明確に「なれる」と賭けた。その根拠はコンテンツの質ではなく、K-popが証明した「構造の再現性」だ。オーディション選抜→グローバル展開というパイプラインが機能するなら、言語はベトナム語でも構わない。UPRIZEの2026年4月デビューは、V-popが「ローカルな音楽」から「グローバルな文化産業」へと変質する最初の試金石になる。日本のポップ産業にとっても、対岸の火事ではない。


