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【アメリカ】日本の曲の海外チャート、1位TOKYO DRIFT・2位真夜中のドア。アニメ曲10曲を押さえた理由は米国側にあった

吉沢まこと
Velleity Note 編集長
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【アメリカ】日本の曲の海外チャート、1位TOKYO DRIFT・2位真夜中のドア。アニメ曲10曲を押さえた理由は米国側にあった

3行サマリー

  • 2026年9月24日付のビルボードジャパン「Global Japan Songs Excl. Japan」で、TERIYAKI BOYZ「TOKYO DRIFT (FAST & FURIOUS)」が1位、松原みき「真夜中のドア〜stay with me」が2位。上位20曲のうち10曲はアニメ由来でした
  • 「TOKYO DRIFT」の映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』は北米興行収入6251万ドルでシリーズ最低。曲だけが残り、2020年にLil Yachtyが引用した「T.D」は全米ビルボードHot 100で83位に入っています
  • 「真夜中のドア」の下地は2010年代のfuture funkで、担い手の一人はオレゴン州出身のアメリカ人。日本側が設計できるのはアニメ経由の道だけで、この2曲が通った道は米国側の事情で先に開いていました

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2026年9月24日付の海外向けチャート、上位20曲のうち10曲がアニメのタイアップ曲だった

まず、いま海外で日本の曲がどう聴かれているかを一覧で見てください。ビルボードジャパンの「Global Japan Songs Excl. Japan」は、日本国内の再生を一切含まないチャートです。Luminate Data LLCが日本を除く200以上の国と地域のストリーミングとダウンロードを集計していて、2023年9月14日に始まりました。2026年9月24日付の上位20曲は次の顔ぶれです。

順位曲名アーティスト週数タイアップ元
1TOKYO DRIFT(FAST & FURIOUS)TERIYAKI BOYZ159ハリウッド映画
2真夜中のドア〜stay with me松原みき1591979年のシティポップ
3AIZOKing Gnu36呪術廻戦 死滅回游 前編 OP
4NIGHT DANCERimase159なし
5IRIS OUT米津玄師53劇場版チェンソーマン レゼ篇 主題歌
6死ぬのがいいわ藤井風159なし
7KICK BACK米津玄師159チェンソーマン OP
8Bling-Bang-Bang-BornCreepy Nuts141マッシュル 第2期 OP
9PretenderOfficial髭男dism159なし
10It’s Going Down NowLotus Juice / 高橋あず美121ゲーム『ペルソナ3 リロード』
11夜に駆けるYOASOBI159なし
12ループザルーム (feat. 初音ミク)ルシノ34なし
13オトノケCreepy Nuts102ダンダダン OP
14SPECIALZKing Gnu159呪術廻戦 渋谷事変 OP
15アイドルYOASOBI159【推しの子】OP
16Good Boy&TEAM2なし
17青のすみかキタニタツヤ159呪術廻戦 懐玉・玉折 OP
18Mark on Me&TEAM2なし
19革命道中アイナ・ジ・エンド63ダンダダン 第2期 OP
20in the pool牛尾憲輔49劇場版チェンソーマン レゼ篇 劇伴

この表には特徴が2つあります。1つは、20曲のうち10曲がアニメのタイアップ曲だということ。3位のKing Gnu「AIZO」は『呪術廻戦』第3期のオープニング、5位の米津玄師「IRIS OUT」は『劇場版チェンソーマン レゼ篇』の主題歌です。以下「KICK BACK」「Bling-Bang-Bang-Born」「オトノケ」「SPECIALZ」「アイドル」「青のすみか」「革命道中」「in the pool」まで、アニメか劇場版から出てきた曲が並びます。海外へ日本の曲を運んでいるのはアニメの配信網だ、というのがこのチャートの読み方です。

もう1つは週数の欄です。「159」と表示された曲が10曲あります。チャート開始の2023年9月14日から数えて9月24日付が159回目の発表にあたるので、この10曲は初回から一度も圏外に落ちていません。海外のリスナーのもとには日本の曲が「今週の新譜」としては届かないので、古い曲が落ちず、新曲はその上に積み上がるしかない。だから新しく入ってくる曲は、ほぼアニメ主題歌に限られます。

1位のTOKYO DRIFTは2006年のハリウッド映画、2位の真夜中のドアは1979年の録音でアニメと無関係だった

引っかかるのは首位の2曲です。1位のTERIYAKI BOYZ「TOKYO DRIFT (FAST & FURIOUS)」はアニメではなく、2006年のハリウッド映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』の主題歌。2位の松原みき「真夜中のドア〜stay with me」に至っては1979年発表のシティポップで、タイアップは何もありません。アニメ経由という、このチャートの一番の特徴から外れた2曲が、10曲のアニメ勢を押さえて1位と2位に座っているわけです。

しかも、この2曲はチャート開始から居座っている側でもあります。週数はどちらも159。つまり「アニメが曲を運んでいる」という説明でも、「新しいから上にいる」という説明でも、この2曲だけは説明がつきません。日本の曲が海外で聴かれる経路を上位20曲ぶん照合した回でも、この2曲だけは他と毛色が違って見えていました。

では何が運んだのか。調べてみると、2曲はそれぞれ別の回路を通っていて、どちらもアメリカ側に先から用意されていたものでした。片方は2006年のハリウッド映画、もう片方は2010年代にアメリカのアンダーグラウンドで動いていたクラブ音楽です。

先に断っておくと、このチャートは「日本を除く海外」の合算であって、アメリカ単独の順位ではありません。ですからここからは、米国での受容そのものを示す数字と現地報道をたどります。

TOKYO DRIFTの映画は北米興行収入6251万ドルでシリーズ最低、曲も2006年はHot 100に届いていなかった

出典:How “Tokyo Drift” Became a Misunderstood Cult Classic(InsideHook / 2021年12月14日)

出典:‘Tokyo Drift’ Slides and Sweeps Across TikTok(TIME / 2020年1月17日)

意外なのは、この曲の土台になった映画そのものは成功していないことです。Box Office Mojoによると、『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』の興行収入は北米6251万4415ドル、海外9645万195ドル、全世界で1億5896万4610ドル。第1作が全世界2億ドルを超えていたことを思えば、シリーズの中で最も低い数字です。主演も入れ替わり、シリーズの本筋からは外れた一本として扱われました。

曲の当時の成績も控えめでした。2006年の全米ではビルボードのBubbling Under Hot 100で20位。Hot 100の本体には届いていません。2006年の時点では、映画も曲も「アメリカで大ヒットした」とは言えない位置にいたわけです。

the film offered a window into a zeitgeist that engrossed the imaginations of people my age

それでも記憶の側では残りました。InsideHookのChris Cotonouは、当時10代だった自分たちにとってこの映画が時代の空気をのぞく窓だったと振り返っています。2006年の校庭では日本のゲームとアニメがすでに大きな存在で、この映画のあとに車も加わったという書き方でした。興行では負けた映画が、当時の子どもの記憶の側では勝っていた。そしてその世代が、2020年に作り手と発信者の側へ回ります。

2020年、Lil Yachtyの引用曲「T.D」が全米83位。同じ年にTikTokの床ドリフト動画が曲を呼び戻した

記憶が音源として出てきたのが2020年です。Lil Yachtyは2020年5月29日のアルバム『Lil Boat 3』に「T.D」を収録し、この曲をサンプリングしました。Tyler, the CreatorとA$AP Rockyが参加したこの曲は、全米ビルボードHot 100で83位に入っています。原曲が2006年に届かなかったHot 100に、引用した側が入った形です。

動きは一人ではありませんでした。Ski Mask the Slump Godの「Where’s the Blow?」、Injury Reserveの「Jailbreak the Tesla」でもこのメロディが使われています。2020年3月24日には88risingのRich Brianが「Tokyo Drift Freestyle」を出し、そこからAUDREY NUNA、JP THE WAVY、Awichへとフリースタイルの連鎖が続きました。

A new viral trend calls for participants to film themselves or others sliding across the floor or around a corner

同じ年、一般の利用者側でも同じ曲が動いていました。TIMEのMegan McCluskeyは、床や曲がり角を滑る姿を撮ってこの曲に乗せる遊びがTikTokで広がったと2020年1月に報じています。発火点として挙げられているのは、バンクーバーの雪道でバンが車をよけながら滑っていく動画でした。曲が先にあって動画がついたのではなく、滑る映像に合う曲として引っ張り出された順番です。

曲を掘り直したのはアメリカのラッパーで、遊び道具として広げたのはTikTokの利用者。日本側は関与していません。リリースから14年後に、アメリカの内側で二度目の流通が起きたということです。

真夜中のドアの下地はvaporwaveとfuture funk、担い手のYung Baeはオレゴン州出身のアメリカ人だった

もう1曲も、最初の入口はYouTubeのおすすめではありませんでした。その前段に、vaporwaveとfuture funkというアンダーグラウンドのクラブ音楽があります。シティポップはまずそのコミュニティで見つけられ、そのあとYouTubeとTikTokへ広がりました。順番が逆なのが大事なところです。

そしてfuture funkの担い手にアメリカ人がいました。Yung Bae(本名Dallas Michael Cotton)はオレゴン州ポートランド出身で、2014年のデビュー作『Bae』で80年代のシティポップをサンプリングしています。Bandcamp Dailyが伝えるように、彼はその後アメリカ国内のツアー規模まで広がりました。アーカイブを掘る側に韓国のNight Tempoがいて、アメリカのメインストリームへ持ち出す側にYung Baeがいた、という分担です。

英語圏のメディアが追いついたのもこの流れの中でした。Open Cultureは2017年3月にシティポップの特集を出し、2018年10月には竹内まりや「Plastic Love」をYouTubeのアルゴリズムが掘り起こした例として取り上げています。つまり「真夜中のドア」が爆発する前に、40年前の日本の録音を聴く趣味そのものがアメリカ側で成立していました。

2020年12月のTikTokで、真夜中のドアは「日本の曲だと知られた上で」遊ばれていた

「真夜中のドア」がアメリカの一般層に届いたのは2020年12月です。Know Your Memeの記録では、TikTokの@arisa.teoが2020年12月10日に投稿した動画がこの曲の代表的な形式を作りました。日本人の母親にこの曲を聴かせて、気づくかどうかを撮るという内容で、2770万回再生・670万いいねに達しています。2021年7月19日の時点で、この曲を使った動画は24万本を超えました。

この形式が成立していること自体が、答えの一つだと思います。母親が気づくかどうかを楽しむには、それが日本の曲だと分かっている必要があります。アメリカのリスナーはこの曲を「日本のシティポップ」として受け取っていて、ただし歌詞の中身までは理解していない。英語のフレーズである「Stay with Me」が非日本語話者の耳を掴んだという指摘もあり、意味ではなく響きで聴かれている曲だと言えます。

2曲の経路を並べると、共通点は1つだけです。どちらも2020年に、アメリカのTikTok利用者が自分たちの遊びの道具として引っ張り出しました。ただし引っ張り出す前の下地は、片方が2006年の映画館、もう片方が2010年代のクラブ音楽と、まったく別の場所にありました。

Adoの米国2億1210万ストリームと並べると、この2曲は例外ではなく別系統だと分かる

アニメ経由の道は、数字の規模ではこの2曲を上回ります。ビルボードの独占データパートナーであるLuminateのブログによれば、Adoは2025年の米国オンデマンドで2億1210万ストリームを記録し、2025年に米国で最も聴かれた日本拠点のアーティストになりました。YOASOBI「アイドル」は2026年2月12日時点で通算39億ストリームに達しています。

この規模と並べると、「TOKYO DRIFT」と「真夜中のドア」は主流から外れた例外という見え方になりがちです。ただ、たどってきた経緯を並べると、例外というより別系統と呼ぶほうが近いと思います。アニメ経由は日本の作品が海外の視聴者を連れてくる道で、この2曲が通ったのはアメリカ側の記憶と遊びが日本の曲を呼び戻す道でした。

向きが逆なので、同じ物差しで測る必要はありません。日本の曲が海外で聴かれる形は少なくとも2通りあります。

日本側が設計できるのはアニメ経由の1本で、この2曲の道はアメリカの記憶が先に開いていた

この2曲の通り道は、日本から再現できません。片方はハリウッドが2006年に作った映画とその主題歌で、もう片方はアメリカのクラブ音楽コミュニティが2010年代に掘り当てた古い録音です。どちらも、アメリカ側にすでにあった文脈に日本の曲が呼び出された形で、日本の制作側が仕掛けた動線ではありません。

いま日本側が意図的に動かせるのはアニメ経由のルートです。上位20曲のうち10曲がアニメ由来という数字は、そのルートが機能していることの証明でもあります。ただ、この2曲を見ていると、海外に届く道はその1本だけではないことも分かります。ハリウッド映画の主題歌を日本のグループが歌っていた事実と、40年以上前の国内録音が海外のクラブカルチャーに拾われた事実が、いまも上位で効いているわけです。

日本のリスナーから見ると、この2曲はどちらも「懐かしい曲」に近い位置にいます。でもアメリカでは、片方は2020年の新しい遊び道具として、もう片方は知らない時代への憧れとして届いている。設計できないほうが20年後に首位に来ているところに、この市場の読みにくさが出ていると感じます。

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吉沢まこと
Velleity Note 編集長(EIC)・エディトリアルディレクター

Webデザイナー、雑誌出版社のWebディレクター、コンテンツマーケター、Web広告プランナーを経て、現在は愛知県の業界No.1企業のインハウスのAIプロダクトマネージャー兼データサイエンティスト。Velleity Noteでは編集長としてメディアの編集方針を定めるとともに、AIとの共著で記事を制作する自動化ワークフローの設計とシステム開発を手がけている。