【中国】上海の地下アイドル、日本語の歌が歌えなくなったと共同通信。7月からアニメソングの公演が中止に
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3行サマリー
- 共同通信は8月20日、上海市の複数の区が7月以降、音楽施設に「日本語の歌詞を含む曲を舞台で使わない」よう口頭で指示していると報じました
- 中国の地下アイドルは中国メディアの集計で昨年時点250組超。その多くが日本のアイドル曲やアニメソングを日本語のまま歌ってきました
- 台湾の掲示板PTTには8月20日21時14分(台湾時間)に転載スレッドが立ち、21日13時(日本時間)に確認した時点で書き込みは62件。「広州では禁止されていない」と地域差を指摘する声も出ています
上海の複数の区が7月から、日本語の歌詞がある曲を舞台で使わないよう口頭で指示
中国・上海のライブハウスから、日本語の歌が消えかけています。共同通信は8月20日、上海市の複数の区で7月以降、地元当局が音楽施設に対して「日本語の歌詞を含む曲をステージで使わない」よう口頭で指示していると報じました。文書による通達ではなく、口頭での指示だという点がこの話の性格をよく表しています。
中国では、ライブを開くときに主催者が曲名と歌詞を事前に当局へ提出し、審査を受ける決まりになっています。共同通信によれば、7月に入ってからは日本のアイドル曲をカバーする公演が許可されず、日本のアニメソングを中心にした公演が中止に追い込まれる例が出ました。上海の地下アイドルグループの女性は、曲目を中国語の歌に差し替えて何とか対応している、と話しています。
共同通信「地元当局が中央政府の対日政策を忖度した」、香港の媒体も同じ日に伝えた
出典:地下アイドルに日本の曲歌わせず 上海当局が中央政府に忖度か(西日本新聞・共同通信配信 / 2026年8月20日)
出典:中日關係︱日媒:上海官員口誡音樂場所禁唱日文歌 地下偶像須改唱華語歌(星島頭條 / 2026年8月20日)
日本のオタク文化が根付く中国上海市で、現地の地下アイドルがライブで日本語楽曲を歌唱することを規制する動きが広がっている。
指示の根拠になった法令や通達は示されていません。共同通信は業界関係者の見方として「地元当局が中央政府の対日政策を忖度した」という受け止めを伝えており、当局が禁止を発表したわけではない、という点は押さえておく必要があります。この記事の内容は、いまのところ共同通信の取材にもとづく報道ベースの情報です。
香港の星島頭條は同じ8月20日の夜、共同通信の報道として同じ内容を伝えました。そこでは業界関係者の別の証言も紹介されています。これまでは日本人歌手の公演が中止になっても、日本語を話せる中国人歌手が代わりに舞台へ立てた。それが今はできなくなった、という内容でした。歌い手を差し替えて逃げる道まで塞がった、ということになります。
あわせて、イベントで日本のアニメキャラクターのコスプレが制限される動きも続いていると共同通信は書いています。日本アーティストの中国公演が次々に消えていった流れは、ONE OK ROCKの上海公演中止を取り上げた4月の記事でも追いました。今回はその矛先が、来日組ではなく現地で日本の曲を歌ってきた人たちに向いた形です。
中国の地下アイドルは250組超、日本の曲を日本語のまま歌う文化がそのまま根づいていた
そもそも中国の地下アイドルは、日本の文化をほぼそのまま輸入したものです。中国メディアの集計として星島頭條が伝えたところでは、昨年の時点で中国全土に250組を超える地下アイドルグループがあります。日本のアイドル風の衣装を着て、小さな劇場で活動し、日本のメジャーな曲や地下アイドルの曲を日本語のまま歌う。ファンとのやり取りにも日本語を混ぜる。そういう現場です。
つまり「日本語の歌詞がある曲を使わない」という一行は、セットリストの一部を差し替える話では終わりません。日本語で歌うこと自体がその文化の中身だからです。中国語の曲に置き換えた瞬間、それは別のジャンルになってしまいます。差し替えて何とか対応している、という言葉の重さはそこにあると受け止めました。
中国語の中に入り込んだ日本語をめぐっては、7月から8月にかけて微博でも議論が起きていました。「中国語に日本語を混ぜるな」という投稿が3万いいねを集めた件です。日常語のレベルと舞台の上と、別々の場所で同じ方向の圧力がかかっているように見えます。
台湾の掲示板では「広州では禁止されていない」と地域差を指摘する声が並んだ
この件は台湾でもすぐに広がりました。台湾最大の掲示板PTTのACG板(C_Chat)には、8月20日21時14分(台湾時間)に台湾メディアの記事を転載したスレッドが立っています。8月21日13時(日本時間)に確認した時点で、書き込みは62件でした。
目を引いたのは、話を鵜呑みにしない書き込みが早い段階で出ていたことです。先週まで上海にいたという人が、南京路のオタク向けの店では今も日本語の曲が流れていた、と書いていました。別の人は、先週広州のオタク仲間と話したが広州では日本語の曲は禁じられていない、地方の役人が上の意向を汲んだ結果の地域差だろう、と指摘しています。なぜ上海だけなのか、上が喜んでいるなら他の省も続くはずだ、という疑問も出ていました。
個々の書き込みは匿名なので、それ自体を事実の根拠にはできません。ただ、票の集まり方を見るかぎり、現地の空気を知っている層ほど「中国全土で日本語の歌が禁止された」という受け取り方には慎重でした。共同通信の記事も上海市の複数の区の話として書いており、この温度差は記事の書き方と矛盾しません。
もうひとつ目立ったのが、話題が台湾自身の問題に引き寄せられていたことです。ちょうど同じ週、台湾では日本アニメ『ヤニねこ』が主要な配信サイトから一斉に消えました。配信停止の経緯はこちらの記事にまとめています。上海の話を読んだ台湾の読者の多くが、その件を引き合いに出していました。日本の作品が現地の事情で棚から下ろされる、という経験を、いま台湾も同時に味わっているわけです。
日本のアニメソングが「審査に出せない曲」になったことが、いちばん重い
日本のファンにとって、この話のどこが自分ごとなのか。中止になった公演の本数でも、上海という都市の名前でもないと思います。重いのは、日本のアニメソングが「審査に出しても通らないかもしれない曲」の側に回った、という一点です。
審査に通らない曲は、次から選ばれません。主催者は最初からリスクの低い曲を並べます。禁止令が撤回されても、いったん現場から外れた曲がすぐに戻る保証はどこにもありません。口頭の指示が文書より怖いのは、撤回する主体も撤回された記録も残らないからです。
一方で、台湾の掲示板が示したとおり、これは中国全土の話ではありません。上海の複数の区で起きていることであり、広州では起きていないという証言もありました。地域差があるということは、判断しているのが中央ではなく現場の役人だということでもある。数字で線が引かれているのではなく、誰がどこまで忖度するかで決まる。だからこそ、次にどこへ広がるのかを外から予測しにくい。個人的には、そこがいちばん落ち着かない部分だと感じています。
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