【アメリカ】ソニーPS2のセキュリティチップを吸い出すツールが公開。作者が「本体が壊れる」と警告、23種のROMが集まる

3行サマリー
- PS2のセキュリティチップ「MechaCon」のROM 256KBを実機からUSBメモリへ書き出すツール、MechaLIBerator v0.1.0-beta.1が日本時間9月19日に公開されました。
- 有志が作った公開索引には、9月21日の時点で23リビジョン分のSHA-256が並びます。ROM本体そのものは置かれていません。
- 索引の対象には日本版のSCPH-10000系に加えて、ナムコのアーケード基板System 246/256で使われたファームも入っています。
SeriesPS2のセキュリティチップ MechaCon 解析全2本
ソニーPS2のMechaCon(SPC970)が解析されてから、吸い出しツールや公開索引がどこまで広がるかを追う連載。
- 2026/9/17【アメリカ】ソニーのPS2セキュリティチップ、発売から26年で解析される。ナムコ・コナミのアーケード基板の保存にも道
- 2026/9/24【アメリカ】ソニーPS2のセキュリティチップを吸い出すツールが公開。作者が「本体が壊れる」と警告、23種のROMが集まる(この記事)
MechaLIBerator公開。PS2実機からMechaConのROM 256KBをUSBメモリへ書き出す
PS2のセキュリティチップからROMを吸い出すツールが、誰でも手に取れる形で配られました。Libbersが公開した「SPC970 MechaLIBerator」で、最初のリリースにあたるv0.1.0-beta.1が日本時間9月19日に出ています。
READMEによれば、これはPS2SDKで書かれたPS2本体用のアプリケーションです。ディスクを抜いてトレイを閉じ、ドライブが止まってからUSBメモリを挿してELFを起動すると、MechaConのFC0000〜FFFFFFに見えている256KBのROM領域がそのままUSBへ書き出されます。対象はDragon以前の世代、つまり初期の厚型PS2に載っているSPC970です。
チップの解析そのものは9月中旬に公表済みで、今回はその続きにあたります。解析が成立したことと、手元の実機で誰でも試せることのあいだには、ふつう数か月ぶんの距離があるものです。ところが今回は、公開索引ができた9月14日から数えて5日後には、もう実行ファイルが置かれていました。この間の詰まり方が、正直いちばん驚いた点です。
Hardware Busters「ダンプだけではドライブ側の応答を合成できない」
出典:SPC970-MechaLIBerator(Libbers / GitHub / 2026年9月19日)
出典:The PS2 MechaCon is dumped after four years, and the dumps still can’t build a drive emulator(Hardware Busters / crmaris / 2026年9月17日)
ダンプ単体では、会話のドライブ側を合成するのに十分な情報を持っていない。そこが常に難所だった。
Hardware Bustersは、ROMが手に入ったことで研究者が推測ではなく実物を監査できるようになった、と書いています。ただし光学ドライブの偽装装置がこれで作れるようになったわけではない、という留保も同じ記事に置かれています。扱っている対象は厚型に載るCXP102064で、後年の薄型は別のファームだというただし書きつきです。
作者自身が「このツールはPS2を壊しうる」と明記。Xボタン5秒長押しで誤操作を止める設計
READMEの警告文は、ツールの説明より先に置かれています。「THIS TOOL CAN DAMAGE YOUR PLAYSTATION 2.(このツールはあなたのPlayStation 2を壊す可能性があります)」という一行。読み飛ばしようのない位置です。
理由は、吸い出しの過程でMechaConとNVRAMへの低レベルな書き込みを意図的に行うからだと説明されています。対応していない世代の本体で動かした場合、あるいは実行中にリセットや電源断が起きたりUSBメモリを抜いたりした場合、本体のデータが壊れて正常に動かなくなる、最悪はハードウェア修理が必要になる。完全に自己責任だという注記も添えられていました。
そのぶん操作側の防御は厚めに作られています。MechaConへの書き込みは、Xボタンを5秒押し続けて確認バーを満たさないかぎり始まりません。うっかり押しただけでは進まない作りですね。Squareを押せばNVRAMのバックアップから復元でき、Circleで終了します。最初のキャプチャは本体を一切書き換えず、1,024バイトのNVRAM全体をNVRAMnn.BINとして、CRC32付きの一覧をNVRAMnn.TXTとして保存する手順です。ファイル名は連番で最大100個まで作られ、既存のファイルを上書きしません。壊す前に必ず退避が残る順番になっているところに、作者の慎重さが出ていると受け止めました。
動いたのはPCSX2 Reliquary本体ではなく、吸い出し側の6リポジトリ
この1週間で更新されたのは、エミュレータ本体のほうではありませんでした。解析を主導したDiscoStarslayerのPCSX2 Reliquaryは、解析が公表されたあと新しいリリースを1本も出していません。最新版はv1.9.4-reliquaryのまま。スターは前回の記事を書いた時点の104から112へ、フォークは6から7へ増えましたが、コード側は止まっています。
代わりに増えたのが周辺の道具でした。9月14日に公開索引ができ、9月19日にMechaLIBeratorが出て、9月20日には読む側が2本まとめて立ち上がります。zecoxaoのmechadecがIDA 9.x向けのプロセッサモジュールとROMローダを、Myriachanのghidra-spc970がGhidra用のプラグインを用意する形です。吸い出す道具、読む道具、集める場所。この3つがほぼ同時に揃いました。
索引の中身も整っています。CXP101064、CXP102064、CXP103049という3系統のチップごとに表が作られ、地域は日本、米国、欧州、豪州、アジア、ロシア、アーケード、開発機材に分けて管理されている構成です。吸い出し済みは9月21日時点で23リビジョン。ただしROMのバイナリは置かれておらず、載っているのはSHA-256だけでした。ファームのビルド日は2000年7月4日から2002年2月1日に収まっていて、24年前から26年前のROMが今になって表に出てきたことになります。
開発者uyjulian「ディスクの中身は元から暗号化されていない」。海賊版が増える話ではない
この件でいちばん具体的な反応は、歓声ではなく訂正でした。PS2まわりのホームブルー開発で知られるuyjulianは、Gistに公開した文章で、今回のダンプによって新しくできるようになったことは限定的だと指摘しています。
挙げられているのは4点です。バックアップディスクの起動はメモリーカードやHDD、ソフト的なexploitで以前から可能で、50000番台以降には強制解錠のパッチがすでにある。ゲームディスクの中身はDNAS認証を使うものを除いて元から暗号化されておらず、ダンプで新たに開く中身はない。PS2でPS1のソフトが動くのはIOPとEEの仕事であって、MechaConの話ではない。そしてダンプだけでは光学ドライブの偽装装置は作れない。「ついに破られた」という見出しが並んだ週に、当の開発者側から冷静な線引きが出てきたわけです。
そのうえで本当に有用なのは、フルシステムの低レベルエミュレーションの開発と、脆弱性の研究だとしています。MechaCon上でコードを実行するMechaPwnや、PS1モードを解錠するTonyHaxのような領域ですね。加えて、現在の吸い出し手法は本来意図されていないコマンドを多用するため、NVRAMの寿命を縮めるとも警告しています。壊れる可能性があるのは実行中の事故だけではない、という話です。
索引のコミット履歴を見ると、番号を埋めているのは各国の実機オーナーでした。9月15日前後にロシア版の501GGが加わり、9月21日のコミットで豪州版の初ダンプが入っています。同じコミットで、2.04が2.02と誤記されていた箇所も直されました。SNSの盛り上がりより、手元の1台を開けて表のマス目を1つ埋める作業のほうが先に進んでいる。そんな空気です。
索引に載ったナムコSystem 246/256。日本にとっての本命はアーケード基板の保存
日本の読者にとって効いてくるのは、索引のアーケード欄だと思います。651Rという番号に、ナムコのSystem 246/256が割り当てられていました。PS2の技術をそのまま業務用へ転用した基板で、格闘ゲームやレースゲームが数多く稼働した系譜です。同時に、交換部品がもう手に入らなくなっていく種類のハードでもあります。
日本版の家庭用も、SCPH-10000から15000、18000、30000、37000、39000まで型番が並びました。初代の厚型から中期までが、系統だった形で記録され始めたということになります。
ただし現時点でできることは、uyjulianの整理どおり限られています。ドライブの偽装装置は作れませんし、ディスクの中身が新しく開くわけでもありません。今回起きたのは、4年かけて1人が開けた扉に、5日で複数人が道具を置いていったという出来事です。吸い出しに手を出すかどうかはまた別の判断で、作者本人が本体を壊す可能性とNVRAMの摩耗を先に告げている以上、まだ動く実機を持っている人ほど急ぐ理由はありません。急がなくても、索引のマス目は誰かが埋めてくれます。
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