📝 どんなニュース?

「トランプ再選を当てた」「米国のイラン攻撃を予言した」——SNSでそんな触れ込みで世界中に拡散しているのが、中国系カナダ人の江雪琴(Jiang Xueqin)氏だ。YouTubeチャンネル「Predictive History」を運営し、いまや”中国のノストラダムス”と呼ばれる人物だが、実際には大学教授ではなく、その予言の内容も中国共産党(CCP)の対外プロパガンダと驚くほど一致している。世界中でバイラルになっているこの現象、鵜呑みにする前に立ち止まって検証してみよう。

📰 元記事・原文引用

元ネタJiang Xueqin: Predictions for 2026 – Empire, Rivalry & Collapse(Singju Post / 2026年1月6日)

“The primary focus involves Trump’s April state visit to China, where he aims to negotiate a ‘grand bargain’ forcing China to continue purchasing US dollars while gaining preferential resource access from the Western Hemisphere.”

また批判記事として、Splice Today「The Fake Professor Forecasting America’s Fall」が彼の経歴と意図を詳細に検証している。

🔥 なぜ今、話題になっているの?

2024年5月、江雪琴氏はYouTubeで3つの大胆な予言を行った。①トランプが2024年大統領選を制する、②アメリカがイランを攻撃する、③アメリカはその戦争に敗れる——という内容だ。①と②がほぼ的中したとして、2026年初頭からX(旧Twitter)やSNSで急速にバイラル化。「次は何を予言するのか」と世界中の注目が集まり、彼の2026年予言(アメリカ経済崩壊、NATOの瓦解、トランプの中国訪問など)が拡散し続けている。その信者は数百万人規模に膨らんでいる。

🇯🇵 日本人はどう受け止めるべきか

① 「教授」は本当か?——経歴を検証する

まず最大の問題が肩書きだ。江雪琴氏は「Professor」と名乗っているが、実際の学歴は英文学の学士号のみ。「ハーバード大学研究員」「RSA(王立芸術協会)フェロー」という肩書きはあるが、いずれも大学教員のポジションではない。また、2002年に「政治的に不都合なジャーナリズム」を理由に中国から追放された経歴を持ちながら、現在も中国に居住し活動できているという不可解な事実も指摘されている。

② 予言は本当に「当たった」のか?

「トランプ勝利を予言した」という点は、2024年前半から多くの政治アナリストが同様の予測を立てており、突出した先見性があったわけではない。「イラン攻撃」についても、トランプ政権誕生後の対イラン強硬路線は複数の専門家が想定したシナリオのひとつだ。的中した予言だけをピックアップして「神的な予言者」のように演出するのは、典型的な「確証バイアス」の活用であり、外れた予言は無視される。

③ なぜ拡散するのか——CCPプロパガンダとの一致

最も注意すべき点が、彼の語るメッセージの方向性だ。「アメリカは衰退する」「西側は崩壊する」「中国の時代が来る」——これらはすべて中国共産党が国内外に向けて発信してきた対外メッセージと完全に一致している。Splice Todayの分析は「彼のコンテンツはCCPのソフトパワー戦略の利益に奉仕している」と明確に指摘する。意図的かどうかはともかく、結果としてCCPの望む世界観を広める役割を担っている可能性がある。

④ 何が「被害」なのか

このコンテンツが日本でも拡散した場合の具体的な害は以下の通りだ。第一に、「アメリカは必ず衰退する」という決定論的な見方が広まり、日本の外交・安全保障判断の基礎となる情報認識を歪める恐れがある。第二に、「予言が的中した実績」を根拠に次の予言(アメリカ経済崩壊、円・ドル体制の終焉など)を信じ込み、誤った投資判断や生活上の意思決定に繋がりうる。第三に、信頼できる専門家や国際機関の分析よりも「当たる予言者」を信じる雰囲気が社会に広がれば、メディアリテラシーが全体的に低下する。

まとめ

江雪琴氏の「予言」は、歴史・政治のパターン分析をベースにした見通しであり、超能力や特別な情報源によるものではない。部分的に的中したことは確かだが、外れた部分は語られない。そして何より、その内容の方向性がCCPの利益と一致しているという構造的な問題がある。日本でこのコンテンツに触れた際は、「面白い予言だ」で止まらず、「誰が・なぜ・この情報を発信しているのか」を問う習慣を持ってほしい。世界が不安定な時代ほど、「答えを持つ予言者」への需要は高まる。そこを突いたコンテンツには常に批判的な目が必要だ。