どんなニュース?

2026年、ベトナムの化粧品市場に静かな革命が起きている。広告やインフルエンサーの言葉を信じるより、成分表示を自分で読んで判断する消費者が急増しているのだ。この新しい消費者層は「KOC(Key Opinion Consumer=成分知識を持つ意見消費者)」と呼ばれ、35億ドル規模のベトナムビューティ市場の「信頼の構造」を根底から塗り替えつつある。市場規模は前年比成長を続ける中、企業に求められるマーケティング戦略も、インフルエンサー依存から「科学的根拠と透明性」へと転換を辫られている。

元記事・原文引用

元ネタCosmetics Industry Report 2026: KOC Power & “Clean Beauty” Era(DPS.MEDIA JSC / 2026年1月16日)

“Never before have Vietnamese consumers been so ‘knowledgeable’ (educated) about cosmetics as in 2026.”

なぜ今、話題になっているの?

この変化の背景には、三つの構造的な力が重なっている。

第一はTikTokによるスキンケア知識の民主化だ。「#skintok」などのハッシュタグで皮膚科医や成分研究者が発信する動画が大量に拡散し、一般消費者が「ナイアシナミド」「セラミド」「レチノール」の効能を普通に語れるようになった。企業の広告コピーより、実際に試した個人の詳細レビューが信頼を獲得するようになった。

第二はインフルエンサー不信の高まりだ。KOL(Key Opinion Leader=フォロワーの多い著名インフルエンサー)は企業案件が多く、評価が恰意的だという認識がベトナム消費者の間で広がっている。一方でKOCは「報酷なしで使った感想を正直に語る消費者」として信頼を獲得。TikTok Shop上の購買履歴付きレビューがその信頼性を担保している。

第三は可処分所得増加と肌トラブルの深刻化だ。急速な都市化にともなう大気汚染や紫外線への露出が増え、「肌を守る」ニーズが切実になっている。月収の上昇と「美容を生活必需品と捉える意識変化」が重なり、消費者は安易に妥協しなくなった。市場では「美白」偏重から「健康的な艶肌・バリア機能」重視へとトレンドが移行し、スキンケアが全体の60%を占めている。

こうした変化はローカルブランドにも追い風となっている。ベトナム農産物(コーヒーかす・ジャックフルーツ)を原料にするCocoon、ベトナム女性の肌に特化したLemonadeなど国内ブランドが合記20%の市場シェアを確保しつつある。

日本でも広がる?トレンド分析

実は日本でも、ベトナムと同構造の変化がすでに起きている。2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制(景表法改正)により、インフルエンサーの広告案件には「PR」表示が義務付けられた。この規制は消費者のインフルエンサーへの信頼感にさらなる変化をもたらし、「PR抜き」の生の声を求める動きが強まっている。

日本版KOCとも言えるのが「@cosme」や「LIPSアプリ」のヘビーレビュアーだ。フォロワー数よりも投稿数・専門性・成分分析の深さで支持を集めるアカウントが、実際の購買行動に大きな影響を与えている。「スキンケアオタク」「成分オタク」と呼ばれる層はすでに一定のコミュニティを形成しており、構造的にはベトナムのKOCとほぼ重なる。

ただし日本との差異もある。ベトナムではTikTok Shopとの連動(購買データが信頼性を補強する仕組み)が既に機能しているが、日本ではTikTok Shopの普及が遅れており、「共感」と「エビデンス」の統合がまだ途上にある。ベトナムの事例は、日本のコスメ業界がインターネット通販とコンテンツの融合に本腐を入れる必要性を示している。

まとめ

ベトナムのKOC台頭は、「誰が信頼できるか」という消費者の問いが市場構造を変え得ることを示している。知識×生活実感×TikTokの三つが揃ったとき、広告依存のマーケティングは機能しなくなる。これは日本のコスメ市場が数年以内に直面するであろう構造変化の先行事例でもある。「成分を語れる消費者」に対して、ブランドはどう誠実さを示すか——それが次の競争軸になりつつある。