どんなニュース?

サウジアラビアのビューティ市場が急成長している。調査会社の最新レポートによると、2025年時点で75億6,000万ドル規模のサウジビューティ市場は、2031年には108億4,000万ドルに達する見込みで、年平均成長率は6.17%と予測されている。この成長を動かしているのは、単なる人口増加でも原油収入でもなく、「サウジ・ビジョン2030」という国家戦略だ。女性の社会進出、エンタテインメント産業の解禁、観光業の拡大——これらが重なって、石油大国がビューティ消費大国へとその顔を変えつつある。

元記事・原文引用

元ネタSaudi Beauty Market to Reach USD 10.84 Billion by 2031, Driven by サウジ・ビジョン2030(GlobeNewsWire / 2026年1月20日)

“The Saudi beauty market is projected to grow from USD 7.56 billion (2025) to USD 10.84 billion by 2031, representing a 6.17% compound annual growth rate.”

なぜ今、話題になっているの?

構造を理解するには、2016年に策定された「サウジ・ビジョン2030」を起点に見ていく必要がある。ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が主導するこの国家改革は、「石油依存からの脱却」を軸に、女性活躍、観光・エンタテインメント、製造業の育成を三本柱にしてきた。その中でも女性の経済参加は劇的な変化をもたらした。2017年には女性の車の運転が解禁、2018年にはコンサート・映画館が30年ぶりに再開、女性の労働参加率は2016年の17%から2023年には36%まで上昇した。

この変化がビューティ市場に直結している。職場に出る女性が増えれば化粧品・スキンケアの需要が生まれる。SNSが普及すれば外見への関心が高まる。観光業が育てば国際的な美容トレンドが流入する。さらにサウジの人口構造も後押しする——国民の70%以上が35歳以下という若い国で、Z世代女性がTikTokやInstagramを通じてグローバルなビューティトレンドをリアルタイムで吸収している。「ハラール認証」「砂漠気候に対応したスキンケア」という独自の需要軸も加わり、サウジは単なる「モノが売れる市場」ではなく、新しいビューティスタンダードを生み出す発信地としての存在感を持ち始めている。

日本ビューティ業界への影響は?

日本のビューティブランドにとって、サウジアラビアは見過ごせない新市場になりつつある。資生堂、花王、コーセーといった大手は中国市場に依存してきたが、中国の景気低迷と競争激化を受けて、中東・アフリカへの多角化を模索している。サウジ市場への参入においてカギを握るのが「ハラール認証」だ。豚由来成分やアルコールを含まない処方であることを証明するこの認証は、サウジを含む57カ国・18億人のイスラム圏市場への共通パスポートになる。実際、世界のハラール化粧品市場は2030年までに900億ドル規模に達すると予測されており、いち早く認証を取得した企業がファーストムーバーの優位を得る構造にある。

また、サウジにはもう一つ注目すべき特性がある。「日本製品への好感度の高さ」だ。日本のスキンケアは「自然由来」「高品質」「敏感肌対応」というイメージが中東富裕層に刺さりやすく、特に紫外線対策・保湿といった日本が強みを持つカテゴリーは砂漠気候のサウジとの相性が良い。ただし、現地流通・マーケティングのパートナー選びや、現地語(アラビア語)での情報発信は必須であり、中国進出とは異なる地域特性を理解した上でのアプローチが求められる。日本のビューティ企業がサウジをどう攻略していくか——中東進出の成否が、次の10年の成長を決める分岐点になるかもしれない。

まとめ

サウジアラビアのビューティ市場急成長は、単なる市場データの話ではない。国家戦略が女性の社会的地位を変え、それが消費行動を変え、世界のビューティ業界に新しい需要の重心を作り出しているプロセスだ。「ハラール」「砂漠気候対応」「Z世代SNS消費」という三つの軸が交差するサウジ発のビューティスタンダードは、イスラム圏18億人市場へのドアを開ける鍵になりうる。日本のビューティブランドがこの波に乗れるかどうか——それはむしろ、日本企業が「海外市場をどう学び、どう変われるか」を問う試金石でもあるのではないだろうか。