【アメリカ】FF作曲家・植松伸夫の「ハリウッド映画の音楽に行きつきがち」発言に米Redditで384件の議論。日本のRPG音楽を推す声も

3行サマリー
- 『ファイナルファンタジー』の作曲家・植松伸夫氏(67歳)が、ファミ通の対談で「迫力あるオーケストラはハリウッド映画の音楽に行きつきがち」と語った
- 英語圏では「警鐘」として報じられ、米Redditのr/Gamesで1,510票・384件のコメントを集めた(11月3日11時時点)
- 対談は2027年3月4日発売のJRPG『エターナルアニマ』の企画。崎元仁氏、樋口勝久ディレクターも参加している
植松伸夫氏、ファミ通の対談で「オーケストラはハリウッド映画の音楽に行きつきがち」
植松伸夫氏が、ゲーム音楽は質感だけで作品を見分けにくくなっていると指摘しました。発言の場は、ファミ通が10月28日に公開した『エターナルアニマ』の対談です。同席したのはベイシスケイプの崎元仁氏と、同作ディレクターの樋口勝久氏でした。
植松氏は、プレイステーションの時代からゲーム全体がハリウッド映画のような作りを目指すようになったと振り返っています。その流れで、映画音楽のような曲を書ける作曲家が重宝されるようになったとも述べました。
この一節が英語圏で「警鐘」として取り上げられ、米国の掲示板Redditで議論が広がっています。
ファミ通の対談をGame Observerが英訳して報道、NMEも続いた
出典:『エターナルアニマ』植松伸夫氏×崎元仁氏によるゲーム音楽対談(ファミ通.com / 2026年10月28日)
出典:Nobuo Uematsu Warns ‘Hollywood-Style Scores’ Are Making Game Music Sound Too Similar(Game Observer / 2026年10月31日 日本時間)
いまオーケストラで迫力ある音楽を、と考えるとどうしてもハリウッド映画の音楽に行きつきがちなんです。そういう意味で、質感での差別化は難しくなっているんじゃないかと思います。
Game Observerはファミ通1969号の対談を英訳し、見出しに「Warns(警鐘を鳴らす)」という語を置きました。11月2日には英NMEがGame Observerの記事を引いて後追いしています。原文の対談では、植松氏はこの話を警告としてではなく、ゲーム音楽の移り変わりの一部として語っています。英語圏で「警鐘」の色合いが強まったのは、見出しの付け方によるところが大きいと受け止めました。原文を読むと、語り口はむしろ穏やかです。
2024年にも同じ問題提起。今回はPS時代からの変化として語った
植松氏がこのテーマに触れたのは今回が初めてではありません。2024年3月にもNewsPicksのインタビューで、映画のサウンドトラックのような音楽で満足すると、ゲーム音楽はそれ以上発展しないという趣旨の発言をしていました。この発言はVGCなどが報じています。
今回の対談で目立つのは、作り手が置かれた環境の変化として語っている点です。植松氏は、ファミコンやスーパーファミコンの時代と違い、プレイステーション以降は「ガッチリとした音楽を作れる人じゃないと生き残れなかった」と回想しました。一方で自身については「ロックから来た人間なので、オーケストラのことなんかぜんぜん知らない」とも話しています。
なぜ似てくるのか。音源の制約がなくなり、作曲家は映画と同じ編成で書けるようになりました。さらにゲーム自体が映画のような体験を目指したため、求められる音も同じ方向にそろっていきます。音の質感だけでは作品を見分けにくくなった、というのが植松氏の見立てです。
米Redditでは「曲を思い出せない」と賛同が多数、ゼノブレイド3を挙げる声も
r/Gamesのスレッドは11月3日未明(日本時間)に立ちました。上位コメントは植松氏の指摘に賛同する内容が中心です。以下はいずれも意訳です。
- 最も支持を集めたコメント(419票)は「巨大なオーケストラは壮大だが、ある地点からはどれも似て聞こえる。象徴的なゲーム音楽には固有の音がある」というもので、独自性のある例として『Clair Obscur: Expedition 33』『ウィッチャー3』、マリオを挙げていた
- 『ニーア』シリーズや、Supergiant Gamesの作品を独自性のある例として返信する人もいた
- 「ここ15年の名作でも、曲を思い出せるのは数本だけ。PS1以前のメロディーならすぐ出てくる」という声も上位に入った
- 光田康典氏らが手がけた『ゼノブレイド3』を挙げ、主要なゲーム賞で音楽部門を逃した年を持ち出す投稿もあった。『ゼノブレイド』『ファイアーエムブレム』『ペーパーマリオ』など任天堂のRPGは名曲揃いなのに、ライト層が手に取らないと嘆く声もある。「欧米の市場はハリウッド寄りの音を好むのでは」と見る人もいる
- 映画とゲームの作曲家を名乗る投稿者は、「クライアントはハンス・ジマー風の壮大なオーケストラから外れさせてくれない。小さく親密な曲を書くと、決まって『もっと大きく』と言われる」と書き込んだ(本人の身元は確認できていない)
議論を一段深めたのは、最初のコメントへの返信でした。『Expedition 33』や『ウィッチャー3』も結局は映画的な大編成の系譜ではないか、という指摘です。ジョン・ウィリアムズとハンス・ジマーの作風を対比させ、映画音楽で30年近く続く論争と同じだと整理するコメントも支持を集めました。懐かしさで片付けず、「遊び終えたあとに曲を覚えているか」を物差しにして語る人が多かったのが印象的でした。
「自分のクセを前面に」。67歳の植松氏が若い作曲家に向けた答え
植松氏の発言の核は、批判よりも提案にあります。対談で植松氏は、これからゲーム音楽を作りたい人は「もっと自分のクセを前面に押し出して」個性的な音楽を作るとおもしろい、と述べました。さらに「この世界って最終的には個性の勝負」とし、流行をすべて追う必要はないとも語っています。
自身についても「67歳にしてそういう音を抜こう、抜こうと努力している」と明かしました。Redditで「個性のある音」の例として挙がった作品には、『ニーア』『ゼノブレイド』『ファイアーエムブレム』といった日本のゲームが並びました。植松氏の言う「クセ」が何を指すのか、海外のファンは自分の耳で覚えている作品名で答えています。対談の舞台となった『エターナルアニマ』は2027年3月4日に発売予定(Steam版は3月5日)。植松氏と崎元氏の音楽が海外でどう受け止められるのか、発売後に改めて追いかけます。
