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【台湾】日本アニメ『ヤニねこ』、主要な配信サイトが一斉に停止。残るのはNetflixだけで、罰金は最大100万台湾ドル

編集部
吉沢まことVelleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight
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【台湾】日本アニメ『ヤニねこ』、主要な配信サイトが一斉に停止。残るのはNetflixだけで、罰金は最大100万台湾ドル

3行サマリー

  • 台湾の主要な動画配信サイトが8月20日の午後4時ごろ、日本のアニメ『ヤニねこ』を一斉に取り下げました。動畫瘋・friDay影音・Hami Video・CATCHPLAY+・LINE TV・LiTV・MyVideo が並んで消え、いま台湾で見られるのは Netflix だけです。
  • 根拠は台湾のたばこ規制法「菸害防制法」の第12条です。国民健康署は地方の衛生局に調査を移しており、違反が確認されれば配信側に最大100万台湾ドル(約3万1,000米ドル)の過料が科されます。
  • 主人公がくわえているのは日本で実際に売られている銘柄「MEVIUS」です。日本のたばこ事業法では作品の中の描写は商業広告に当たりませんが、海を渡ると「広告」として読まれました。

8月20日の午後4時、台湾の配信サイトから『ヤニねこ』が一斉に消えた

たばこを手放せない猫の女の子を描いた日本のアニメ『ヤニねこ』が、今度は台湾で見られなくなりました。8月20日の午後4時ごろ、台湾の主要な動画配信サイトがそろって本作を取り下げています。ゲーム系コミュニティ大手・巴哈姆特が運営する「動畫瘋」をはじめ、friDay影音、Hami Video、CATCHPLAY+、LINE TV、LiTV、MyVideo。残ったのは Netflix だけになりました。

動畫瘋は公告で、代理店から急な連絡を受け、本作の内容が菸害防制法に触れるとして主管官庁から通知があったため、即時の取り下げに応じたと説明しています。Google Play や iOS 経由で課金していた会員には、当期分の返金申請を受け付けるとも案内しました。アニメ配信の窓口だった Ani-One Asia も、同社の YouTube チャンネルから本作を引き上げています。

3日前の8月17日には、同じ動畫瘋が香港向けの配信を止めていました。香港では喫煙(公衆衛生)条例のたばこ広告規制が根拠で、閉じたのは香港地域の窓口だけです。それが3日後、台湾の会社が自国の法律で自国の配信を止めることになりました。

国民健康署「銘柄とパッケージが完全に映れば、菸害防制法第12条の疑い」

出典‘Chainsmoker Cat’ anime draws parental concern(Taipei Times / 2026年8月21日)

出典台灣《尼古喵喵》OTT全面下架 剩Netflix成最後希望(4Gamers / 2026年8月20日)

若影視作品中畫面出現吸菸場景,並呈現完整菸品品牌及菸盒,疑涉違反菸害防制法第 12 條

国民健康署でたばこ対策を担当する羅素英・菸害防制組長のコメントです。意訳すると「映像作品に喫煙の場面があり、そこに銘柄とパッケージが完全な形で映っているなら、菸害防制法第12条に触れる疑いがある」となります。同署はすでに地方の衛生局へ調査を移しており、事実と確認されれば配信事業者に最高100万台湾ドルの過料が科されます。Taipei Times は米ドル換算で約3万1,323ドルと書き添えていました。

気になったのは、罰せられる相手が制作側ではなく配信側だという点です。第12条はテレビ・映画・録音物・インターネットなどを通じたたばこ製品の宣伝を禁じています。作品を作った人ではなく、それを届けた事業者が法の名宛人になる。日本の制作会社は台湾の法律の外にいるので、過料を負うのは現地の配信会社だけです。争っても得るものがなく、下ろせば損失は当期の視聴料で済む。各社の判断があれほど速かったのは、交渉の余地がそもそも無かったからだと見ています。

通報したのは民間の禁煙団体。「香港は止めたのに、台湾はまだ流すのか」と迫った

動いたのは政府ではなく、まず民間でした。禁煙運動に長く取り組む董氏基金會が、保護者から「作品の全体が喫煙の話でできている」という声を受け、正式に通報したと明らかにしています。同基金會の菸害防制中心で主任を務める林清麗氏は、第1話の3分56秒あたりから複数のたばこ銘柄が意図的にアップで映ると指摘しました。

林氏が具体例に挙げたのは、主人公のヤニ子が箱からたばこを何本か抜き、空いた場所にライターを入れる場面です。ここは銘柄を目立たせ、喫煙を良いものとして印象づける演出だ、というのが同基金會の主張でした。香港での配信停止を引き合いに「香港はもう止めたのに、台湾はまだ流し続けるのか」と迫った点も、報道で繰り返し引かれています。

禁煙団体の台湾拒菸聯盟も同じ日に、この描写が青少年の模倣を招きかねないとして厳しい調査を求めました。つまり香港の一件が台湾の保護者の背中を押し、通報の材料になっています。規制そのものが国境を越えて連鎖しました。

Redditの議論は作品の善しあしではなく、実在の銘柄が映ることに集まった

この件は海外の掲示板 Reddit のアニメ板でも大きく扱われ、2,300件を超える支持と250件近いコメントが集まりました。読んでいて印象的だったのは、賛否が「喫煙を勧める作品かどうか」で割れていないことです。以下はいずれも意訳で、個々の投稿は匿名のため、意見として紹介します。

もっとも支持を集めた投稿(900件超の賛同)は「実在するブランドを出したのがまずかった。架空の銘柄にしておけばよかったのに」と書いていました。次に票を集めたのも同じ線で「実在のブランドが映ると、本来なら引っかからないはずの法律に触れてしまう。これは擁護しづらい」という受け止めです。SNSでもこうした整理の仕方が目立ちます。

とりわけ生々しかったのは、台湾から書き込んだとみられる投稿でした。「数日前まで、台湾の人たちが香港はアニメを止められて気の毒だと笑っていた。それが今度は自分たちの番になった」。冗談めかしてはいますが、規制が自分の側に回ってくるまでの時間は3日しかありませんでした。

日本のたばこ事業法では、作品の中の銘柄描写は商業広告に当たらない

では日本ではなぜ問題にならないのか。4Gamers はここを丁寧に整理していました。日本のたばこ事業法が警告文の表示や過度な宣伝の抑制を求めているのは、あくまで「商業広告と宣伝」に対してです。アニメや漫画などの作品にたばこ製品が登場することは表現の範囲として扱われ、商業広告とは同じ線に置かれていません。作中に出てくる MEVIUS も、日本の法律の枠組みではメーカーによるタイアップ広告には当たらない、というのが同誌の説明です。

作品側は日本の法律に沿って作られていて、その作り方が台湾と香港では「広告」として読まれた。違うのは作品ではなく、たばこ規制の網の張り方です。日本は商業目的かどうかで線を引き、台湾と香港は画面にブランドが認識できる形で映っているかどうかで線を引いています。同じ映像が、物差しを取り替えるだけで別のものに変わってしまう。

原作漫画は、アニメ化より前から実在銘柄との類似を指摘されていました。2023年9月には掲載誌の『週刊ヤングマガジン』が、ステルスマーケティングだとする悪質な投稿について弁護士と協議し法的措置を検討すると告知しています。作品側は当時から「これは広告ではない」と立場を示していたわけです。それでも、その説明が通じるのは日本の法域の中だけでした。

同じ1話が、海を渡るたびに別の法律の網に掛かっている

『ヤニねこ』は日本国内で放送が続き、Netflix の配信も止まっていません。台湾と香港でも Netflix なら見られます。作品が禁じられたのではなく、特定の市場の特定の窓口が閉じられた、という形です。ただ、閉じた窓口の数は3日で1社から7社に増えました。

日本の作品が海外の規制に触れて止まる例は、これまで暴力や性的な表現をめぐるものが中心でした。広告規制という、作品の内容とは別の法体系で止まるのは新しい形です。実在の商品を画面に出すという日本の漫画やアニメでは当たり前の演出が、配信先の国では事業者の罰則に直結する。日本のアニメを海外に届けるときのチェック項目は、この一件で一つ増えました。表現規制の欄ではなく、広告規制の欄に、です。

台湾と香港の視聴者が再び配信で見られるようになるかは、権利元がどう動くか次第です。銘柄の描写を差し替えた地域版を用意するのか、Netflix 一本で通すのか、いまのところ発表はありません。ただ、忘れたくないことがあります。8話まで毎週追いかけていた人たちが、木曜の午後4時に、何の予告もなく続きを取り上げられました。返ってくるのは当期の視聴料だけで、続きは返ってきません。たばこの箱を描き直すだけであの人たちが先週の続きを見られるのなら、そうしてほしいと思っています。

編集部
吉沢まこと
Velleity Note 編集部 ・ Overseas Reception, Read Straight

日本のアニメ・ゲーム・音楽・カルチャーが海外でどう受け止められたかを、賛否そのままに、現地語の一次ソースで確かめてから日本語にしています。褒めるだけの国内報道とは違う角度で。続報があれば更新日を明記して追記します。