📊 3行サマリー
- メルボルン在住のブラジル人作家ライカ・クローゼの『Winged』が、日本政府(外務省)主催「国際漫画賞」第19回の金賞に。授賞式は2026年3月4日、東京の飯倉公館で開かれた。
- 応募は110カ国・738作品で、いずれも過去最多。ブラジルの金賞は第18回の河原ヒロ『森の人魚』に続き2年連続となった。
- 受賞作『Winged』はWebtoonで1000万回超の閲覧・約22万フォロワー。日本で育ったマンガ表現が、南米の才能を世界の頂点へ押し上げた格好だ。
ブラジルのライカ・クローゼ『Winged』が第19回国際漫画賞で金賞、2年連続のブラジル金
日本の外務省が主催する「国際漫画賞(Japan International MANGA Award)」の第19回受賞作が発表され、最高賞の金賞にブラジル人作家ライカ・クローゼ(Laica Chrose)のウェブマンガ『Winged』が選ばれた。受賞は2025年12月24日に運営委員会が公表し、授賞式は2026年3月4日に東京・飯倉公館で開かれている。茂木敏充外相が表彰状を手渡した。
この賞は、海外でマンガの普及に貢献したり、日本のマンガに着想を得た作品を描いたりする外国人作家をたたえるもので、2007年に外務省が立ち上げた。金賞は1作のみ。それをブラジルが獲ったのは、第18回(河原ヒロ『森の人魚』)に続いて2年連続だ。日本生まれの表現様式の最高栄誉を、南米の国が連覇したことになる。
過去最多110カ国・738作品の頂点に——ブラジル日本大使館とブラジル専門メディアが速報
元ネタ:Brasil repete vitória no Japan International Manga Award com “Winged”, de Laica Chrose(Fora do Plástico / 2025年12月27日)。受賞者本人のコメントは自身のSNS投稿より。
O que começou como um projeto despretensioso para me ajudar a lidar com momentos difíceis durante a pandemia acabou se tornando meu refúgio.(パンデミックのつらい時期を乗り切るための、肩ひじ張らない企画として始めたものが、いつのまにか私の逃げ場になっていた)
第19回は110カ国・地域から738作品が集まり、応募国数・作品数とも過去最多を更新した。前年の716作品をさらに上回った数字だ。金賞1作のほか、銀賞は3作、銅賞は10作。応募が多かったのは中国・台湾・インドネシアで、この3カ国だけで約200作に達したという。その激戦を抜けて頂点に立ったのが、ブラジルの一人の描き手だった。
1000万回再生の『Winged』は、コロナ禍の「逃げ場」から生まれた
『Winged』は縦読みマンガの最大手プラットフォームWebtoonで公開され、1000万回を超える閲覧と約22万人のフォロワーを集めている。英語で無料公開されており、マンガ形式のバージョンはPatreonにもある。物語は擬人化された動物が主人公で、収集家に捕らえられた鳩が、人間と戦い続けるカラスとの思いがけない出会いをきっかけに逃亡の機会をつかむ。そこから二羽は、信頼を頼りに生き延びる旅へ出る。
ライカ・クローゼはブラジル出身で、現在はオーストラリアのメルボルンを拠点にしている。本人によれば『Winged』は、編集者もアシスタントもいない完全な一人作業で、コロナ禍の不安をしのぐための個人的な企画として描き始めたものだという。荒削りだが、そのぶん作り手の素の感情がそのまま乗っている。彼女はほかに、ジュ・ロヨラが作画を担当する独立系コミック『More Than Words』の原作も手がけている。
ブラジル漫画界の反応:「BRASIL NO TOPO」、10年積み上げた金・銀・銅の系譜
ブラジルのマンガ専門メディアやSNSは「BRASIL NO TOPO(ブラジルが頂点に)」と沸いた。実際、ブラジル勢が国際漫画賞で評価されたのは今回が初めてではない。2019年にはギリェルメ・ペトレカ『Ye』が銀賞、同年の『Romaria』、2020年の『Fujie and Mikito』、2022年の『Amarelo Seletivo』が銅賞を受けている。そして2024年(第18回)には河原ヒロ『森の人魚』が初の金賞、カシオ・リベイロ『Last Call to Leave Earth』が銅賞と、ブラジルは複数の入賞を重ねてきた。
河原ヒロの『森の人魚』はもともと個人出版で、のちに日本のマンガ翻訳でも知られるEDITORA JBCが再刊した。リベイロの受賞作は2026年3月に米Nakama Pressから英語版が出ている。受賞が一過性の「まぐれ」ではなく、独立系の描き手が地道に作品を積み上げる層の厚さに支えられている点が、ブラジルの強さだ。
日本式マンガが世界の才能を育てた——「普遍言語」としての到達点
授賞式でライカ・クローゼは「マンガは、どこから来たかに関係なく、同じ感情や恐れ、喜びを分かち合える普遍的な言語だ」と語った。日本のマンガが海外でどれだけ受け入れられているかを測る物差しとして、これほど分かりやすい言葉はない。外務省がソフトパワー外交として始めた賞の頂点を、日本のマンガで育った海外の作家が連覇している。日本コンテンツの輸出力が「読む」段階から「描かせる」段階に入った、ということだろう。
日本の読者にとっての意味は二つある。ひとつは、自分たちが慣れ親しんだ表現が、地球の反対側で一人の人間の「逃げ場」になり、世界一の評価まで届いたという手応え。もうひとつは、次に日本市場へ入ってくる海外発のマンガ的作品が、もはや「日本の真似」ではなく対等の競争相手になりつつある、という現実だ。『Winged』はWebtoonで無料で読める。気になった人は、頂点を獲った一作を自分の目で確かめてみてほしい。


