📊 3行サマリー

  • 『鬼滅の刃』無限城編が韓国で累計約570万人を集め、日本アニメ映画の韓国歴代1位に。『チェンソーマン レゼ篇』も344万人で過去記録を更新した。
  • 韓国メディアは鬼滅・呪術廻戦・チェンソーマンを「鬼主톱(クィジュトプ)」と名付け、2000年代の「ワンナブル(ワンピース・ナルト・ブリーチ)」に続く新世代の少年漫画3強と位置づけた。
  • 『ワンピース FILM RED』(2022)の韓国20万人台と比べると約28倍の跳躍。自国映画が押し出され、韓国の業界紙は「非常事態」と書いた。

📝 鬼滅・呪術廻戦・チェンソーマンの劇場版3本が、2025年秋の韓国興行を同時に占めた

2025年秋、韓国の映画館のトップ10に日本のアニメ映画が3本同時に並ぶ、という光景が起きた。『劇場版 鬼滅の刃 無限城編』『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』『劇場版 呪術廻戦 懐玉・玉折』。韓国メディアはこの3本を、それぞれの頭文字を取って「鬼主톱(クィジュトプ)」と呼んだ。韓国映画振興委員会(KOFIC)の発券統合ネットワークの数字を見るかぎり、これは一時的なブームでは片づけられない規模になっている。

📰 韓国の映画メディアize:「鬼主톱が劇場を掌握、チェンソーマンが週末1位」

元ネタ‘귀주톱’ 한국 극장가 점령…’체인소 맨’ 1위·’귀멸의 칼날’ 다시↑(아이즈(ize) / 2025年10月20日・KOFIC統合電算網データ)

일본 소년만화 3대장 ‘귀주톱'(귀멸의 칼날·주술회전·체인소 맨)이 국내 극장가를 장악했다.(日本の少年漫画3強「鬼主톱」が国内の劇場を掌握した。)

記事によれば、『チェンソーマン レゼ篇』は公開4週目の週末(10月17〜19日)に24万6146人を動員して週末1位。累計は221万人を超えた。最終的にこの作品は344万人まで伸び、これまで日本アニメ映画の韓国記録だった『無限列車編』の222万人をあっさり抜いている。一方の『無限城編』も公開2か月の時点で累計546万人、最終的には約570万人に達し、日本アニメ映画として韓国歴代1位に立った。

🔥 『ワンピース』2022年の20万人から『鬼滅』570万人へ——3年で起きた桁違いの跳躍

数字の意味を測るために、少し前と比べてみる。2022年に韓国公開された『ワンピース FILM RED』の累計は20万人台だった。それが3年後には、同じ「日本の人気少年漫画の劇場版」というカテゴリーで570万人。桁が一つ違う。韓国メディアが「鬼主톱」という新しい言葉をわざわざ作ったのは、2000年代に韓国の若者が親しんだ「ワンナブル」(ワンピース・ナルト・ブリーチ)の世代交代が、興行という最もわかりやすい形で起きたからだ。原作の人気だけでなく、劇場に足を運ぶ層がここまで厚くなった、という変化のほうが大きい。

🇰🇷 韓国映画界の「非常事態」報道と、観客の“ファンダム化”

この現象を、韓国の現地メディアはどう報じたのか。論調は祝祭一色ではない。スポーツ系メディアは「日本アニメに全部食われた国内映画…非常事態」という見出しを立て、自国の実写映画が興行上位から押し出される状況に危機感をにじませた。同じ秋、韓国の実写大作も公開されていたが、上位は日本アニメが占めた。

ize自身の分析記事は、別の角度から「劇場観客のファンダム化」を指摘している。応援上映、グッズ、複数回鑑賞といった“推し活”の作法が、もともとK-POPで鍛えられた韓国の観客にそのまま移植され、アニメ映画の動員を押し上げた、という見立てだ。日本の若者の反応を取材した記事でも、韓国の10〜20代が「マジでやばい」「泣いた」とSNSで熱狂する様子が伝えられている。作品が良いだけでなく、それを共有して盛り上がる土壌が韓国側にあった。

🇯🇵 日本では「いつもの大ヒット」、韓国では「自国映画の危機」という温度差

同じニュースでも、日本と韓国では力点がまるで違う。日本で『無限城編』第1章は興行収入257.8億円、観客1800万人を集め、歴代日本映画の興行4位という規模だが、報じられ方は「鬼滅、また記録更新」という、ある種の予定調和だ。アニメが実写を押しのけて年間トップに立つことに、日本の観客はもう驚かない。

韓国はそうではない。自国の実写映画が文化の中心にある国で、外国産アニメが興行を制圧する事態は新しい。だからこそ「非常事態」という強い言葉が出てくる。ここに日本人にとっての示唆がある。日本アニメの輸出力は、もはや「海外でも人気」という段階を超えて、相手国の映画産業の力関係を動かすところまで来た。その大きさは、韓国の反応に歓迎と警戒が同居していることが何より示している。歓迎だけなら、ここまで強い言葉は出てこない。2026年に入っても熱は続き、『無限城編』は3月25日にSCREENX、4月1日にIMAX・4DXで韓国で再公開された。

🏁 「ワンナブル」を超えた「鬼主톱」が突きつける、韓国スクリーンの主導権争い

つまりこういうことだ。韓国で起きたのは、単発のヒットの連続ではなく、若い観客の“鑑賞文化そのもの”が日本アニメを中心に組み変わったという構造変化だった。「ワンナブル」から「鬼主톱」への呼び名の更新は、その象徴にすぎない。次に控える『鬼滅』無限城編の続編や『チェンソーマン 刺客篇』が韓国でどの数字を出すかは、日本アニメが韓国スクリーンの主導権を握り続けるのか、それとも自国映画が押し返すのかを占う物差しになる。少なくとも今は、主導権は海を渡った側にある。